
マイクロソフトのAI「Copilot(コパイロット)」のできることをお届けする本連載。今回はExcelの条件分岐の式を書かせてみます。IF関数でも計算はできますが、もっとスッキリした書き方も......Copilotならどう対処するでしょうか?“指示のコツ“を掴んで、作業効率をアップしていきましょう!
▼Copilot基本的な使い方はこちら
Copilot×Excel IFS関数編
INDEX
- はじめに
『条件分岐』あなたなら、どうやって書きますか? - Copilotに書かせると…
- Excelのちょっと便利な基本操作
「条件分岐」あなたなら、どうやって書きますか?
今回はExcelで「配送先別の料金」を算出してみましょう。
ここでは例として、関東への配送は940円、関西への配送は1060円、その他の地域への配送は1460円という料金設定になっている配送料の表があるとします。

配送先に従い、料金を自動算出する表を今回は作成する。
このような条件分岐はどのように数式を書けばよいでしょうか?
実は、この程度の数式であれば、本連載の第2回目で紹介した「IF」関数でも十分です。
「関東ならば940円、関東以外で関西なら1060円、関東でも関西でもなければ1460円」という形で、IFの中にIFを書いて計算すればよいのです。
=IF(論理式, 値が真の場合, 値が偽の場合)
しかし、IFの中にIFがあるのはスマートではありません。また、将来条件が増えた場合に困ることになります。
そこで登場するのが「IFS」関数です。
IFS関数の基本構文は次のとおりです。
=IFS(論理式1,論理式1の値が真の場合,論理式2,論理式2の値が真の場合 ,...)
IFS関数を利用できるのは、原則としてExcel 2019以降のバージョンになる。Excel 2016などそれ以前の永久ライセンス版では利用できないことには注意が必要だ(ただし、サブスクリプション版Excelでは、当時のExcel 2016でもIFS関数が利用できた)。
ちなみに、今回は「関東でも関西でもない場合」と数式に書かなければいけないので、「どの条件も満たされない場合」も書かなければいけないのですが、これはIFSの引数の最後に「TRUE,偽の場合」と記述すればOKです。
・・・なんのこっちゃ、と思うかもしれないですが安心してください。 本稿は、こういう面倒くさい&わかりにくい数式を、「Copilot(AI)で解決してしまう」のが目的だからです。
AI(Copilot)に書かせると…
Copilotは、質問をすればその問題を解決するための回答を示してくれます。
Copilotには、Microsoft 365 Copilotなどの有料サブスクリプションが存在するが、本稿が解説するのは「無料のCopilot」であり、つまり誰でも契約なしで使えるCopilotを示す。ちなみにCopilotはMicrosoftアカウントさえ用意すれば、Mac(macOS)、Chromebook(Chrome OS)のほか、スマートフォンでも利用可能だ。
ここでは素直に、こちらが求める数式について聞いてみましょう。要は
『「関東」なら940円、「関西」なら1060円、「それ以外」なら1460円にして』
と記述すればよいのです。
Copilotを起動して、次のようにプロンプトに入力して「Enter」を押します。
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ExcelでB2セルが「関東」なら940円、「関西」なら1060円、「それ以外」なら1460円をC2セルに入れる数式を作成してください。
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プロンプトを入力。なお、今回も「Excelの数式」を作るのが目的であるため、プロンプトには必ず「Excelで~」と記述することが大切だ。
すると、Copilotは「IF関数の数式」を作成してくれるので、数式の「コピー」をクリックします。
Excelの該当セル(先の表であれば「C2」)に「Ctrl」+「V」で数式をペーストすれば、該当行の作業は完了です。
他の行に適用したい場合には、オートフィルで数式をコピーします。

Copilotがすぐに目的の数式を回答してくれる。ちなみに今回は「IF」関数で作成されたが、AIは確率モデルを使用している関係上、同じ質問をしても同じ回答を示すとは限らないため、画面の通りの数式や表示にならないこともある。「コピー」ボタンが存在する場合には、「コピー」をクリック(表示されない場合には数式を選択して「Ctrl」+「C」)。

