私たちは毎日、自分のいろいろな感情と付き合う。特に、仕事がかかわるとネガティブな感情ともうまく付き合わなければならないはず。ところが、感情の付き合い方は誰に教わるでもなく、じっと耐えていることが多いのでは……。そんな毎日を少し軽くしてくれるのが「感情のレッスン」。リクルートスタッフィング2階にある登録研修センター「らしさLaboratory(通称:らしさラボ)」のプレオープン記念に、東京大学の客室研究員で臨床心理士でもある関屋裕希さんに講演をしていただいた。

講師:関屋 裕希さん
臨床心理士。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野 客員研究員。専門は産業精神保健(職場のメンタルヘルス)であり、おもに認知行動アプローチを活用した、従業員や管理監督者向けのストレスマネジメントプログラムの開発に従事。業種や企業規模を問わず、ストレスマネジメントに関する講演、企業の組織的なストレス対策に関するコンサルティング、執筆活動を行っている。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

ネガティブ感情は抑えるかコントロールするしかない?

プレオープンした「らしさラボ」で、明るい雰囲気に包まれながら講演会がスタート。4人グループになって座っている参加者がリラックスできるよう、アイスブレイクからスタートした。

アイスブレイク後に「感情、どう付き合っていますか?」と、関屋さんが問いかける。感情に関する書籍はたくさんあるものの、タイトルを調べると、ネガティブ感情を「抑える」「コントロールする」「制御する」といったキーワードが散見されるという。

「感情って、敵なの?と思ってしまいませんか。抑えたり、コントロールしたりすべきなのでしょうか?もちろん、ネガティブ感情は少ないほうがいいでしょう。ただ逆の考え方で、それらを味方につけて楽しく過ごす方法を考えていきたいと思います」

感情には方程式がある

「人は、どんな時に感情的になるのか、あらかじめ決まっています。それは文化や育った環境が違っても共通しているのです」

その内容は以下のようなもの。

・悲しみ= 大切なもの × 失う
・怒り= 大切なもの × 傷つけられる
・落ち込み= 過去の失敗 × エネルギー切れ
・不安= 未来のこと × 分からない

「これらを知っているだけで、例えば『なぜ悲しいのだろう?そうだ、あれをなくしたからだ』とわかります。それにより『わけもわからず悲しい』ということがなくなり、自分のいる状態を俯瞰できるのです。それだけでも、気持ちが楽になりますよね」

「落ち込み」に注目して「どうしたらいいか」を考える

今回は、「落ち込み」について考えていくことに。

「落ち込みはエネルギー切れのサインなので、対策はとてもシンプルで、『休んだ方がいいよ』と私たちに教えてくれています。でも、落ち込んだ時に休むのはとても難しいですよね。『ああすればよかった』『こうすればよかった』と起きたことを繰り返し反省したり、自分を責めたりしてしまいます。そんなときの対処法を紹介します」

【友人アドバイス法】

ここで、落ち込みへの対処法としてワークを実施。まずは、落ち込むような事例をスライドで紹介した。「依頼されたデータ処理。今年から違うやり方で進めることになっていたのをうっかり忘れ、去年と同じように処理してしまった」というミス。

「この時、あなたがこの人の友人なら、なんと声を掛けますか?」

グループでディスカッションしながら、いくつかの案を出していった。ワーク後に尋ねると、さまざまな意見が出た。

「いずれにしても、友だちには優しく声を掛けられるはず。もともとは評価されていたからその仕事を任されていたとか、よい面も見えてきますよね。これが自分になると、よいところも見えなくなってしまうのです。だから、『友達だったらなんて声をかけるかな?』と考えるのが、反すう思考から抜け出すひとつの方法。これを『友人アドバイス法』と呼びます」

【行動活性化法】

二つ目を紹介する前に、「行動と気持ち、どちらが先だと思いますか?」と関屋さんから問いかけ。気持ちが先だと思われることが多いが、行動から気持ちが変わることもあるという。例えば、仕事帰りに花を買ってきて飾ったら、優しい気持ちになったり、リフレッシュできたりするパターン。

「行動から気持ちの流れを利用して、落ち込んだ時に気分を変えられそうな行動をリストアップしてください。横軸に『のんびり←→アクティブ』、縦軸に『時間かけて←→手軽な』という十字を書いて、その中に行動を書いた付箋をどんどん貼っていきます」

5分くらいのワークで、用紙にびっしりと付箋紙が並んだ。この中から気に入ったものを選びメモを取って、自分が落ち込んだ時に使うといいという。できるだけ、自分ではなかなか選ばないものがいいそう。これを「行動活性化法」と呼ぶ。

最近の研究で分かった「セルフコンパッション」

【セルフコンパッション】

三つ目は、心理学の世界でも新しい考え方の「セルフコンパッション」。落ち込んだ自分に対して、思いやりの気持ちを持つ方法だ。次のような手順で実施する。

・目を閉じて、落ち込んだ時にほっとできる「色」をイメージする
・目を閉じて、そこにいるとほっとできる「場所」をイメージする
・名刺サイズのカードに「その言葉を聞くと痛みが和む」という言葉を書く

すぐに言葉が浮かばなくても、うまくいかなくて落ち込んだとき、自分を責めるのではなくて、まずは思いやりの気持ちを向ける、そのようなやり方もある、と知ることがまずは第一歩だという。

イベントは和やかな空気で終了。グループワークも多かったため、テーブル内で打ち解ける様子も見られた。

イベント後は、同会場で軽い夕食を楽しんだ。以前、らしさオンラインでも紹介したGreen Diningから、季節のメニューの説明を。おしゃれでかわいらしい料理をブュッフェ形式でそれぞれのお皿に盛り付け、テーブルで歓談。普段は別の場所で働いているため、横のつながりの少ないスタッフ同士の親交を深められたようだ。

終了後、参加者からは「感情の方程式を知ることができ、少しだけ気が楽になった気がします」「感情を味方につける方法を具体的に教われて、役立ちました」「同じ派遣スタッフの方と話す機会があり、意見交換など出来てよかったです」などの声があり、皆笑顔で会場を後にした。らしさラボのオープンにより、今後、らしく働くためのふとしたキッカケが、ここからさらに生まれることを期待したい。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)
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