茨城の実家近くに住み、東京の会社の派遣スタッフとしてリモートワークをしている菊池淳子さん(45)。子どもが小さいころからフルタイム勤務で、実の両親の助けを借りながら走り抜けてきた。リモートワークになったことで、これまでよりずいぶん余裕ができたそう。時間の使い方や家族との距離感にはどのような変化があったのか、お話をうかがった。

*今回はオンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人より提供いただきました

子どもを育てながら、フルタイムで働き続けた

都議会や委員会などの速記者として東京で働いていた菊池さんは、「茨城に戻ってきてほしい」という両親の意向で、生まれ育った場所に戻ることを決めた。

「現場はとても高い集中力が求められます。強い緊張から『行きたくない』という気持ちになり、向いていないのかもしれないと思うようになりました。また、数年いた都会に疲れてしまった、という理由もあります」

ところが、実家のある茨城に戻っても、忙しい日々は続く。中小企業の正社員として働いていたが残業は当たり前。結婚したあとは、勤務時間などを選択できるよう派遣スタッフとして働くこととした。

「子どもが生まれていったんお休みしましたが、家で過ごすのは半年ほどで飽きてしまったんです。子どもとずっと一緒にいるのは向かないんだと思い、また派遣の仕事を探しはじめました。その3年後に2人目を妊娠したときは、産後2ヶ月で復帰しました」

子どもができたのを機に実家の隣に引っ越したため、保育園の送迎などは実の親を頼ることができた。とはいえ、フルタイムで働いていると、保護者会、三者面談など、子どもの行事で忙しい。有給休暇はすべて子どもの用事でなくなり、足りなくなるほどだった。

リモートワークになり、家族と顔を合わせる時間が増えた

2021年の4月からは、東京の会社にリモートワークで勤務することになった。これまでなら半休を取っていた用事も、リモートワークなら融通が利く。

「昼休憩を自由な時間にとれるので、その時間を利用して子どもの用事を済ませています。そうしたら、初年度の有給休暇が7日も余っていてびっくり。友人とランチに行ったり、自分の用事に使わせてもらいました。繁忙期を把握していたので、休暇も取りやすかったです」

これまでは帰宅が夜になることも多かった菊池さんが、リモートワークにより家にいることで、娘さんがほっとしていたのだという。

「もう、長男が高3、長女は中3になりました。これまでは、2人が学校から帰ってきて『ただいま』と言っても、帰宅が遅い私が『おかえり』と返してあげられることはなかった。リモートワークになってからは、子どもが帰宅するときに私が家で仕事をしているので、娘が『安心する』と言っていましたね。そんなことを言われたのは初めてだったので驚きました」

子どもの駅までの送迎も両親に頼んでいたが、今は送っていくこともできる。年頃の息子と、車の中で学校や進路のことを話す日もある。

職場では、派遣スタッフとしてさまざまな業務をこなしてきているが、初めてのことも物おじせず進めていくのだそう。

「業務を教えていただけるのであれば、経験のない業務でもチャレンジしています。今の同僚には『なんでもとりあえずやってみるタイプだよね』と言われます。勤務先によってシステムや進め方も違いますが、習得すればいずれ役に立つだろう、と考えています」

出社した日には食べ歩きや御朱印集め。裁縫やアクセサリー作りの趣味も

基本的にリモートワークだが、月に2~3日ほど出社している。茨城から東京までの道のりで、寄り道するのが菊池さん流だ。

「始業が10時と遅めですが、5時過ぎに家を出て、各駅停車に乗っていきます。夏ならかき氷を食べたり、台湾料理のモーニング、お寺のカフェに行ったりして、出社前に食べ歩きをするのが楽しみです。また、御朱印を集めているので、神社やお寺をあらかじめ調べておいて、出社の途中に寄っていきます。『出社を誰よりも楽しんでいるよね』と同僚に言われています」

出社日以外にも、娘と一緒に「推し」関連のお出かけをしたり、土日に一人旅をするなど、アクティブに活動している。一人旅は、目的もなく宿泊地だけを決め、その場で色々と楽しむ。そのため、思わぬ出会いがあるのも醍醐味なのだとか。

他にも、昔から好きで凝っているのが小物づくり。

「手作りするのが好き、と気が付いたのは最近ですが、今思えば、正社員で忙しい時期にもアクセサリーなどを作っていました。自分用のピアスや、娘や息子に頼まれたネックスレスなども作ります。子どもたちが小さいころは子供服、コロナの初期にマスク不足のときにはマスクなど、裁縫も好きです。今は、推しの衣装を模してシルバニアのお洋服を作るのも楽しみです」

忙しい中でも、子どもたちを寝かしつけてからミシンに向かっていたのだそう。ものを作ることは、菊池さんにとってリフレッシュだったのだろう。

「私にとって仕事は、いい意味で日常のことを忘れられる時間。また、社会とつながっている感覚を得られる場でもあります。できれば、今のようにリモートワークを続けられたらいいですね。実は今、夫が単身赴任で楽しそうなので、今度は私が単身赴任するのもアリかな、と思っています(笑)」

仕事も、趣味も、家族も、菊池さんには欠かせないもの。すべてに向き合ってきたからこその、充実した表情で語ってくれた。

暖房のない部屋では、暖かいパネルヒーターが仕事の友

冬のリモートワークは、仕事部屋が寒いと気が付いた。頭寒足熱を意識して部屋全体を暖めず、足元のパネルヒーターを買い、ひざ掛けをかけて「こたつ」のようにして使っている。また、デスクに敷くタイプのデスクマットヒーターを一緒に買ってみたら、とても快適。かじかんでいた指先の血行が良くなったという。

マウスは有線から無線に変えたことで使いやすくなった。自宅で仕事をする環境を整えていくことも、効率よく仕事をする秘訣なのかもしれない。

右にあるのは御朱印帳。職場の切り替わりで時間があったときに、両親と神社めぐりをした。「親と私の3人で出かけるなんて、御朱印集めをしていなければなかったと思います」という菊池さん。趣味が奏功して、いい親孝行になったに違いない。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)

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