第1回 インターネットをとことん活用しよう

エンジニアのキャリアについて話をするとき、よく使われるのが「T型」や「π型」という言葉です。成長していく中で、できるだけ幅広い知識を身につけるとともに、得意分野や専門分野をできるだけ深掘りすることが求められます。また、その専門分野を増やしていくことで、複数の柱を持つことができ、他の人との差別化や社会の変化にも対応できるようになるでしょう。
ただし、上記を習得するための具体的な方法は、我流であることが多く、知らぬうちに情報が偏っていることも。上手に情報をキャッチアップするために、エンジニアの情報収集法について、ITSTAFFINGで度々登壇いただいている増井敏克さんに、レクチャーいただきます。実践的な内容をお届けしますので、日々の勉強にお役立てください。

専門分野を増やすためには専門書を読み、自分で研究していくしかありません。興味を持った分野をとことん突き詰めていくことが必要でしょう。一方、幅広い知識を身につけるときにはそれほど深い知識は求められません。ただ、興味がない分野でもある程度アンテナを張っておく必要があります。
最近はインターネットで情報収集する人が増えていますが、検索するには自分でキーワードを選ばなければなりません。そして、欲しい情報だけを探して満足してしまう場合があります。これでは幅広い知識を得ることが難しくなります。
そこで考えなければならないのは、「待っていれば情報が向こうからやってくる状態を作る」ということです。電源を入れておけば次々とニュースやバラエティなどを放送しているテレビやラジオのように、インターネットを使って、ネットワークに接続していれば勝手に情報が降ってくる状態をどうやって作るのか、という方法をまずは紹介します。
RSSで情報が「降ってくる」状態を作る
Webサイトやブログなどの更新情報を自動的に取得する方法として、昔から使われている技術として「RSS」があります。1990年代に登場し、すでに20年以上も使われている技術ですが、まだまだ情報収集のツールとして有効です。
RDFなどのフォーマットで作成された要約情報を配置しているWebサイトに対し、RSSリーダーと呼ばれるソフトウェアが自動的に巡回してチェックし、更新されていると収集してくれます。RSSを使うことで、ニュースサイトなどを毎回チェックすることなく、更新があったときだけその概要を収集できます。記事のタイトルや要約の内容を見て、気になるコンテンツだけをチェックできます。
IT系でも多くのニュースサイトが対応しているため、これらのサイトをRSSリーダーに登録しておくと、最新のニュースをもれなくチェックできます。また、官公庁でもRSSに対応しているサイトがありますので、例えばIPAやJPCERT/CCのセキュリティ情報を収集するように設定しておくと、脆弱性情報などを速やかに収集できます。このエンジニアスタイルのサイトも対応していますので、ぜひチェックしてみてください。
例えば、RSSリーダーとしてFeedly(https://feedly.com)がよく使われています。Webブラウザでアクセスすることもできますし、スマートフォンアプリもありますので、ぜひ使ってみてください。Feedlyにアクセスすると、「GET STARTED FOR FREE」というボタンがあり、ここから会員登録するとログインできます。

パソコンでログインすると、画面左下にある「+ ADD CONTENT」から収集したいサイトを登録できます。URLを入力すると、対象のRSSをフォローするか確認されますので、「FOLLOW」ボタンを押すと購読できます。あとはサイトが更新されると、自動的に収集されます。

RSS以外でも情報が「降ってくる」状態を作る
企業のWebサイトや個人が作っているようなページでは、RSSに対応していないサイトが存在します。また、これまで訪れたことがないサイトではRSSでは取得できません。このような場合、キーワードで収集できるサービスを使用する方法があります。
例えば、Googleアラート(https://www.google.co.jp/alerts)で気になるキーワードを登録しておく方法があります。登録しているキーワードに合致するニュースやブログが登場すると、メールやRSSで配信してくれます。

また、NewsPicks(https://newspicks.com)のようなサービスを使うと、登録したキーワードに合致したニュースがあれば通知してくれます。まずは登録してみて、欲しい情報の量や質から、メインで使うものを判断するのもよいかもしれません。

便利なサービスを使って情報を集める
リアルタイムに情報を収集するには、TwitterやInstagramなどを使う方法もあります。新製品や障害情報、セミナー参加者の感想などを知りたい場合はSNSなどの検索機能を使うと効率的です。アカウントを持っていなくても、Yahoo!のリアルタイム検索を使うことで、簡単に情報を収集できます。

テレビやラジオと同じように情報を収集する方法として、Podcastがあります。最近はIT系のエンジニアの中にもPodcastで配信する人が増えており、ブームのようになっています。聞きたいPodcastを購読しておくと、更新されるたびに配信されます。最新のニュースや世の中のエンジニアが考えていることなどを発信されていますので、聞いているだけで様々な情報を得ることに繋がります。
キュレーションサイトも同様です。ログインして閲覧しているうちに、利用者が興味を持ちそうな情報が最適化されて表示されます。便利な一方で、興味がある情報だけが配信されるというのは、「幅広い情報収集」には繋がらないかもしれませんが、欲しい情報が得られやすいと言えます。
検索エンジンをうまく使う
Googleなどの検索エンジンは単純にキーワードを入れて検索するだけでなく、様々な検索オプションが存在します。これらを使いこなすことで、欲しい情報をうまく見つけられます。例えば、Google検索する場合には日付での絞り込みや、ファイルタイプでの検索、ドメインでの絞り込みなども可能です。

また、GoogleトレンドやGoogle画像検索といった機能を活用することもできます。Googleトレンドでは、複数のキーワードを指定して、それぞれのキーワードの検索トレンドの推移を調べられます。最新技術がどれくらい注目されているのか、他のキーワードと比べることで、新しい技術を学ぶときの判断基準にもなります。

検索エンジン以外の検索方法を使いこなす
検索に使えるのは検索エンジンだけではありません。サービスを提供しているサイトでは、そのサイト内での検索など便利な機能を用意しています。例えば、書籍を探す場合にはGoogleなどを使うよりもAmazonの検索機能を使う方が効率よく探せるでしょう。また、カーリル(https://calil.jp)といった図書館情報の検索サイトは、現在地の位置情報を使って近くにある図書館で読みたい本の在庫があるか調べる、といった使い方もできます。

商品検索にはAmazonのスマートフォンアプリを使う、といった方法もあります。手元にある商品と同じものが欲しい、といった場合はAmazonアプリにあるカメラ機能を使うと、その商品を簡単に検索できます。書籍のカバーを撮影するのはもちろんのこと、ペットボトルの飲み物や台所用品など、ラベルを撮影するだけで簡単に注文できます。
複数のツールを連携する
このように、情報収集には様々なツールを組み合わせて使うことが必要です。また、自動化できる部分はできるだけ自動化し、手作業をなくすことを考えましょう。自動化すると抜けや漏れもなくなるだけでなく、欲しい情報を一箇所に集めることで情報のバックアップを取得することにもなります。一箇所にあると検索も簡単です。
連携するツールとして、よく使われているものに「IFTTT」があります。IFTTTを使うと、複数のWebサービスを連携し、取得した情報をほかのサービスにまとめられます。例えば、TwitterやRSS、InstagramやGmailなどで集めた情報をSlackにまとめる、といった使い方ができます。

インターネットを使った情報収集法、いかがでしょうか。ひと工夫するだけで、自分の欲しい情報だけにとどまらず、幅広い知識を得るために、インターネットはかなり頼もしいツールになることがわかっていただけると嬉しいです。次回はリアルな場として、書店や勉強会の活用法について紹介します。お楽しみに。