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自分を見つめ直したら、大好きな唄で誰かを笑顔にする喜びを知った

花が咲いたような笑顔が印象的な佐藤由紀子さんの趣味は民謡。震災後は、宮城県、岩手県の被災地をボランティアで訪れ、ここ2年くらいは、老人ホームやイベントなどでも唄っている。「正社員と派遣スタッフ、それぞれ一長一短だけど、いいところを楽しんでいこうと思うんです」と語る、佐藤さんのワークライフバランスについてうかがった。

日々の忙しさに不安を抱いたころ、母の看護が始まった

「30代は仕事に駆け抜けた」と語る佐藤さん。世界的に有名なエンターテインメント企業の日本法人で、日本のストアで販売するキャラクターグッズの商品開発担当やデザイナーを務めた。商品は季節ごとに店の約半分が入れ替わるため、常に商品開発や監修業務に追われていた。毎日忙しく、帰りは終電のことも少なくなかった。

「ものすごく忙しかったんですけど、その分やりがいが大きかった。商品開発は、店頭の陳列デザインまで考えて会社に提案することもあったんですけど、そのデザインが『これ売れそう』となると、ポーチからペン、ノートなど横展開が増えるんです。自分が担当したグッズをたくさん持っていますし、愛着もあるので、いまでも使っています」

やりがいはあるものの、このまま続けて自分の体力は持つのだろうか――。一抹の不安が心をよぎったころ、母の看護が必要になった。

「仕事のボリュームを減らして、親や家のことを考えないといけなくなったんです。いい機会かもと、自分の人生を見つめ直すことにしました」

新しい働き方は、いままで見えなかったものを見せてくれた

母の看護が落ち着き、正社員として社会人復帰した佐藤さん。ところが、3年弱で勤務先がまさかの倒産。急いでほかの仕事を探そうにも、なかなか自分の希望条件で正社員として雇ってくれそうな会社はなかなか見つからなかった。

加えて、当時の日本はリーマンショックや東日本大震災の影響で就職氷河期真っ只中。求人自体が少なかったのだ。それでも一生懸命に探し、少しずつ条件を調整した結果たどり着いたのが、派遣という働き方だった。

そこから約5年。佐藤さんは、株式会社日建設計のエンジニアリング部門でOAデザインアシスタントとして働いている。資料作成時のデザインのガイドライン製作チームに入ったりと、未経験の業界ながらも、これまでの経験を活かしているようだ。

「派遣として働きだして、最初はすごく違和感がありました。かつて終電まで働いていたころと比べると仕事量が少なくて(笑)。それに、いままでは自分で考えアシスタントやベンダーに 指示を出す側だったのが、今度は指示を受ける側になったというのにもすごく戸惑いがありました」

しかも、まったく畑違いの業種で、知らないことだらけ。おまけに、佐藤さんが文系なのに対し、周囲の人たちは理系ばかりなのにも戸惑った。

「業界が違うと、同じことを伝えるにも使う言葉や単語も全然違うんだと知りました。本当に日々勉強で、いまは、ずっとプロダクトデザイン関係の仕事をしていたら気づかなかったことに気づかせてもらったというありがたさを感じています」

原点に立ち返るように始めた民謡にすっかり夢中

佐藤さんの一番の趣味は民謡。「子どものころは嫌いだったんですけどね」と笑う。家族が民謡や演歌が好きで、自宅にはしょっちゅう民謡や演歌が流れていた。でも、当時の佐藤さんは友人と一緒にアイドル歌手に夢中。レコードを買ってもらえないどころか、民謡や演歌を押し付けられた結果、すっかり嫌になってしまったのだとか。

そんな佐藤さんが民謡を唄うようになったのは、かつて忙しく過ごした時期。外資系企業に勤務していたため、会議から経費精算等にも英語が求められ、仕事の進め方もアメリカ式。少しずつ、自分の日本人としてのアイデンティティーが削がれていっているようにも感じていた。

「休みの土日は日本人らしい趣味を楽しみたいって思ったんです。最初はカラオケで演歌でも習おうかと思ったんですけど、もう一歩踏み込みたいなと。そこで思い出したのが、祖母が聴いていた民謡だったんです」

それがいまや、コンクールにも出場し、とある民謡の東京大会ではプロも出場するなか、アマチュアとしては大健闘の第4位という結果を残すほど。「でも、まだ大きなトロフィーがもらえていないから悔しい」と苦笑い。負けず嫌いの挑戦は、まだまだ続くようだ。

正社員としてのキャリアの代わりに、得られたもの

得意な民謡を活かして、ボランティア活動もしている佐藤さん。10年前から行っているが、2年前から頻度が増えていった。老人ホームに行っては、津軽三味線をバックに民謡を唄い、おじいちゃんおばあちゃんを笑顔にするお手伝いをしている。

「2年前、母が亡くなって、もう会えなくなりました。その直後に、父が少し離れた場所にある老人ホームに入居して、あまり会えなくなったんです。その寂しさを、自分が訪ねた老人ホームにいる高齢者の方々と話すことで癒してもらっているという感覚があります。そう考えると、私の方がたくさんギフトをいただいているんですよね。」

以前、ある老人ホームにボランティアに行ったところ、手違いで訪問が共有されておらず、見知らぬ団体の訪問に驚いたのか、入居者さんに怒られたことがあったそうだ。それでも、精一杯心を込めて唄や演奏を届けたら、はじめは不機嫌だった入居者の女性が佐藤さんの手を強く握って、「ありがとう。今度はいつ来てくれるの?毎日来てほしい」と笑顔で感謝の言葉を伝えてくれた。

「民謡を皆さん喜んでくださるんです。その笑顔を見ていると、私も幸せな気持ちになり、自己満足で終わるのではなくて、もっと喜んでもらえるように勉強、研究しようって思えるんです」

自分の時間を持てるようになり、それを趣味に費やせるようになった日々を、佐藤さんは心から楽しんでいるようだ。

壊れるたびに買い直しているマウス

ファイルケースやアイピローは、それぞれ同僚にもらったもの。特にファイルケースは、打ち合わせで使う書類はピッタリ入るサイズで重宝している。

マウスは会社でも当然支給されているのに、自分用を持ち歩くこだわりよう。

「小さいだけじゃなくて、手にフィットして、しかも有線なのが好き。もう廃盤しているんですけど、壊れるたびにどうにか探し出して買っています」

サプリメントも好きで、最近はアンチオキシダント(抗酸化)にはまっているのだとか。

財布はつい最近買ったばかりで、こだわりは「絶対にL字ファスナー」。

ライター:小山 典子(こやま のりこ)
カメラマン:福永 仲秋(ふくなが なかあき)