過去にうつ病で寝込んでしまうほどハードに働いていた木村由香里さん(46)。一度は働く自信を失っていたものの、派遣から再スタートし、「自分も働ける」という気持ちを取り戻していったのだとか。いまではフリーランスの仕事を含め、4つの仕事を掛け持ち。時間や量を自分でコントロールできるので、余裕を持って働けている。

フリーランスのSEだったころ、うつ病を患う

一般企業の法人営業を経て、SEに転職し、その後フリーランスとなった木村さん。規模の大きなプロジェクトのサブリーダーとして業務を請け負っていた。ところが、公開を目前にして、ある事件が起こる。

「プロジェクトマネージャーが失踪してしまったんです。自宅を訪ねても出てこない。彼の担当分は全く手が付けられていなかったことが発覚して、もう一人のサブリーダーと分担し、残業や徹夜をして何とか乗り切りました」

ところが、事件はそれだけではなかった。失踪した人は戻ってきたが、その人はもう一度プロジェクトマネージャーとしてプロジェクトを任され、驚いたことに、同じように公開前に仕事を投げ出してしまったのだ。

「忙しい毎日のなか、いつからか体調がおかしくなり、毎日熱があり、電車にもすぐ酔ってしまうようになりました。でも、だましだまし仕事には行っていたんです。20年前だったので精神疾患などもあまり知られておらず、自分の体に何が起こっているのか分からなかった。何とかプロジェクトを成し遂げたあと、心療内科を知り行ってみたところ『うつ病』だと診断されました」

取引先からは契約更新を打診されたが断り、1か月半ほどほぼ寝たきりで過ごしていたのだそう。結婚していたが、夫は海外出張中だったため、寝たきりでも気兼ねしなくていいのはむしろ良かったのだとか。

失くしていた自信を、派遣スタッフとして働くことで取り戻した

しばらくして体は回復したものの、再び仕事をする自信がわいてこなかった。

「就職しても、すぐに辞めてしまうのではないか。フリーランスでも契約不履行になってしまうのではないか。そんな不安がありました。でも、派遣なら就業先との調整もしてもらえるので働けそうだと思ったんです」

1年ほど派遣スタッフとして働き、「自分でもなんとかなる」と自信を取り戻せた。その後、産休や育休を挟みながら、派遣スタッフや契約社員などで働いた。

その期間、SEとしての経験を活かして医療系のシステム会社で開発を担当したこともあった。ところが、経験のある業務をなぞるような仕事だったため、このままでは新しい技術についていけず、スキルアップは望めないと感じたそう。そのため、機械製品のシステムを開発する組み込み系エンジニアの研修に参加したり、ファイナンシャルプランナーの資格を取得したりと、さまざまなスキルを身につけた。

二回目の育休から復帰するころ、ちょうどリーマンショックのあとで、希望する仕事に就くことができなかった。ファイナンシャルプランナーの資格を持っていたこともあり、会計事務所で働くことに。繁忙期は忙しいものの、それ以外は週3日ほどの勤務。その環境を活かして、時短で副業をしようと思い立つ。

副業としてWebライターやWeb制作業務の請負を

ファイナンシャルプランナーの仕事を活かして、Webサイトで「ライター募集」と書かれていたメディアに応募し、マネー系の記事を書いた。評判も良く、ほかのメディアから指名で別の仕事が来ることもあったのだそう。

その後は、Webライターの仕事はほぼしていないものの、ブログに記事を書いてアフィリエイト収入を得ている。「最初は全然お金にならなかった」というが、コツコツと続けて、今では月に数万円の収入はあるという。

また、SEのスキルを活かし、Web制作を請け負うWebサイトを立ち上げ、そこからもいくつか仕事が入ってくる。

「もともとパソコン通信の時代から、趣味でWebサイトをいくつか作っていたので、その延長でビジネス寄りに作り替えただけです。家でできる仕事で、納期も見積もりやすく、会計事務所の繁忙期には入れないようにコントロールできるのがいいところです」

Web制作の仕事が少なくなってきたこともあり、もうひとつ派遣の仕事をスタートした。月に数回の勤務をしており、会計事務所、ブログのアフィリエイトと合わせて、4つの仕事を掛け持ちしていることになる。

一時期は夜を徹するほどのハードワークをしていた木村さんだが、「子育てにハマった」というほど子どもの成長が楽しく、仕事はゆるゆるとしていければいいという。

「私の得意なことでお役に立てるのであれば、力を発揮したいですね。夢や自己実現の願望はあまりなくて、自分のできる範囲で、困っている人がいたら助けたい。今の働き方は、とても自分らしいと思っています」

できるだけシンプルな持ち物に

鍵が付いたユニークな小銭入れは、この働き方にしてからもう6代目。

「鍵を持たずに主人より先に家を出て、帰宅しても家に入れないことが何度かあって。鍵を付けられる小銭入れを使うようになってから、同じ間違いはしなくなりました。お札を二つ折りにして、小銭やカードもできるだけ少なくしています」

荷物がシンプルなのは木村さんの好みのようで、使いやすい香りだからと選んだミツロウ入りのリップバームは、ハンドクリームとしても活用している。

メモ帳はルーズリーフ式で、必要なものを最低限挟んでおり、昔のものはこまめに抜いている。子どもが絵をかけるように、クロッキーや画用紙もセレクト。手帳選びは、牛革でなるべく薄いもの、が基準だ。挟んである万年筆は、好きなセピア色のインクを入れてある。

通勤の友は、Bluetoothのイヤフォン。動画が大好きで、ドラマやアニメをたくさん観る。いろいろなサービスに代わる代わる入っては、興味のあるものを観つくすほどだとか。

35歳ごろから冷え症が重くなり、カシミアのストールが欠かせなくなってきた。マフラーとしても、ひざ掛けとしても活用している。何枚か持っているが、こちらは地味になりがちな服装を明るく見せてくれる色合いが気に入った。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:福永 仲秋(ふくなが なかあき)

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