「変わりたい」――。想いを抱けど行動に移せる人は、決して多くないだろう。多くの人は、今の自分と理想の自分の間に葛藤を抱えながら生きている。そんななか、岡部美栄さんは、その強い想いを行動に移し、充実した毎日をハツラツと生きる人だ。彼女の笑顔の秘密をうかがった。
最初は無理だと思った、けれど生で見たら強烈に惹かれた
7年前、当時大分に住んでいた岡部さんは、やりたいことを探していた。色々試してみた結果、「変わりたい」という思いから苦手なダンスにトライしようと思い、ヒップホップダンスを始めたとのこと。そんな彼女を見た職場の同僚でありDJでもある友人が、「ポールダンスをやってみたら?」と勧めてきたという。
「絶対無理!って(笑)。YouTubeで動画を観てみたんですけど、アクロバティックでサーカスみたい。私はチャレンジ精神が旺盛なタイプだけど、さすがにできないって思いました」
とはいえ、ポールダンスのことがなぜか頭から離れずにいた矢先。大分のダンスイベントでもらったフライヤーで、YouTubeで観たダンサーのショーが翌週大阪で開催されることを知った。当初は迷ったが、気づけば足が向いていた。
生で観るポールダンスショーは想像以上に衝撃的だった。「やってみたい!」と強い衝動にかられ、その勢いのままポールダンスの世界に足を踏み入れることを決めた。
あの人のレッスンを受けてみたい!じゃあ東京に行こう!
ポールダンスを始めるため、さっそく地元のダンススタジオでポールダンスを教えてくれるところを探してみると、県内を車で1〜2時間走らせたところに1件だけ発見。すぐさま問い合わせ、月2回のレッスンを始めた。
あっという間に夢中になったものの、すぐに物足りない気持ちに。「もっとポールダンスがしたい」という思いが湧き上がってきたのだ。そこで、並行して福岡のスタジオにも通うことにした。すると、そのスタジオ経由でショーにも出させてもらえるように。こうして岡部さんの生活がどんどんポールダンス色に染まっていくと、その脳裏に1つの思いが芽生えた。
「大阪で見たポールダンサーのレッスンを受けてみたい」
さっそくそのポールダンサーが東京で出演している公演を観に行き、フライヤーで紹介していたスタジオでレッスンを受けることを決めた。まさに即断即決。あっという間に、毎週東京までポールダンスレッスンに通う日々がスタートした。
折りしも当時は日本にLCCが登場したばかり。東京に安価で行けるようになったことも、岡部さんの背中を押したのだ。
目の前に現れたタイミングに、後押しされて
東京にほぼ毎週通う生活は4年間にも及んだ。
「東京に知り合いが増え、だんだんと輪が広がっていった一方で、疲れ始めている自分がいました。東京に住みたいなーと思うようになったんですけど、勇気が出なくて。当時の仕事は安定していたので辞めるのはもったいなかったですし」
迷いの日々を送るなか、人事異動の辞令が出た。異動したら、新たに勉強しなければいけないことが山ほどあり、いまほどポールダンスに時間を割けなくなる。それは嫌だった。
「いまがタイミングだ。東京に行こう」
岡部さんは心を決め、一人暮らしの部屋を引き払い、東京の賃貸住宅を決めた。そして出発直前にようやく、反対されるだろうと黙っていた家族に「東京へ行く」と告げ、2018年1月1日、ポールダンスを目一杯楽しむために岡部さんは上京したのだ。
変わりたい気持ちが、また次の出合いへ
安定を捨て、東京に拠点を移した岡部さん。それほどまでにポールダンスにのめり込む理由は何なのだろうか。
「自分を表現するうえで、私にはポールダンスという手段が合っていたんだと思います。ストーリー仕立てでエンタメ性の高いポールダンスをするのが好きなんですけど、違った自分になれるんですよ。すごく楽しい。しかも、その姿を見て、誰かも楽しんでくれる。これって最高じゃないですか。だから私は舞台に立つんです」
正直、いままで何かに打ち込んだことはなかった。周りが結婚したり、仕事に生きがいを見出したりと生活スタイルがわかれていくなか、自分には何もないと感じていた。自分も何かに打ち込みたい、変わりたいーーそう思ったときにポールダンスと出合ったのは、きっと運命だったのだ。
「できることを続けていたら、必ず何かに出合うと思うんです。そのときに飛び込む勇気を持っていたい」
ポールダンスの次は、何に飛び込んでいくのだろうか。岡部さんは今日も前を向いて、ハツラツとした笑顔を見せている。
ポールダンスのマイ必需品!
ポールダンスはポールから滑らないことが大事なので、滑り止めグッズを愛用する。グローブはだいたい半年から1年で汚れたり磨耗したりするので買い換えるとのこと。アイタックは太ももの内側や膝裏など、滑ったら怖いところに塗る。
スマホでは、仲間と連絡を取り合ったり、Dropboxで写真や音源、練習風景のムービーを共有したり。日々手放せない。
派遣、アルバイト、ポールダンスと駆け回るため、手帳はスケジュール管理にマスト。項目ごとに色分けして、わかりやすく管理している。
ライター:小山 典子(こやま のりこ)
カメラマン:福永 仲秋(ふくなが なかあき)