56歳で社労士の受験勉強を始めた田崎薫子さん(63)。例年、合格率が平均6~7%といわれる難関の資格に挑戦し続けた結果、合格したのは61歳のときだった。派遣スタッフとして勤務しながら家事と勉強を続けた日々。何年もあきらめずにモチベーションが続いた理由、そして、これからの働き方についてお話をうかがった。

*今回はオンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人より提供いただきました

新しいことに挑戦したい。パソコン初心者からIT会社の立ち上げメンバーに

田崎さんが大学を卒業した頃は、就職氷河期の真っ只中。特に大卒の女性や自宅から通勤できない地方出身者には、正社員の採用がほとんどなかったという。田崎さんも例に漏れず、卒業と同時に非常勤職員として図書館に勤務した。

25歳で結婚、子どもが幼稚園に上がる頃にはスーパーの総務部でパート社員に。30代後半になると、その職場に初めてWindowsが導入された。

「キーボードに触ること自体初めてでしたが、パソコンの扱いはもちろん、ExcelやWordなどソフトの使い方まで上司が全て教えてくれたんです。はじめは自分ができるか不安もありましたが、それ以上に新しいことにチャレンジするのがすごく楽しくて。あのタイミングでパソコンスキルを習得できたのはラッキーだったと思います」と笑顔で語る。

田崎さんに転機が訪れたのは40歳のとき。そのパソコンを教えてくれた上司がIT関連の会社を立ち上げることになり、田崎さんにも声が掛かった。「今で言うベンチャー企業の走りでしょうか。はじめは10人でスタートした会社でしたが、どんどん規模が拡大して、最終的には5、60人程度まで人が増えていく過程を見られたのは、今思えばなかなかできない体験ですよね」

職場に他の女性がいなかった環境で

40歳にして初めて正社員となった田崎さん。会社は右肩上がりに成長し、人事・総務・経理全般と仕事を任されて充実していた。しかし、女性ならではの悩みや葛藤もあったとか。

「会社が地方にあったためか、男性社会というか。女性が少し低い地位で見られている雰囲気は正直ありました。役員と仲がいいから働けているとか、だから給料も上がるんだとか、そんなことも言われました。経理という仕事柄、どうしても疎まれてしまう役割になってしまうこともあったと思います」

会社の経営やお金に関わることは引き下がるわけにはいかない。相手が納得してもらうまで根気強く話をしたことも何度もあった。それでもそこであきらめることもせず、飲み会の場では、改めてコミュニケーションをとるように心掛けたそうだ。

「エンジニアの方はいい意味で“オタク”で真っ直ぐな人も多かった。お酒の席では、普段知らない顔が見えたり、今思えば仲良くなるための良いツールでした」と、何事にも屈しない田崎さんの人柄がわかるエピソードだ。

長く働き続けるためにも社労士の資格を取ろう!

その後、12年間勤めた会社を退職し、派遣という働き方に変更。さまざまな仕事を経験しながらも、56歳で社労士を目指しはじめた。

「当時研修を行う会社に勤務していて、お客様の会社に助成金の説明をする機会があったんです。そのとき、委任状をいただいて、代理でハローワークに書類を届けることになりました。ですが、いざハローワークに行ってみたら“社労士でない方からの申請は受け付けません”と、書類を見ることもなく、帰らされてしまって。ハローワークの場所が遠方にあり、会社から2時間もかけて行ったのに、何もできずに戻ってきたんです…」

そこで悔しさを感じながらも、今後も長く働き続けるためにも“社労士”の資格を取ろう!と決意するきっかけになったそうだ。

平日は起床後・通勤中・帰宅後と、細切れを合わせて計5時間。休日の日中は、ほぼ勉強に時間を費やした。ただ、社労士は合格するのも難関だが、資格取得後も毎年法令が変わるため、定期的に勉強会に参加するなど常にアップデートが必要だという。

「資格の受験講座に通っていたときの講師が、受験も地獄、受かっても地獄と言っていたのが印象的です(笑)」

これからの理想の働き方

受験勉強に5年も及ぶ歳月を費やしたが、最後まで諦めなかったモチベーションは、今後の理想の働き方にも関係する。

「はじめは60歳までに受かる予定だったんですけどね。先に社労士になった先輩から、独立すれば自分のペースで仕事の調整ができ、自分が休みたい日は仕事を入れないと話を聞きました。一気に仕事したいときは土日関係なく、ずっと仕事に集中できることも魅力でした。70歳を超えても現役で仕事をする方もいらっしゃって励みになりましたね」

予備校代や莫大な時間を先行投資した意地もあると笑うが、それだけではない。

「社労士の仕事って日常生活にリンクした内容も多く、勉強を続けても興味が薄れなかったんですよ。私は好奇心旺盛で色々なものに手を出すけれど飽きっぽいんです。趣味も、テニスやロシア語、エレクトーン…他にも色々やってみましたが、長くは続かなかった。最後まで頑張れたのは社労士くらいです」

3回落ちたときはさすがにもうやめようかと思ったそうだが、予備校の仲間たちに励まされて頑張れた。一人ではとても合格できなかった、と言う。

無事に社労士の資格を取得して約2年。1年目は企業社労士として会社内に勤務し、今年の2月から独立して今に至る。まだまだ事業が始まったばかりだが、仕事は順調。仕事とワークライフバランスを調整しながらも、今後も変わらず働いていきたい。

「若い時も楽しかったですが、還暦を迎えた今も、より自分らしく過ごせて楽しいですよ。人によっては家事や子育て、仕事に追われて余裕がない方もいらっしゃるかもしれませんが、ずっとその状態が続くわけではない。一人で溜め込まず吐き出す場所があるといいですよね」豊富な人生経験があるからこその言葉に、勇気をもらった。

受験勉強を支えてくれた筆記用具を今も大切に

ボールペンは、社労士の受験をするために当時の職場を去ることになったが、「記念に」と以前同じ職場で働いていた友人がプレゼントしてくれた。

常に尖った状態で書ける芯(クルトガ)になっているシャーペンもよく使う。社労士の資格をとるための勉強をしていたときによく使っていたため、思い入れが強い。

ワセリン軟膏は、顏がパサパサしたときはもちろん、リップにしてもいいし、髪にも体にも幅広く使えて万能。しっとりと保湿された感じもお気に入り。

ライター:松永 怜(まつなが れい)

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