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サクッとわかるITトレンド4月号:新年度は「Obsidian」で新しいノートを作ろう

今回はエンジニアの中で利用者が増えているという、ノートアプリ「Obsidian(オブシディアン)」をご紹介。注目されている理由は、ローカル保存、Markdown記法、階層タグ付けなど、使い勝手のいい機能があるから。ほか便利な使い方をチェックして、新年度はじまりのノートとして活用してみませんか。

【解説】増井 敏克さん
増井技術士事務所代表。技術士(情報工学部門)。情報処理技術者試験にも多数合格。ビジネス数学検定1級。「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピューターを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や、各種ソフトウェアの開発、データ分析などを行う。著書に『エンジニアが生き残るためのテクノロジーの授業 ~変化に強い人材になれる技術と考え方~』『IT用語図鑑[エンジニア編]』(以上、翔泳社)『基礎からのプログラミングリテラシー コンピュータのしくみから技術書の選び方まで厳選キーワードをくらべて学ぶ!』(技術評論社)などがある。

デジタルノートの広がり

紙の手帳やノートを使うと、手元に置いていつでもすぐに書けるのは便利です。一方で、検索性を重視してスマートフォンやパソコンのアプリを使ってデジタルで管理する人も最近は増えています。スケジュールはGoogleカレンダー、ノートはGoogle Keep、というようにアプリだけで管理できるようになってきました。

一昔前はEvernoteやOneNoteなどが人気でしたが、最近ではNotionやScrapboxといったアプリが多く使われています。また、iOSのノートアプリやAndroidのGoogle Keepのようにスマートフォンに標準で搭載されているアプリもあれば、GoodNotes 5などを使っている人もいるでしょう。

Obsidianの特徴5つ。エンジニアが好むポイント

こういったデジタルノートが広がる中でITエンジニアに注目されているのが「Obsidian」というアプリです。

Obsidianを紹介するとき、「ノートアプリ」や「メモアプリ」、「PKM(Personal Knowledge Management)ツール」などさまざまな説明が使われます。Obsidianの公式サイトには「A second brain, for you, forever.」と書かれています。

個人利用であれば無料で使用できるアプリですが、ここまでに紹介した他のアプリと何が違うのか、その特徴を紹介します。

https://obsidian.md/より

特徴1. ローカル環境で動作する

EvernoteやScrapboxなどは、作成したノートをクラウド上に保存します。これは、どのパソコンやスマートフォンでアクセスしても常に同じ内容を確認できる一方で、インターネットに接続できない環境では閲覧できません。最近では日本国内の多くの場所でインターネットに接続できますが、トンネルの中や地下など、まだまだつながらない場所があります。

インターネットに接続できても、サーバー側で障害が起きると、自分のノートにアクセスできなくなります。また、これらのサービスが終了すると、そこに保存したデータが失われる可能性があります。

Obsidianでは、パソコンやスマートフォンにアプリをインストールし、データをローカル環境に保存します。つまり、インターネットに接続する必要はありませんし、サービスが終了してもデータが手元に残ります。

複数の端末間でデータを共有したい場合は、iCloudやGoogle Driveなどのファイル共有サービスを使う方法が便利です。また、有料ですがObsidian Syncという同期サービスも提供されています。

特徴2. Markdownで記述する

サービスが終了しても、データをエクスポートすれば問題ないと考えるかもしれません。しかし、エクスポートしたデータが特殊な形式で保存されていると、そのデータを他のアプリに取り込むのは面倒です。変換ツールが提供されていればよいのですが、すべてのデータを正しく変換できるとは限りません。

ObsidianではITエンジニアが使い慣れているMarkdownという記法でノートを作成します。そして、作成したノートはそのままMarkdown形式のファイルとして保存されます。

Markdown形式のファイルはテキストデータなので、Obsidianが使えなくなってもVisual Studio Codeなどのテキストエディタがあれば編集できますし、他のMarkdownエディタを使う方法もあります。

▲マークダウンの編集タブとプレビュータブを横に並べて表示

特徴3. ノート間をリンクで管理する

多くのノートアプリでは、作成したノートをフォルダで分類して管理します。これはわかりやすい一方で、ノートの数が増えるとどこに保存したかわからなくなったり、階層が深くなって辿るのが大変になったりします。

このときに参考になるのが「Wikipedia」の考え方です。Wikipediaは百科事典のサイトで膨大な情報が入っていますが、フォルダの階層を辿るような使い方をしている人はいないでしょう。基本的にはリンクを辿ってノートを閲覧し、必要に応じて検索します。

これを自分のノートでも実現するのです。つまり、ノート間をリンクでつなげて管理する方法で、あるノートから他のノートにリンクしたときに、逆方向にもリンクできると便利です。

これを「バックリンク」といい、Scrapboxなどのツールが備えている機能です。Obsidianもバックリンクを表示でき、双方向にリンクできます。

特徴4. 階層型のタグを使える

フォルダに分類するときの課題として、「こうもり問題」があります。複数のフォルダのいずれにも分類できるとき、どのフォルダに入れればよいのかわからないのです。

これを防ぐために、最近は「タグ」で管理する機能を備えたノートアプリが多く提供されています。SNSで使用するハッシュタグのようにタグをつけてノートを管理する機能で、iOS標準のメモやScrapboxなどのアプリが対応しています。

Obsidianでは、このようなタグを使えるだけでなく、階層型のタグを使えます。

たとえば、プログラミングについてのノートであれば、「⁠#プログラミング言語/PHP」のようなタグを設定できるのです。同様に、別のノートに「⁠#プログラミング言語/Python」のようなタグをつけておくと、それぞれのタグで検索したときにそれぞれのノートが表示されるだけでなく、「⁠#プログラミング言語」のように親の階層で検索したときにはいずれのノートも表示されます。これにより、フォルダに似たような使い方もできます。

特徴5. プラグインで拡張できる

Notionなど豊富な機能が売りのアプリには、便利な機能が最初から用意されています。これは便利な一方で、使わない人にとっては、不要な機能が表示され、煩わしく感じることもあるでしょう。

一方、Obsidianに標準で用意されている機能はシンプルで、基本的な機能だけでノートを作成できます。そして、欲しい機能があれば、「⁠プラグイン」を使うことで必要に応じて拡張できます。

手帳として使うためにカレンダーを表示したい、データベースとして使いたい、など使いたい機能に応じて便利なプラグインが提供されています。これらを自分の好みに合わせて簡単に追加できるのです。これはITエンジニアに向いていると言えるでしょう。

▲必要な機能をプラグインで追加することができる

もちろん、すべての人にObsidianが向いているわけではなく、複数人で更新するような場合はNotionやScrapboxの方が楽に管理できるでしょう。

いかかでしたか?この記事でObsidianに興味を持った方は、ぜひその具体的な使い方について、インターネット上の記事を読み、書籍などを探していただけると嬉しいです。便利なObsidianを仕事や生活にぜひお役立てください。

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