「父には頑張り屋だって言われます」と落ち着いた声できびきびと話すのは、派遣スタッフとして週3日働く島田美郷さん(30)。父の暮らす仙台で働いていたころは、証券会社に勤めて金融商品を訪問販売していた。ところが一念発起してお金を貯め、服飾の専門学校へ。現在、オフの日には個人でネット販売する服作りと、バンド活動をおこなっている。「やりたいこと」にすべて挑戦する島田さんの、これまでと現在のキャリアをうかがった。

自分の営業スタイルを見つけて、少しずつうまく回り始めた

大学で経済学部に所属し、金融のゼミに入っていたため、周囲の人の流れにしたがって証券会社に入社したという島田さん。地元の仙台で一人暮らしをしながら、金融商品の訪問販売をする日々だった。

「1日に200件くらい訪問していたこともありました。きっと、皆さんあまりやりたがらないタイプの仕事だと思います」

最初はまったく売り上げが立たなかったが、半年くらいたって自分の営業スタイルを見つけてからは、少しずつうまく回り始めたのだとか。

「私のやり方は……同じ家に何度も挨拶をしに行くんです。それを繰り返すと、町中の人たちが私のことをなんとなく知っている、そんな状態になりました。ときどき家に入れてお茶を出してくれる方もいる。バレンタインのときには、手作りチョコレートを配り歩いて、3件のお申込みをいただきました。そうなってくると、仕事も楽しくなり始めました」

話を聞くだけでも、誰にでもできることではないだろう。実際、辞めていく人も多かった。無理かもしれないと思ったことを「できた」に変えるのが喜びで、自称「負けず嫌い」。高校時代の部活では、吹奏楽部の強豪校で初心者として入り、東北大会まで勝ち上がったこともあるのだそう。

「やりたいこと」を仕事にしたい

うまくいっていた営業の仕事だが、次第に「やりたいこと」を追求したいと考えるようになった。

「当時のお客様には会社を経営している方なども多かったので、『やりたいことをやった方がいいよ』という話をしてくれるんです。昔から服が趣味だったので、趣味を仕事にしたいと思い始めました」

退職することを決意したのは入社2年後。その後の1年間は節約して学費を貯めた。入社3年後に退職し、仙台にある服飾専門学校のデザイン科へ通う。アルバイトもしながら服作りの知識と経験を重ねていった。

「専門学校では宿題も多くて、想像より大変でした。2年目からの就活も、なかなか決まらずに苦労しました。ただ、いずれも『がむしゃらに働いていたころよりはずっとまし』と思っていましたね(笑)」

苦労の甲斐あって、東京で古着のリメイクブランドに就職することができた。他の人がデザインした古着リメイクを実際に作るのが島田さんの仕事。ただ、自分の思った通りのデザインができるわけではないため、もどかしい想いも募る。

「私も、自分で考える側になりたいと思ったんです。だから、もう少し余裕のある仕事に変えて自分で服を作ることにしました」

リメイクブランドを辞めたあと、ほどなくして自身の結婚式のためにドレスを作った。夫から誕生日にもらったバービー人形のドレスに似せた、お色直し用のピンクのドレス。参列者にも好評で、仙台のころから続けているバンドメンバーとドレスを着たまま演奏も。レンタルではないため、激しいドラムの演奏も気兼ねなくできたのだとか。

夫の手伝いとブランド作り、バンド活動も

現在は、火、水、木曜日の週3日で派遣スタッフとして働きながら、ほかの時間は好きなことに充てている。

Excelは経験がなく、派遣で働き始めてから覚えた。夫がミュージシャンをしており、マネージャー代わりに経理やスケジュール管理を手伝っている。その際にも、Excelのスキルが役立っているのだとか。

「派遣先では、仕事をスピーディにやることを大事にしています。毎日やることは決まっている中で、緊急の仕事も入ってきます。それをいかに早く効率よく作業できるかが重要。忙しいですが、追い込まれてがんばってやり遂げる、というやり方が好きです」

挑戦したかった服作りも、少しずつ形になっている。古着のリメイクほか、オリジナルのデザインの服をネットショップや古着屋で販売しているのだそう。さらに、バンド活動も続けているのだとか。

「今は、一番自分らしい働き方をしていると思います。余裕があるからミスも少ないし、上京してきたころ悪かった体調も良くなりました。自由な時間が週に4日あるので、夫の手伝いのほか、父がひとりで暮らしている仙台にもよく帰っています」

余裕を持った働き方で体も健康になり、空いた時間で好きなことがたくさんできるようになった。「負けず嫌い」で「頑張り屋」な特性を生かし、困難と思えることにもどんどんチャレンジしていく。

仙台が舞台になっている伊坂幸太郎さんの小説がお気に入り

キャラものが好きだという島田さんが愛用するのはスヌーピーの水筒。ローズヒップのリーフにお湯を入れ、鉄分が取れるという備前焼を入れて職場に持参している。会社ではお湯を何回も継ぎ足して飲んでいるのだとか。

一方で、手帳はサンリオのもの。出勤後に共有スペースで見直して、プライベートの予定や買い物などを確認する。それによって毎日に余裕が出るし、忘れ物などもなくなった。

デスクにいつも置いているハンドクリームは、はちみつと野いちごの香りがリフレッシュにもなる。乾燥対策にミスト化粧水やリップも欠かさない。

バッグに入れているのは、伊坂幸太郎さんの小説『フィッシュストーリー/新潮文庫刊』。気に入っている理由は、ほとんどの作品が、故郷である仙台が舞台だから。気持ちのいいストーリー展開で、セリフが多くて読みやすいのも好きだとか。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)

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