お金だけのために働くのではなく、自分らしい働き方を求める声が増えてきた昨今。自分らしい働き方を見つけるには、自分についてどんなことを知っておく必要があるのだろう?今回のらしさオフラインでは、『マッキンゼーで当たり前にやっている働き方デザイン』(日本能率協会マネジメントセンター)の著者である大嶋祥誉さんに、自分の働き方をデザインするための方法を、ワークを交えて教えていただいた。
「私の将来大丈夫?」という気持ちは多くの人が持っている?
イベントのタイトルは「未来のキャリアがカタチになる働き方デザイン」。副題には「他人と比較する人生? or 自分らしい人生?」とある。まず参加者に投げかけたのは、次の質問。
こんなことありませんか?
・もっと自分を活かす働き方があるのでは?
・このままの状態で働き続けて良いの?
・他人と比較して自分ってダメだな、だいじょうぶかな?
・と言っても何から手を付ければ
・何かの糸口さえ見つかれば
挙手をしてもらうと、多くの人の手が挙がった。副業がさかんになり、正社員になっても将来の約束がなく、AIが仕事を奪うと言われ……。未来が不安になる人は多いのだろう。
「実はこれ、以前の私だったんです」と大嶋さんが告白。過去に外資系のコンサルティング会社にいたものの、周囲の優秀な人に圧倒され、「このままで私の人生どうなるの?」と思っていたという。
ところが、現在は書籍を出版したり、コメンテーターとしてテレビに出演したり、経営者のコーチングも実施したりと、さまざまなフィールドで活躍している。それは、「ある考え」に出会ったのがきっかけなのだそう。
その考えを紹介する前に、隣の席の人とペアになって自己紹介をしあう。大事なのは、まずニコッと笑顔で「よろしくお願いします!」と言い合うこと。その後、数分の時間を取って「名前」「今の状態」「得たいこと」を言い合った。
話したことにより自分で気づきがあったら、書き留めておくといいという。
「ゾウは空を飛べない」という考え方
大嶋さんが働き方や生き方を変えるきっかけとなった「ある考え」とは、「ゾウは空を飛べない」というもの。
「突然ですが『ゾウは空を飛べない』ということを知っていますか?」
突然の質問に会場はキョトン。
「知ってますよね? 当たり前ですよね?でも、ゾウが『空を飛べない私なんてダメだ』と思っていたらどう思いますか?『何言ってるの?空を飛べなくたっていいじゃない』『象らしさが、ステキ』と思うのではないでしょうか。私たちに置き換えたとき、同じことを考えていないでしょうか。頑張って、自分じゃないものになろうとしているのではないでしょうか。苦労しても成果が出ない。それは、当たり前かもしれないのです」
なぜなら、あなたが苦労していることは、自分の特性ではないかもしれないから。
また、SNSなどで友だちの様子を見たり聞いたりして、つい自分と比較して卑下してしまう。でも、そうやって、「空を飛べないなんてみじめだ」と悩むのをやめましょう、という提案。つまり、自分じゃないものになろうとするのではなく、特性を生かしていくことが大切なのだそう。
そのためには、「自分軸」を知ることが大事だと大嶋さんは言う。それを見つけるワークをする前に、まずは「ゼロリセットワーク」を実施。これにより、「心がすーっと軽くなる」のだ。
まず、配られた用紙の左上に、気になっているテーマを1行で書く。その後、関連することで気になることを、用紙の左側に箇条書きでどんどん書いていく。
そこまでできたら、全員で立ち上がって深呼吸をし、体を揺らしたり、ねじったり、首や腕、腰などを動かす「フリフリ体操」をスタート。これにより体がリラックスしていく。さらに、両腕を伸ばして、手のひらを外側に向け、前から上、後ろへと大きく回す「ハートが開くワーク」をした。何度も腕を回すことで、猫背で内向きになっている身体をほぐし、肩甲骨を開いていく。
「胸が楽になった感じがすると思います。この後、自分が『賢者』になったつもりで、右側に解決策を書いていきます。ポジティブなことを、どんどん書いていってください。例えば『大丈夫、何も心配することない』などでもいいんです」
解決策を書いた後、隣の席の人とペアになり、共有した。「解決策って自分の中にあるなと感じた人?」「そんな深刻でもなかったな、と気づきがあった人?」と質問すると、かなりの数の手が挙がった。
「フリフリ体操」や「ハートが開くワーク」をしないと、ネガティブな気持ちを引きずってしまうため、これらは解決策を書く前に必ず入れてほしいとのこと。
才能のカケラをみつける
次に「才能のカケラ」を知るワーク。「才能のカケラは、自分が好きなことの中にある。そして、才能のカケラを知ると、自分とは何者で、どんな才能(特性)があるのか、つまり、自分軸を知ることにつながる。すぐには見つからないかもしれませんが、その断片、カケラを感じてみてください」と大嶋さん。
過去、自分がワクワクしたことや楽しかったことを、隣の人と話し合う。その時に、「幼少期」「学生期」「社会人」と3つに分け、それぞれの時間を設けた。その際に、話しながら、どこが好きだったのか、傾向を見つけるなど抽象化しながら話していくのがポイント。
・それのどんなところが好き?
・見えてきた傾向は?
上記2つを見つけるつもりで話し、それがわかったらキーワードを書きだしていく。時期ごとに3回繰り返すことで、全体の傾向を見出すことができるそう。ワークの最中、自分の好きなことを語ったり、相手に質問したりするのに、参加者の生き生きした表情が見られ、大いに盛り上がっていた。
その後、やってみて感じたこと、見えてきたこと、ペアの人との傾向の違いなどを話し合いながら、お互いのネーミングを見つける。このネーミングが、自分は何者であるのか?を表している。例えば過去には、「エンジェルのサポーター」や「思考整理が好きな片づけアドバイザー」などとネーミングした人がいたという。
「この短時間でネーミングまで見つけるのはなかなか難しいので、見つからなかった人は宿題として持ち帰って考えてみてください」と説明した後、最後に「ほめほめシャワー」と題して、これまで話をしたペアでお互いを褒めるワークをした。これは、仲のいい人と時々やるといいそう。
働き方をデザインする4つの質問
ワーク後、自分の働き方をデザインするための4つの質問を紹介した。
(1)自分の特質は何か?
(2)自分はどんな価値を提供したいか?
(3)自分はどんな進化・成長をしたいのか?
(4)自分はどんな報酬を得たいのか?
通常は、この4つのステップで、自分らしく、好きなことや才能を生かして働き方をデザインしていくという。その(1)の部分の「カケラ」として今回のワークがある。
「どうせうまくいかない」「できっこないよ」という悪魔のささやきは、行動のブレーキになってしまう。どんなブレーキがあり、どうすればブレーキを外せるか、自分を知ることが大切。ブレーキを外して初めて、前に進むことができる。今回のワークをきっかけに、自分らしい働き方をデザインしていきたい。
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)