8年前に離婚を決意してから現在まで、派遣スタッフとして働く、杉山久美さん(50)。離婚当時のことを「どん底だったけど、子ども二人のために必死に勉強をして頑張った」と教えてくれた。紆余曲折を経て、今新たな人生を楽しんでいる杉山さんに、これまでのこと、ブランク期間の不安を払拭するまでのこと、将来挑戦してみたいことなどをうかがった。

*今回はオンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人より提供いただきました

「視野を広げたい」専業主婦から、秘書業務へ

23歳で結婚した杉山さん。結婚後も一般企業の事務員として働いていたが、夫の海外転勤に伴い退職した。杉山さんにとって、初めての海外生活。異国の地、香港での暮らしは新鮮だった。専業主婦として過ごしながら、周りにいた他の家族とのランチ会に顔を出す日々だ。

そのように過ごしていくうちに、このままでいいのだろうかと思うこともあったという。「集まりに顔を出す暮らしも良かったのですが、もう少し外に出て視野を広げたいといった気持ちが芽生えたんですよね」

香港で就職活動を開始し、無事に就職先が決定。日本だけではなく、海外でもキャリアを積めることが嬉しかったという。一般企業の秘書として、活き活きと働く日々が始まった。仕事が楽しく、誰よりも真摯に取り組んだそう。

「あるとき給料が上がっていたので不思議に思い上司に確認すると『ヘッドハンティング(別の企業からのスカウト)の話が来ても辞めないで欲しいから給料を上げた』ということもあったんです」

自分が頑張ったことを認めてくれている。さらに、きちんと給料にも反映してくれる。日本とは違った達成感や大きなやりがいを感じて、日々キャリアを磨いていった。同時に仕事以外の世界も広がった。休日にはホームパーティーに招かれるなど、元々人と接することが好きな杉山さんは、香港での生活も充実。その後、子ども二人に恵まれた。

全てが順調そうに見えるものの…

退職して子育て中心の生活となり、しばらくは仕事を控えていたが、子どもがいても何かできることはないか、自分が楽しみながら自宅でできることはないかと考えたときに、粘土教室が頭に浮かんだという。早速講師になるための資格取得に向けて勉強を始め、しばらくしてから自宅で教室を開いた。

「一日2時間。10時から12時のレッスンでした。生徒さんのほとんどが駐在員の家族だったこともあり、レッスンが終わればお茶を飲んだり、みんなで雑談したりと、とても楽しい時間でした。生徒同士の交流の場となったことも嬉しかったです」

 class=

住居がアメリカに変わっても、粘土教室は続けた。講師として活躍した年数は、なんと15年。周りからは順調そうに見えていたと思うけれど、家庭に関してはそうではなかったと杉山さん。夫からモラルハラスメントを受けていたのだ。そのことに気がつかなかった杉山さんは約20年間、良い家庭を作りたい、夫に怒られないように、良い妻になろうと努力していた。子どもにも、我慢を強いることが多かった。

しかし、被害は徐々に子どもたちにも及んでいき、アメリカ駐在中に離婚を決意した。

粘土教室を開いていたものの企業で働いていない期間は15年以上と長く、金銭面の不安も残る。学校に通う子どもたち二人を養っていけるのだろうか。それでも、現状を変えるために離婚するしかなかった。

家も仕事も生活費もない。0からのスタート

日本に帰国した。住む場所も仕事も、何も決まっていない。長年夫から暴言を吐かれていたため、隣に男性がいるだけでも怖かった。それでも新生活をスタートさせるために、働かなければならなかった。不安しかなかったが、だからこそ、先々を考えて必死に英語や投資の勉強をしたという。

仕事は、これまでのスキルを活かせるようにと、派遣会社に登録した。その後、正社員への道を考えるつもりだった。ただ、結果的に現在も派遣スタッフとして働くことを選択している。「私はこの働き方が合っていると思いました。さまざまな職場で働けて、それぞれ得られるものも違い、自分のスキルを磨ける。成長を実感できる働き方だと思っています。派遣会社に守られているのも、心強いです」

そんな杉山さんにどのような職場環境が良いかうかがうと、学びが多く自分が成長できること。そして、英語力を高められる職場であることだそう。「自分の英語力がビジネスイングリッシュのレベルかと聞かれたら、自信を持って首を縦にはふれません。けれど『経験を積ませてください。その代わり、必ず求められるスキルを身につけます』と、身のほど知らずだと思いますが、職場見学のときに熱意を伝えています」

派遣スタッフとしていくつかの職場で経験を積み、一歩一歩キャリアアップしていくと、より自分に合った条件や環境で働く機会を得るようになった。現在も働きながら資格取得の勉強をしたりと、着実にスキルを身につけている。

離婚した当初は、元夫から受けた言葉も残っていて“自分はダメだ”と思っていた。しかし、仕事や勉強を続けていくうちに、自分でもやればできることに気が付いたと杉山さんは話す。自分が稼いだお金で子どもを守り、自分が本当に好きなことをできる喜びを感じている。そして、杉山さんが自由に伸び伸びと過ごしている姿を見て、子どもたちも喜んでくれているそう。将来は、餡子(あんこ)でお花を作る「餅フラワー」の教室を開きたいと語る杉山さん(上の写真)。紆余曲折を経て、新たな人生を楽しんでいる。

愛犬もゆったり過ごす。風が気持ちいい、自宅のテラスがお気に入り

「(冒頭の写真は、)自宅にあるテラス席です。コロナ禍で在宅勤務がメインになり、ここでパソコンを開いて仕事をしています。好きなものに囲まれて、愛犬がその周りをゆったりと動きながら仕事ができる環境にとても感謝しています」テラスで過ごしていると、心から充実した気持ちになると教えてくれた。愛犬も気に入っているのだろう。

ライター:松永 怜(まつなが れい)

SPECIAL SITE
ABOUT

あなた「らしさ」を応援したいWorkstyle Makerリクルートスタッフィングが運営する
オンラインマガジンです。

JOB PICKUPお仕事ピックアップ

リクルートスタッフィングでは高時給・時短・紹介予定派遣など様々なスタイルの派遣求人をあつかっています

Workstyle Maker

『「らしさ」の数だけ、働き方がある社会』をつくるため、「Workstyle Maker」として働き方そのものを生み出せる企業になることを目指しています。