マイクロソフトのAI「Copilot(コパイロット)」のできることをお届けする本連載。前回はCopilotにExcelのIF関数を書かせましたが、今回はAVERAGE関数を書かせてみます。空白や文字列が混じると難しい平均の計算も、Copilotならどう対処するでしょうか?“指示のコツ“を掴んで、作業効率をアップしていきましょう!
▼Copilot基本的な使い方はこちら
Copilot×Excel AVERAGE関数編
INDEX
- はじめに
『平均の計算』あなたなら、どうやって書きますか? - Copilotに書かせると…
- Excelのちょっと便利な基本操作
『平均の計算』あなたなら、どうやって書きますか?
Excelで仕事をしていると「平均」を計算しなければならない場面はよくあります。
平均を求めるための関数が「AVERAGE」です。
AVERAGE関数の基本構文は次のとおりです。
=AVERAGE(数値1,数値2,...)
なお、本稿は「Excelの関数を知らなくてもAIに書かせて解決させる」というテーマであるため、もしAVERAGE関数が分からなくても安心して読み進めてください。
基本構文は「数値1」などと指定していますが、多くでは範囲指定になるため、実際には以下のように記述します。
=AVERAGE([範囲の始点]:[範囲の終点])
ここでは例として、下表のような「5月3日~5月5日の3日間の各店舗の売上台数」が存在したとします。
なお、計算の結果の違いが明確にわかるように、あえて各店舗の売上個数は200台に統一しています。
各店舗の売上表。全店、臨時休業以外は200台売り上げている。一日200台限定品を毎日売り切っているイメージだ。なお、セル内で「~台」とする方法は後述する。
この表における最大のポイントは「5月4日に店舗Bにあるトラブルが起こり臨時休業している」ことです。
通常の休業ではなく、本当は営業をするべき日に店を閉めたという意味になるため、あくまでも平均からは除外せず、該当日の売上は「0台」とカウントするものとします。
実はこの表、少し意地悪です。 AVERAGE関数を知っている人でも、ちょっと頭をひねる必要があります。 なぜなら、AVERAGE関数は「文字列セルや空白セルを無視して計算する」という特性があるからです。
Copilotに書かせると…
さて、まずはひねりを入れず、普通にCopilotに数式を作成してもらいましょう。
Copilotには、Microsoft 365 Copilotなどの有料サブスクリプションが存在するが、本稿が解説するのは「無料のCopilot」であり、つまり誰でも契約なしで使えるCopilotを示す。ちなみにCopilotはMicrosoftアカウントさえ用意すれば、Mac(macOS)、Chromebook(Chrome OS)のほか、スマートフォンでも利用可能だ。
今回の店舗売上の例に従えば、
『範囲B2セルからD4セルの平均が欲しい』
と記述すればよいのです。
Copilotを起動して、次のようにプロンプトを入力して「Enter」を押します。
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Excelで範囲B2セルからD4セルの平均を求めてください。
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プロンプトを入力。なお、今回も「Excelの数式」を作るのが目的であるため、プロンプトには必ず「Excelで~」と記述することが大切だ。
すると、関数や引数の書き方を知らなくても、CopilotはAVERAGE関数入りの数式を作成してくれます。数式の「コピー」をクリックします。
Excel上で平均を算出する位置はどこでもよいのですが、ここでは「平均A」としてG2セルにペーストして計算結果を出すものとします。
Copilotが、B2セルからD4セルの平均を求めるための数式を導き出す。「コピー」ボタンが存在する場合には、「コピー」をクリック(表示されない場合には数式を選択して「Ctrl」+「C」)。
「平均A」としてG2セルにCopilotが導き出した数式を「Ctrl」+「V」でペースト。計算が行われ「200台」となる。
いかがでしょう。
「3店舗×3日=9」なので、目的としては「総合計÷9」で算出すべきなのに「総合計÷8」で算出したため「200台」になっています。これは、先にも述べたように、AVERAGE関数は「文字列セルや空白セルを無視して計算する」ためです。
これでは、臨時休業(本来営業する日に売上ゼロ)の「0台」がカウントされていないのです。
よって、この点もプロンプトに記述して指示しましょう。
『文字列セルは「0」として計算含める』 と条件を記述します。
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Excelで範囲B2セルからD4セルの平均を求めてください。 なお、範囲内の文字列セルは「0」として計算する数式にしてください。
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プロンプトを入力。ここでは条件を加えて、『範囲内の文字列セルは「0」として計算する』とした。