該当セルに先にCopilotが導き出した数式を「Ctrl」+「V」でペースト。

数式を入力したセルの右下をマウスホバーし、「+」が表示されたら、そのままドラッグして、数式を適用したいセルまでコピーする。「関東940円」「関西1060円」「それ以外1460円」が算出される。
いかがでしょう。
Copilotで『関東ならば940円、関東以外で関西なら1060円、それ以外は1460円』を実現できました。
しかしながら、IFの中にIFがある、最初のIFが偽であれば次のIFを処理するという、かなり回りくどい数式です。
ちなみに「IFS」関数で書けば、かなりスマートな数式にできますので、Copilotに続けて以下のように指示します。
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IFSで数式を作成してください。
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先の回答に続けて、「IFSで数式を作って」とCopilotに追加指示をする。

「IFS」によるシンプルな数式を作成してくれる。


Excelに該当数式を貼り付ける。もちろん正常に料金を算出してくれる。
かなりわかりやすい数式になりました。
数式をシンプルにすることは、理解しやすさの向上、エラーの防止のほか、のちに修正や追加条件が発生したときにもメンテナンスが容易であるという利点があります。
特に「配送先別の料金」であれば、のちに料金が改定や、料金区分が増えることも考えられますが、IFSであれば修正や条件の追加が簡単に行えるというメリットがあるのです。
Excelのちょっと便利な基本操作
今回紹介した表のように「名前→地域」と入力後に右のセルに移動したい場合には、どうすればよいでしょうか?
もちろん、カーソルキーで移動できますが、連続で入力したい場合などに役立つ操作とカスタマイズを知っておきましょう。
■セル入力時の方向
Excelではセル入力が終了した後に「Enter」を押すと「下のセル」への移動になりますが、右のセルに移動したい場合は「Tab」を押します。
なお、双方とも「Shift」を交えれば逆に移動することもできます。

セル入力後に右に移動したい場合には「Tab」だ。なお、「Shift」+「Tab」で左に移動することもできる。
■「Enter」を押した際の方向のカスタマイズ
「Enter」を押した際に「下」ではなく「右」のセルに移動すると便利です。
Excelのセルにおいて【「Enter」で右に移動】にカスタマイズしたい場合は、「ファイル」タブから「オプション」をクリックして、「Excelのオプション」ダイアログの「詳細設定」から「Enterキーを押したら、セルを移動する」をチェックした上で、「方向」から「右」を選択します。

「ファイル」タブから「オプション」をクリック。「Excelのオプション」ダイアログの「詳細設定」から「Enterキーを押したら、セルを移動する」をチェックして、「方向」から「右」を選択すれば「Enter」で右に移動できる。
いかがでしたか。
Copilotでは質問に対して回答を導き出してくれ、Excelの数式もかんたんに作成することができます。
また、もし別の関数を使った数式を作りたければ、その希望をプロンプトに記述すればよいことがわかりました。
Copilotはチャット形式であるため、対話の中で数式をブラシュアップすることもできるので、必要に応じて追加の質問やリクエストを行うことも重要です。
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▼これまでの「Copilotなにできる?」
・誰でも無料で利用できるAI「Copilot」の基本的な使い方
・マイクロソフトのAI「Copilot」×Excel IF関数編:空白セルの処理
・マイクロソフトのAI「Copilot」×Excel AVERAGE関数編:文字列セルの対処
Microsoft MVP(Windows and Devices for IT)を18年連続受賞。Surface MVPでもある。ビジネスの現場に即したパソコンの解説を得意とし、Windowsの操作・カスタマイズ・ネットワークなどをわかりやすく個性的に解説した著書が多い。著書は80冊以上に及ぶ。『安心して働くためのパソコン仕事術』『Windows 11完全ガイド』(SBクリエイティブ)『帰宅が早い人がやっている パソコン仕事 最強の習慣112』『先輩がやさしく教えるセキュリティの知識と実務』(翔泳社)など。
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※本稿に記載されている情報は2025年4月時点のものです。


