近い将来予定している起業に備えいくつもの仕事をかけもちし、「まったく働かない日はない」という大久保 遼さん(33)。超がつくほどのハードスケジュールだが、「これまで生きてきて、いまが一番充実しています」と目を輝かせる。大久保さんがゴールに定めた「スーパーカッコいい人生」とは。
*今回はオンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人より提供いただきました
“学び”のための仕事と“稼ぐ”ための仕事
現在、8つもの仕事をかけもちしているという大久保さん。驚いていると、「将来の起業に向けた“学び”としての仕事と“稼ぐ”ための仕事。合わせるとそのくらいの数になるんです」とさらっと話す。
大久保さんによると、通信関係やマーケティング関係などの会社でインターンとして働いているが、これらは「経験を積みスキルを身につけるための勉強」。起業に向けての準備を含めると5つの「仕事」に携わっていることになるが、いずれも現時点ではほぼ収入に結びつかない。生活費や交際費などは、この5つとは別に営業の業務委託やUber Eatsの配達員、飲食店のアルバイト(現在は休止中)でまかなっているという。
「インターン先はどこもトップの人間性に惹かれて紹介してもらったところばかり。自分が得たい経験や知識を学ばせていただけているのでありがたいですね」
「ゴールがないと悩むよね」と指摘され……
こちらに向けるまっすぐな視線から迷いのない意思が伝わってくる大久保さん。けれど、「僕も昔からこんなポジティブな人間ではなかったんですよ。起業とか独立も全然考えていませんでした」と話す。
大学を卒業後、ブライダル関係の会社に就職し、子会社の経理業務全般を任されていた大久保さん。それまでの価値観や人生観をくつがえす出会いがあったのは、社会人3年目の頃だった。
「仕事は面白かったのですが、いろいろあって転職を考えたんです。でも業種も職種も絞り切れなくて……。そんなとき相談相手として紹介されたのが一人の経営者でした。第一印象は割とふつうの感じの方だったのですが、話をしてみたら人生を謳歌している様子がびしびし伝わってきた。よく少女漫画にひし形のキラキラが出てくるじゃないですか。一瞬、その方の周りにそれが見えたんですよ(笑)」
大久保さんをポジティブに変えたきっかけは、そのとき掛けられた「ゴールがないと悩むよね」のひと言。
「たとえば、目的地を決めないで新幹線に乗ったら、『本当はイタリアに行きたかったのに』ということにもなりかねない。新幹線じゃいくら頑張ってもイタリアには着かないよねって。りょう君が会社や職種で迷っているのは乗り物選びに悩んでいるようなもの。目的地を決めないと、乗り物だって本当は選べないんじゃないの、と」
目の前の雲が晴れるような気がした大久保さん。改めて過去の自分を棚卸ししてみると、中高生時代に吹奏楽部で全国大会をめざしたり、希望する大学に向かって一心不乱に受験勉強をしたりと、ゴールが明確なときほど毎日が充実していたことを思い出した。ならば、いまの自分にとっての「全国大会」や「志望大学」は何なのだろう……。
確信できたのは「いまのままではどうにもならない」ということだった。
「自分を変える」と決意し、人間関係も広がった
「とにかく自分を変えていこうと決意し、行動に移しました。まずは見聞を広める時間を作るために、残業を減らしたり休日出勤のない会社に転職したりしました。ビジネス書やYouTubeでもたくさん勉強しましたね」
人とのつきあい方も大きく変化した。以前は、友だちは狭く深くでいいと考え、交友関係も限られていたが、自分を変えると決意したとき以降、「話を聞いてみたい」と思った人たちには片っ端から声を掛けたという。
※2020年1月頃撮影
「お見合いみたいなものもあれば、飲み会に誘っていただいたり、異業種交流会に参加したり。僕から積極的に働きかけて、数えきれないほどたくさんの方に会いました。目先のことだけではなく、先を見据えていま何をすべきかを考えている人が、職業や性別を問わずたくさんいる。同世代にこんなにキラキラした人たちがいるんだってわかったことが一番の収穫でしたね」
「自分の最高点」を一生更新し続けたい
そうして自分自身が変化していくうちに、徐々にゴールも定まってきた。いま、言葉でそれを表現すると、「スーパーカッコいい人生」となるそうだ。
会社を立ち上げるという目標も、そのゴールに近づくための手段のひとつ。セレクトショップや飲食店、イベント事業など構想は広がるが、あまりこだわりすぎず柔軟に進めていきたいと考えている。
大久保さんにとって「カッコいい人生」とはどんなイメージなのか。改めて聞いてみた。
「そうですね。お金をしっかり稼ぐこと、自分の裁量で使える時間を増やすこと、心身共に健康であること、そして仲間がいることでしょうか。この4つの軸を死ぬまで大きくし続けたい。僕は33年生きてきていまが一番楽しいけれど、10年後20年後に振り返ったときに『あの時が一番』とは言いたくない。他人がどう評価しようと、死ぬまで自分の最高点を更新し続けること。それが僕の考えるスーパーカッコいい生き方です」
インタビューの最後、「正直、僕もまだまだこれからなんですが……」と一瞬照れながら、「でも、未完成だからこそ伝えられることもあるはず」と大久保さん。「僕自身がゴールを目指しながら、僕が体験して得た『人生は自分でどこまでも面白く変えられる』ということを、たくさんの人に伝えながら、共に行動し感じてもらえたらうれしいですね」と、きっぱり言い切った。
頑張っている自分へのごほうびに
以前ハワイで購入した、このCOACHのリュックと財布が気に入っている。「ブランド品にはほとんど興味がないのですが、何か自分へのごほうび的に買いたくなったんです。一つの仕事の達成と、これからもっと頑張るぞという思いを込めて。ブルーの絶妙な感じがいいなと思って。いつもこのリュックかウーバーのバッグを背負っています」
コロナ禍で収入源のひとつである飲食の仕事が減り、代わりにウエイトを占めるようになったのがUber Eatsの配達。当初は配達時にシェアサイクルを利用していたが、冒頭に掲載したロードバイクを最近購入した。これでどこへでも行く。「もっと早く切り替えればよかった。性能もいいけれど、セルフイメージもすごく変わりました。今までいろいろなバイトをしてきましたが、ウーバーが一番僕の性に合っている気がします。フレキシブルに動けるし、自分の頑張りや工夫が収入アップという結果につながるから、やりがいを感じます」
ライター:高山 ゆみこ(たかやま ゆみこ)