すると、Copilotは新たな数式を作成してくれるので、数式の「コピー」をクリックします。 先との比較のために、ここでは「平均B」としてG3セルにペーストして計算結果を出すものとします。
平均の「AVERAGE」とともに、条件分岐の「IF」、そして、「ISNUMBER」で数値ではないセルを「0」として扱う数式が完成した。なお、AIは確率モデルを使用している関係上、同じ質問をしても同じ回答を示すとは限らないため、画面の通りの数式や表示にならないこともある。
「平均B」として、該当セルに数式を貼り付ける。「文字列セルは「0」として計算する」ため、きちんと「総合計÷9」で計算される。
どうでしょうか。
簡単に説明すれば、IF関数で条件分岐をして、ISNUMBER関数で数値ではない場合は「0」にするという処理を行っています。
結果、「200×8÷9」で「178」が算出され(小数点以下などの表示について次項を参照)、無事「臨時休業が0台」として平均が算出されました。
関数を知らなくても数式を書くことができ、また条件を加筆すればその条件に従った数式を書いてくれるのがCopilotなのです。
CopilotはAIであるため、必ずしも正しい回答を示すとは限らない。また、AIが「確率モデル」を使用して応答を生成するため、同じ質問をしても同じ回答を示すとも限らない。本稿でいえば、Copilotは数式が異なる回答を示すこともある。
Excelのちょっと便利な基本操作
Excelの基本操作についても解説します。しっかり基本を押さえてこそ、Copilotの活用の幅が広がります。■「セルの書式設定」ダイアログ
Excelにおける「セルの書式設定」ダイアログの設定は、さまざまな場面で役立ちます。 先の表における「~台」の表示は、手で入力したわけではなく、「セルの書式設定」ダイアログの「表示形式」タブで実現しています。
「セルの書式設定」ダイアログは、設定対象となるセル選択したうえで、右クリックして、ショートカットメニューから「セルの書式設定」を選択することで表示できます。
なお、この「セルの書式設定」ダイアログはExcel操作において非常に利用頻度が高いため、ショートカットキー「Ctrl」+「1」を覚えてしまうと便利です。
表示形式を変更したいセルを選択したうえで、ショートカットキー「Ctrl」+「1」を入力すれば、「セルの書式設定」ダイアログを素早く表示できる。
■単位の表示
「~台」「~個」などの単位や、名前における「~様」などは、セル上で手打ちせずに「セルの書式設定」ダイアログの「表示形式」タブで設定します。
例えば、セルに入力した数値を「~台」と表示したい場合には、「分類」から「ユーザー定義」を選択して、「種類」に「0"台"」と入力します。なお、種類における「0」とは、1桁の数字を示します。
少し難しいのですが「#"台"」としてしまうと、売り上げが0台のときに「台」とだけ表示されて、違和感が出てしまうためです。
「セルの書式設定」ダイアログの「表示形式」タブで、「分類」から「ユーザー定義」選択して、「種類」に「0"台"」と入力。
数値に対して自動的に「~台」が付加される。蛇足だが、桁区切りをしたい場合には「#,##0"台"」と入力する。
▼表示形式の書式記号
■小数点以下の表示
先の表における平均Bの計算結果は、200÷9であるため「177.7777…」が答えになりますが、小数点以下を表示していないため「178台」となっています。
この平均の計算結果の表示において、例えば小数点第二位まで表示したいのであれば、「種類」に「0.00"台"」と入力します。
「セルの書式設定」ダイアログの「表示形式」タブで、「分類」から「ユーザー定義」選択して、「種類」に「0.00"台"」と入力。
表示形式での指定通り、平均を小数点第二位まで表示できる。
・・・
いかがでしたでしょうか。
Copilotでは関数入りの数式を簡単に作れるほか、プロンプトで条件を指定すれば、きちんと条件に従った数式を導き出してくれます。 また、単位や小数点などの処理は、「セルの書式設定」ダイアログで処理することも覚えました。 Excelの基本+Copilotを利用すれば、いろいろな場所で応用可能であり、関数を覚えなくても工夫次第で対応できるのが強みです。
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▼これまでの「Copilotなにできる?」
・誰でも無料で利用できるAI「Copilot」の基本的な使い方
・マイクロソフトのAI「Copilot」×Excel IF関数編:空白セルの処理
Microsoft MVP(Windows and Devices for IT)を18年連続受賞。Surface MVPでもある。ビジネスの現場に即したパソコンの解説を得意とし、Windowsの操作・カスタマイズ・ネットワークなどをわかりやすく個性的に解説した著書が多い。著書は80冊以上に及ぶ。『安心して働くためのパソコン仕事術』『Windows 11完全ガイド』(SBクリエイティブ)『帰宅が早い人がやっている パソコン仕事 最強の習慣112』『先輩がやさしく教えるセキュリティの知識と実務』(翔泳社)など。
※本記事に記載されている会社名、製品名はそれぞれ各社の商標および登録商標です。
※本稿に記載されている情報は2025年4月時点のものです。