
楚々としたたたずまいに歯切れのよい明快な語り口。いい意味でのギャップが何ともチャーミングな島崎元子さん(50)は、週に4日、日経メディアマーケティング株式会社で派遣スタッフとして働く。ご自身のワークライフバランスを採点してもらうと、「そうですね、100点って言えるかな」とにっこり。仕事のやりがい、家族との時間、プライベートの充実……人生100年時代と言われるなか、島崎さんは50歳という「いま」をどう生きているのだろうか。
出社は10時。朝のゆとりで一日が快適
勤務時間は10時から17時半。夫や高校生の娘を送り出した後も、少し余裕があるのがいい。ゆっくり身支度できるし、必要なら夕食用に煮物やカレーを仕込んでおくことだってできる。
「10時からというのが正解でした。出社を9時にしていたらもっと早く起きなきゃいけないし、1日のリズムが違っていたでしょうね」
リクルートスタッフィングに登録したのは、2017年4月。母校での学生の留学をサポートする仕事が任期満了を迎えたのがきっかけだった。
“フルタイム”という働き方も考えなかったわけではない。年齢的に、切り替えるなら今しかないという迷いや葛藤も、正直あったという。
「でも、娘の学校で役割もきちんと果たしたいし、同居している高齢の両親を、元気なうちにいろいろなところに連れて行ってあげたい。趣味で習っている着付けやお茶も楽しみたい。どれも我慢をしたり犠牲にしたりしないですむにはと考えたら、週4日の仕事が私にはちょうどよかったんです」と振り返る。
みんなが喜ぶためなら、率先して動くことをいとわない
「物事をよりよくするために工夫したり動いたりするのが、割と好きかもしれません」と自らを分析する島崎さん。今の職場で担当している社会人向けビジネススクールの運営事務局の仕事でも、同僚とコミュニケーションをとりながら、あいまいだったり複雑になりすぎている部分をチェックし、シンプルで現実に即したマニュアルに改善してきた。
「もちろん最初は従来のやり方をそのまま踏襲してやってみます。でも、ひと通り覚えて全体が見渡せるようになると、もっと効率的にするためにはここをこうして……と、つい変えたくなっちゃうんです」
プライベートでも、そんなアクティブさを遺憾なく発揮。
「たとえば、『今度集まろうね』と言いながら何年もたってしまうことがありますよね。でも、それじゃ人生もったいない。私、そこはマメにやるタイプです。さっと連絡回したり、通勤電車の中でお店を検索したり。思い起こせば、中高生時代からそんな感じでしたね」
みんなが喜べばうれしいし、そうやって交流を積み重ねていくことで、人と人とのつながりは深まっていく。
「仕事でもプライベートでも、大切なのはご縁とタイミングだと思う。だから、どこに行ってもすぐ“幹事さん”になっちゃうんですけどね(笑)」
大変さを乗り越えた達成感が人生を豊かにする
50代を迎えた島崎さん。最近は、“与えられたもの”“来るもの”を積極的に受け入れていきたいと思うようになったと言う。
「この年になると、自分から求めて未知の世界に飛び込むって、なかなかハードルが高いんですよ。でも、同じことの繰り返しでもつまらない。だから、声をかけていただいたり新しいチャンスを与えていただけたなら、できるだけ手を伸ばしてみようというスタンスでいます」
PTAの役員しかり、娘さんが所属しているガールスカウトのお手伝いしかり。半分やりたい気持ちがありながら、勇気がなくて踏み出せなかったらきっと後悔する。「それは嫌」ときっぱり。
「面倒なことがない代わりに何も起きない人生よりも、一所懸命やって、大変さなり、達成感なりを味わったほうが人生豊かかなって思うんです」
家族のいない休日は完全オフ
無理はしない。けれど、動けるうちは余力を残すより全力投球。華奢で小柄なからだのどこに、と思うほどパワフルでバイタリティーあふれる島崎さん。
「でもね、家族がみんな留守で私が家に一人なんて日がたまにあると、『よっしゃっ!』ってなりますよ。たっぷり二度寝してお昼もカップラーメンで済ませて、録画していたビデオ三昧。何もしない贅沢ですよね。そうするとちょっと後ろめたくなって、その分、またみんなにやさしくしなきゃって気になってくる(笑)」
毎日を自分らしく上手に。バランスを保つコツは、まず自分自身の気持ちの切り替えにある。島崎さんの軽やかな笑顔を見て、そう納得した。
オフィスの必需品は手作りの加湿器とからだによいプチおやつ
オフィスのデスクにいつも置いているのは、手作りの加湿器と数種類のおやつ。
「インフルエンザが流行っている頃、加湿器がほしいと思ってネットで検索したらこの作り方が出てきたから早速試してみました」。出勤するとまず、お湯とお気に入りのエッセンシャルオイルを容器に入れ、花びらのようにカットしたコーヒーフィルターをセットする。
気分転換をしたいときに口に入れるおやつは、ナッツ類や昆布、クコの実など、「体によさそうなもの」をチョイス。陳皮は、いただきものの柑橘の皮を使った自家製だ。「粉末の柚子茶なんかに合わせると、香りもいいし飲みやすいんですよ」
お弁当は、高校生の娘さんに作るついでに自分の分も。
「娘が幼稚園のときから毎日、お弁当の写真を撮っていて、今は、2つのアプリに投稿しています。そう決めることで、自分の励みになる。いろいろ続けるのはむずかしいけれど、これだけはやり遂げたいんです」
「市販の冷凍品は使わない」がマイルール。常備菜などでできるだけ手間を省きながら、手作りにこだわっている。
カメラマン:上澤 友香(うえさわ ゆか)