すらっと伸びた長身をタイトなパンツスーツで包み、やや緊張した面持ちで取材場所に現れた新井淑惠さん(26)。慎重に言葉を選びながら、落ち着いた口調で質問に答える様子に、誠実な人柄がしのばれる。学校を卒業して3年半。所作や言葉の端々に初々しさが残る新井さんだが、自分自身のキャリアをしっかり歩み始めている。
未経験の事務職に挑戦
「未経験からの事務職へのチャレンジ」を応援するリクルートスタッフィングの無期雇用派遣「キャリアウィンク」に登録し、2020年4月から株式会社ファミリーマートの総務部で働く新井さん。
社有車の管理、会議室の予約、捺印関係……など幅広い業務に携わり、毎日が慌ただしく過ぎていくという。
「忙しいくらいのほうが好きなので、ありがたいです。周囲の方も温かく見守ってくださっていて。わからないことがあっても、聞きやすい雰囲気があることに助けられました。辞めたいとか行きたくないとか思った日は一日もありません」
こちらに視線をまっすぐに向ける新井さん。迷いのない言葉から、充実した職場生活がうかがえる。事務職に就くのは初めての経験。当初はかかってくる電話の多さに戸惑い緊張もしたが、「気づいたら慣れていました」と笑う。
転職する度胸なんてないと思い込んでいた
「朝起きると、会社に行くのが楽しみなんです」
そうにこやかに話す新井さんだが、そんな新井さんにも、今とは真逆に、「辞めたい辞めたい」と重い気持ちを抱えながら仕事をしていた時期があるという。それは、新卒で入社した最初の職場でのこと。
「限られた人間関係のなかでぎくしゃくしてしまって。まわりはベテランばかりで?責が私に集中し、1時間半も怒られ続けるといったこともありました」
わからないことを「わからない」「教えて」と聞ける雰囲気もなく、ただただ辛さに耐えていたと、表情を曇らせる。
それでも2年間、勤務を続けた理由を聞くと、少し間をおいて、「転職は特別なことじゃないという世代ではあるのですが、私自身は『転職はない』と思い込んでいたんです」と返ってきた。
「してはいけないというより、できないと。自分に、辞める、転職するなんて度胸があるわけないと思っていました」
聞いているだけでも身につまされるような状況だが、幸いだったのは、一緒に暮らす家族が新井さんの気持ちをしっかり受け止めてくれたこと。
「職場であったことは何でも両親に話していました。ある晩、父とずっと話し込んだのですが、そのとき、私、泣きっぱなしだったんです。それを見て父が、『そんなに大変だったら辞めてもいいんじゃないか』と言ってくれた。その言葉に背中を押され、やっと決心がつきました。あのままだったら、どうなっていたことか……」
自分磨きで、少しずつ自信がもてるように
今の職場で、新井さんが心がけているのは、「報・連・相」を徹底すること。キャリアウィンクで受けた研修でも印象に残っているし、職場で他のメンバーが指摘されているのを耳にする機会があり、改めて自分のこととして肝に銘じたという。
「報連相に限らず、何につけコミュニケーションを積極的にとるようにしています。わからないことや迷ったことは、相手の状況を見ながら、なるべく早めに声をかける。職場は年齢が上の方がほとんどなので、受け身でなく、自分からどんどん話しかけています」
聞けば、前職のころから継続して、話し方やビジネススキルを学ぶ講座に参加しているという新井さん。今の様子からは意外に思えるが、以前は人と話すのも意思や気持ちを伝えるのも苦手だったそうだ。
そんな自分を何とか変えたいと思い切って通い始めた講座は、講義の中身もさることながら、そこで知り合った同世代の友人たちとの交流から学ぶことが多いという。
「仕事や将来のことについて前向きな話ができるんです。自己肯定感が低いわけではなかったのですが、今まで、特に自信につながるような体験がなかった。この講座や今の職場のおかげで、少しずつ自分磨きみたいなことができている感じです」
欲が出てきた。「自分でも驚いています」
社会人としてのスタート地点で厳しい現実に向き合わざるを得なかった新井さんだが、いきいきと働ける場所を得た今は、どのようなキャリアイメージを描いているのだろう。
「年代も職種も違うさまざまな人と関わるようになって、人と話したり触れ合ったりすることが楽しいなと思うようになりました。人を支えるような仕事ができればいいですね。今の総務の仕事も好きなのですが、人事や広報の仕事も面白そうだし、営業もやってみたい。こんな欲が出てくるなんて以前の自分からはとても考えられなくて、我ながらびっくりです」
目の前の課題から逃げず、自分なりのやり方で乗り越えてきた新井さん。一つひとつは小さくても、そうやって蓄積された経験が、これからの日々を支える糧となるのだろう。
「どんな仕事がきても、成長につながると思えるポジティブな自分がうれしいですね。『新井さんがいてよかった』と言ってもらえる人になれるようにがんばります」
そう言い切って少し照れくさそうに笑う姿が、とても頼もしく見えた。
気分をあげてくれる、綺麗なものや大好きな香り
バッグから取り出された愛用品を見て、取材スタッフから「可愛い!」と思わず歓声があがった。大のアクセサリー好きという新井さんが、なかでも最近毎日身に着けているのが、パールのイヤリング。
「自分の耳たぶが気に入っているので、ピアスの穴は開けません。このイヤリング、アシンメトリーなところがおしゃれだと思いませんか?」
通勤時にはまっているのは、AirPodsでランキングトップ50を1位から順番に聴いていくこと。「最新の音楽が、これでだいたいチェックできます」
最近パーソナルカラー診断を受けた新井さん。「ブルベ(ブルーベース)」と診断された。「自分には絶対合わないと思っていたピンクが『一番似合いますよ』と言われて意外でしたが、早速アイシャドウ*を買いました」
「香り」のアイテムも常にバッグの中に。「Beauty Cottageビクトリアンシリーズ」のソリッドパフューム*は通勤時に使用している。「映える」デザインがお気に入りの理由。
*アディクション 012SP Tiny Ballerina (SP)
*ビクトリアンロマンス メモリーオブラブ ソリッド パフューム
ライター:高山 ゆみこ(たかやま ゆみこ) カメラマン:上澤 友香(うえさわ ゆか)
※感染症対策実施の上、インタビューをおこなっております。