
子どもがいながらも、40歳を超えてSEにチャレンジしたという砂田妙子さん(44)。インタビュー中もパワフルで明るく、表情豊か。活力にあふれ、仕事に趣味に全力投球している。ところが過去には子育てや人付き合いが上手くいかない時期や、今とは真逆の、おとなしい印象を持たれることもあったのだとか。これまでの経歴と、エネルギーの秘訣をうかがった。
息子の中学受験を終え「今度は自分が頑張る番」
夫の転勤や出産が重なり、しばらく専業主婦だった砂田さんだが、ひとり息子が小学校に上がるころ、自分も働き始めようと思い立つ。ところが、タイミングが悪くリーマンショックの直後だった。
「もともとSE補助をしていたので、IT関連の仕事を探していましたが、子どもが小さいこともあり見つかりませんでした。ようやく見つかったのが事務のパートでした」
パートや派遣スタッフとしていくつかの職場で働いたが、大きな転機となったのは、子どもが中学生になったとき。
「子どもが大学までの付属校に入学したので、極端な話、子育ては一段落したと思ったんです(笑)。子どもに『勉強しなさい』と言っているのだから、自分も頑張って、恥ずかしくない姿を子どもに見せたかった。これまで経験してきた事務の仕事ではなく、VBAなどを使う仕事に挑戦したいと思いました」
結婚前にはSEの補助業務としてAccessやVBAを使っていたので、そのスキルを活かせる職場に就いた。これまでのルーティン作業に面白みを感じられなくなっていた砂田さんには、とてもやりがいがあったという。
「以前SE補助をしていたのは10年以上前で、最初は正直難しかった。でも、ロジックはわかるので比較的すぐに使えるようになりました。Accessなども率先して触るうち、3時間かかっていた作業を15分でできるように改善したり……。『実は私って結構いけるんじゃない?(笑)』って、自信がつきました」
『SEでもいけるんじゃない?』の言葉をふと思い出した
新たに挑戦したAccessやVBA などの業務は、学びが多くとてもエキサイティング。ただそれも、2年ほど経ってわからないことが少なくなると、新たなことに挑戦したくなる。
「ちょうどコーチングを勉強している時に『私の強みって何だろう?』と自分に問いかけてみたんです。思い出したのは、過去にIT人材派遣会社でアシスタントをしているころ『AccessやVBAが使えるんだから、SEでもいけるんじゃない?』と言われたこと。試しに派遣会社のキャリアコンサルタントの方に話してみたとろ『いけると思いますよ』と言われたんです」
ただ、SEの技術だけで勝負しようとすると、なかなか難しい。そこで考えたのはこれまでの経験と掛け合わせた、自分の強みについてだ。
「ITスキルだけを見たら叶わなくても、受発注の業務に関わってきたから、専門用語や仕組みはわかる。『ITスキル×受発注の知識』が私の強みだと思ったんです」
新たな職種、新たな人間関係での学び
自分の強みを客観的に捉え、SEにトライすることに。受発注に関する内容ではなかったものの、プログラム言語に詳しくなくてもいいという条件の職場を見つけ、現在はそこで派遣スタッフとして働いている。40歳を超えての、SE職へのキャリアチェンジだ。
「ゼロからプログラミングするのではなく、カスタマイズの業務なので、学びながら働くことができます。ただ、コードを読めなくてはいけないので、最初は本当に大変でした」
それでも、苦労すらもとても楽しそうに話す。また、仕事の内容だけでなく、職場の環境も大きく変わった。
「事務の職場と、SEの職場は雰囲気が全く違います。女性が多い職場ではある程度『言わなくてもわかってくれる』部分がありましたが、今は体当たりでぶつかっていかないと意思疎通が難しいと感じました」
人間関係を冷静に分析できるのは、5年ほど前に出会った「エニアグラム」という性格分析メソッドのおかげもある。最初にこのメソッドを取り入れたのは親子関係をより良くするためだったが、大人同士の人間関係でうまくいかなかったことの理由もわかるようになった。
「昔なら文句を言いたくなってしまうような行動も、その人なりの理由があるとわかりました。だから相手のことが好きになれるし、人と話すのが楽しくなりました。エニアグラムでは、私は挑戦するのが好きなタイプ。だからこれからも、挑戦をずっと続けていきたいです」
今後のことを聞くと「RPAに挑戦したい」「コンサルティングのような問題解決がしたい」と、挑戦したいことが次々にあふれ出る砂田さん。豊富な好奇心とチャレンジ精神で、どこまでもパワフルにトライしていく。
クレイデコのアクセサリーを作る日々
ママ友が開催していたクレイデコの教室に行ったのをきっかけに、毎週のように樹脂粘土でアクセサリーの「新作」を作っている。
「こんなにきれいなものが自分で作れるなんて!という驚きが最初でした。材料費も安いし、デザインも考えられるのでとても楽しくてハマりました。毎週銀座に行ってパーツを買い、新しいものを作るんです」
毎日違ったアクセサリーを身に着けるのがまた楽しい。他に持ち歩いているのは、毎朝ドリップコーヒーを入れるボトル。牛乳を入れたアイスカフェラテがお気に入りだ。
職場で使っているのが、アロマオイルとアロマストーン。周囲の人に迷惑が掛からないよう、目の前に置いて自分だけで楽しむように気を付けているのだとか。今のお気に入りはキンモクセイの香りだ。デスクには、子どものラグビー合宿で購入したキーホルダーも飾ってある。「がんばれ言うな!がんばっとんねん!」という言葉に強く共感したのだとか。
自宅でいつも愛用しているのはパルファン(香水)。8~9年ほどリピート購入しており、寝起きやお風呂上りなどに、ルーム用、ボディ用として使っている。
勉強するのが好きな砂田さん。『エニアグラム―職場で生かす「9つの性格」/ヘレン パーマー(著)』と『完訳 7つの習慣 人格主義の回復/スティーブン・R・コヴィー (著)』の2冊が愛読している本だそう。
ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:刑部 友康(おさかべ ともやす)