株式会社リクルートスタッフィングが運営するITSTAFFINGでは、弊社に派遣登録いただいている皆さまのスキル向上を支援するイベントを、定期的に開催しています。2018年3月9日のイベントでは「わかりにくいことをわかりやすく伝えるコツとツボを試験対策から学んでみる」を開催。
コンピュータプログラマ出身で、フリーのライター&イラストレーターとして活躍し『キタミ式イラストIT塾シリーズ』などの著書を持つきたみりゅうじさんが、難しいことを相手にわかりやすく伝えるためのポイントを紹介してくれました。

■今回のイベントのポイント
・資格試験、その勉強のコツとツボとは
・難しいことを、わかりやすくマンガにする、そのプロセス公開
・わかりにくいをわかりやすいに変える、そのテクニックとは

コンピュータプログラマのかたわら自身のWebサイトで4コマまんがの連載を行ったのをきっかけに、書籍のイラストや執筆を手がけるようになる。現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。著作『フリーランスを代表して申告と節税について教わってきました。』(日本実業出版社)にて、2007年度 SOHO AWARDS選考委員賞を受賞。その他『キタミ式イラストIT塾シリーズ』(技術評論社)など著書多数。
資格試験、その勉強のコツとツボとは
きたみさんはプログラマ出身ですが、当時勤務していた会社では「この資格がないと昇級させない」という社内規定があったとのことで、自身も1999年に第二種情報処理技術者(現:基本情報処理技術者)資格を取得したそうです。
そのときの経験をもとに、基本情報処理技術者資格試験に向けた、きたみさんなりの勉強のコツとツボについて教えてくれました。
基本情報技術者の試験は午前と午後に分けて行われますが、「午前については、過去問をきちんとやれば、100%合格水準に達します」とのことでした。
ただし「丸暗記はお勧めしません」とアドバイスします。なぜなら、この資格を取得するのは、自身のITに関する知識が一定の水準にあることを証明するためであり、テクニックだけで合格しても意味がないからです。
午後の試験は選択式で、プログラミング以外に、表計算ソフトなども選べますが、同様の理由から「午後の試験は、できるだけプログラミングに挑戦して欲しい」というのがきたみさんの意見です。

虫食いレベルのソースコードやSQL文など、現場の技術者にとっては難しくありません。そのため「そんな資格を取得しても意味はない」という人もいます。
しかし「資格そのものが価値を持つのではなく、資格取得のために勉強をして“知識の棚卸し”をするところに価値がある」のだと強調します。
難しいことを、わかりやすくマンガにする、そのプロセス公開
では、資格試験に挑戦する際の心強い味方「キタミ式」は、どのように作られているのでしょうか。
きたみさんは、「プログラミングと、本を書くという工程は、実は同じです」と語ります。
プログラムも本も、いきなり通しで書こうとすると、品質の低いものにしかならないため、まず、全体の流れをプロットとして作らなければなりません。
C言語でプログラムを書く際も、main()関数の中に、初期化して、ファイルをオープンし、データを読み込み、整形し、ファイルを閉じて、終了するという“章立て”を書き、“目次”を固めてから、中身を作り込んでいきます。本を書く時も、それと同じなのです。

そういう意味で、プログラミングは、作品を論理的かつ簡潔にまとめる上で、かなり応用のきく良い訓練になるそうです。
では、マンガが優れている点とは何でしょうか?
コンテンツに含まれる情報には、画像、テキスト、マンガ、動画など、いくつかの種類がありますが、マンガは一目見てわかる(ように構成できる)のが利点だと言えます。
たとえば、通信データがパケット化されて高速に送受信されていることを、一枚の絵で伝えることができます。しかも理解できるまで、その絵をじっくり眺めることもできますし、すぐに理解して次の絵に目を転じることもできます。受け手次第で時間の圧縮・伸長が自在に行えるのがマンガの特長です。
続いて、テクニカルライティングにおける「良い文章」とは何かについても、教えてくれました。
「今日は良い天気なので、私は撮影道具を持って朝から家の近所にある小さな山へと出かけています。」
という文章と、
「今日は良い天気です。そのため私は撮影道具を持って朝から出かけています。目的地は家の近所にある小さな山です。」
という文章があります。上の例は、1枚のイラストにすべて入れてしまうのと同じで、頭の中に全部置いていていかなければなりません。
下の例は3つの絵に分けることができます。もちろん、テクニカルライティングにおける良い文章は下の例文です。ポイントは、簡潔な文章で淡々と書く、推論や「だと思う」的な逃げを打たないことだそうです。

簡潔な文章を書くコツは、まず理解する(インプット)ことです。わかったつもりが一番怖いので、3箇所以上の解説をあたり、自分の理解に齟齬がないかを検証します。自分の理解があやふやだった箇所こそ、読者に詳しく解説していくべきなのです。
そして、初心者向けの解説の場合は専門用語を使わない(分解)ことも大切です。専門用語は語句内に多数の意味を含むため、語句の意味を分解し、どういう意味で使っているのかを明確にする必要があります。
最後に、人が理解する過程を肩代わり(イメージ化)します。自分自身がイメージで理解する過程をアウトプットしていくことにより、読み手は、本来イメージ化に使うべき脳のリソースを、内容の理解へ振り向けられます。
わかりにくいをわかりやすいに変える、そのテクニックとは
最後に、わかりにくいことを、わかりやすくするテクニックをいくつか紹介してくれました。

まずは情報の粒度を揃えることです。粒度とは、1センテンスの分量や理解に要する重さのことです。読書体験を均一化することで、本に向かう苦手意識を払拭します。
ただし、淡々と読める本は、読後に何も印象に残りません。そこで、一定のリズムの中に「ひっかかり」を設けます。これによって、知識の定着化を促すことができます。「ひっかかり」とは、問いかけ等によって脳を受け身の状態から脱却させることだそうです。
さらに、作者が賢く思われようとしないこと。読み手に寄りそう存在が必要で、「自分よりちょっと理解が足りない」と思える存在がいることで、挫折せず、共に学ぼうとするモチベーションが生まれるということです。
今回のイベントに参加して、仕事でドキュメントを作成する際に、わかりやすい文書を作るための要点を学ぶことができました。今後に大いに活かせそうです。