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20代最後、やりたいことにチャレンジしている“いま”がうれしい

29歳を迎えた今年の5月、かねてから念願だった営業職への転職を果たした小西亜莉沙さん(29)。まわりの友人が、結婚、出産、転職…とさまざまな人生の転機を迎えて変わっていく様を見ながら、「私が本当にやりたいことは何なのだろう……」と動き出せずにいる自分がもどかしかった時期もあった。悶々と悩んでいた小西さんの背中をぽんと押したのは、電話の向こうの「あなたでよかった」というひと言だった。

「あなたに聞いてよかった」

「年配の女性のお客様で、商品についてのお問合せの電話だったんです。『営業の方に説明していただいたのだけど、よくわからないところがあるからちょっと教えて』と」

当時、フロアコーティングやリフォームを扱う住宅設備会社で事務の仕事に就いていた小西さん。顧客からの電話は営業担当者の直通番号にかかってくるのがふつうで、小西さんが直接顧客とやりとりをしたり商品の説明をしたりする機会はまれだったという。

「その電話はたまたま会社の代表番号にかかってきたので、私ができる範囲で対応させていただきました。ワンちゃんを飼っていらっしゃるとお聞きしたので、ワンちゃんの足にもやさしいコーティングをご紹介したりして。そうしたら最後に『すごくわかりやすかった。迷っていたけど決めたわ。あなたに聞いてよかった』と言ってくださったんです」

そのとき、電話の向こうに女性の笑顔が見えたような気がした、と小西さん。「会社に少し貢献できたような手ごたえがあって、うれしかったですね」と声を弾ませる。

消去法で選んだ仕事に物足りなさを

小西さんは、もともとミュージシャンをめざしていた。音楽系の専門学校に進み、卒業後も居酒屋でアルバイトをしながら、20代前半はライブ活動などでプロの道を探っていたという。

「でも、やっぱり現実はなかなか厳しかった。アルバイトでやりくりしていくのも楽ではなかったし、まわりの友人が大学を卒業してだんだん就職していくという状況にも焦りを感じました」と当時の心境を振り返る。

好きな音楽は趣味として続けようと割り切り、就職することを決意。ただ、それまでひたすら音楽だけを追ってきた小西さんにはやりたい仕事が思い浮かばなかった。

「居酒屋でずっと接客していたので、人と関わることの多い営業の仕事に興味はあったのですが、スキルも経験もない自分にはできるわけないと思っていました。かろうじてパソコンの基本操作ができたので、一般事務ならなんとかなるかなと」

いわば消去法で選んだ事務職。与えられた仕事には誠実に向き合っていたが、一日の多くをパソコンに向かい、ファイリングやコピー、請求書発行などのルーティンワークに費やす現実に、次第に物足りなさを感じるようになる。

30歳を前に、「挑戦するならいまだ!」

「やりがいをもって働きたい」「もっと人と接する仕事を」――そんな漠然とした思いを抱きながら、一歩踏み出す勇気がないまま歳月はすぎたが、「30歳」を意識するようになって、いよいよ気持ちが揺らいだ。

「職場の雰囲気は悪くなかったから、そのままでも平和なんだけれど、長い人生を考えたら、挑戦するなら、いまじゃないかと」

最初に紹介した顧客との電話のエピソードは、ちょうどそんな頃の出来事。相手の女性の喜ぶ顔を想像しながら、「私は営業がやりたいんだ」とはっきり自覚したという。

それからほどなくして小西さんは、IT関連の会社に派遣スタッフとして就業。いまは、システムの販売や提案をする営業部署で補助的な仕事に携わっている。

「一日も早く、戦力になりたい」

小西さんにとっては、営業の仕事も初めてだが、IT業界自体も未知の領域。必死に勉強しながら仕事をこなしている毎日だ。社内でのレクチャーを録音して家で聞き直したり、「昔だったら絶対見てなかった」ニュースアプリをチェックしたり。いつか営業トークに役立つかもしれないからと、経済や社会問題など幅広い事柄にも関心が向くようになった。

「用語ひとつ覚えるのも大変です。『そんなことも知らないの?』ってあきれられそうで恥ずかしいのですが、わからないことは周囲の方に聞くようにしています。以前は困っていても人に聞けないタイプでしたが、そんなこと言っていられない。切羽詰まって相談しているうちに、自然に苦じゃなくなりましたね」
 
「一日も早く一人前になって、お客様を任せていただけるようにがんばりたい。戦力になりたいんです」と視線をまっすぐこちらに向けて、言葉に力を込める小西さん。「でも、それには何を質問されても困らないようにならなくては。まだまだハードルは高いんですけどね」と表情を引き締める。

迷ったり悩んだりした20代の最後、「やりたい」という気持ちをテコに、えいやっと上った次のステージ。自ら選んだ新しい場所で、小西さんはどんな風に“らしさ”を輝かせていくのだろう。

スワロフスキーのキラキラペンは、憧れの先輩からの転職祝い

ピンク色にきらめくスワロフスキーのボールペンは、前の職場で仲良くしていた先輩からのプレゼント。

「その先輩も営業職なんです。へこむようなことがあっても、いつもニコニコしている憧れの存在でした。私が希望をかなえるために転職することを知って、『営業なら可愛いペンを持っていたらいいよ』と贈ってくださったんです」

デザインに惹かれて購入したメモ帳は、ペンスタンドとしても使っている。カンガルーのマスコットは、友人のオーストラリア土産だ。

フェルナンダの「フレグランスハンドクリームマリアリゲル」は、清潔感のある甘い香りがお気に入り。半年くらい前、男性の友人にすすめられて使い始め、はまったという。

サザンオールスターズのカードは、サザンオールスターズの40周年キックオフライブで配られたもの。昔から大ファンだったサザンのカードを見ると、疲れも吹き飛ぶという。ちなみに、とくによく聴くのは『思い過ごしも恋のうち』『波乗りジョニー』など。「結構、古い歌が好きなんですよね」

ライター:高山 ゆみこ(たかやま ゆみこ)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)