派遣スタッフとして、都内の企業で顧客管理などに従事する小椋芳恵さん。今目指しているのは、故郷・北海道でのフレンチバル開業だ。33歳で上京、35歳でブライダル司会の世界に飛び込み、47歳で結婚。そして新しい夢へ。どのライフイベントも多くの人とは少し違うタイミングだったが、「遅いんじゃない?という言葉をはねのけて、楽しく生きています」と軽やかに笑う。そんな小椋さんのこれまでをたどった。

*今回はオンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人より提供いただきました

友だちがUターンしてくるなか、33歳で上京

よく通る透明感のある声やテンポのよい語り口が印象的な小椋さん。中学時代から、弁論大会や英語のスピーチコンテストなど、選ばれて人前で話をする機会が多かったというのもうなずける。高校では演劇部に所属し、舞台に立った経験も。「演技力がないことに気づいたけれど芝居は好きだったから」、短大卒業後も、友人が主催する劇団を裏方として支えた。

「地元札幌で立ち上げから参加した劇団チームナックスがその後大ブレーク。各方面で華々しく活躍しているメンバーの姿を目にするたび、私は何がしたいんだろうと改めて考えてみました。そうしたら自分を表現したいんだという答えが見つかったんです」

気持ちに従い、事務職から家電量販店の新商品プロモーションを担うイベント会社へ転職。プロジェクトリーダーとしてキャンペーンの運営業務をまるごとこなす力量が評価され、33歳のとき、同じ会社の東京支店への異動を打診された。

「プロモーションでイベントのMCを務めることもあり、もっとスキルを磨きたいという欲が出てきた。そういう話も折に触れてしていたことから配慮いただいたようです。学校卒業後に上京した人たちがそろそろUターンしてきていたから、みんなと逆。今から東京に出て新しいことを始めるなんて大丈夫?って心配してくれる友人もいました」

「覚悟はある?」と聞かれ、「やります!」と即答

上京後、MCのスキルを学ぶ場を探しながらイベント会社で働いていた小椋さんは、ブライダル司会者を募集するSNSの投稿に目が留まる。早速連絡をとって事務所を訪ねると、女性社長が「本気でやるならマンツーマンで教える」と提案してきた。

「迷いはなかった」と振り返る小椋さん。20代からブライダル司会者を始める人もいるため「『まわりの人はあなたのことを新人だと思わないから、考えている以上にあたりはきついと思う。覚悟はある?』って社長は念押ししていました。でもそのときには何の知識もなかったから、あたりがきついと言われてもイメージが湧かず、大丈夫です!って即答したんです」

平日は派遣スタッフとして働きながら、「現場に出なければ身につかない」という社長の方針で、半年もたたないうちに披露宴や二次会の司会を任されることに。最初の1年間は、想像以上の“針の筵(むしろ)”だったそうだ。

「予め自分なりの台本は作るのですが、結婚式は“生もの”だから、実際にはその通りにいきません。間があいても何をどうすればいいのかもわからず、会場の空気がしらけ、スタッフさんに叱責されたことも。自分でもできていないことはわかるので、悔しいしもどかしいし」

「もうできません」と泣きながら訴えたこともあったが、そのたび社長からは「続けていれば、絶対あなたのことを好きと言ってくれる人が出てくる。とにかく続けなさい」と励まされた。「3年、100組を超えると見える世界が変わってくる」という言葉を頼りに、くじけそうな心を奮い立たせたという。

乗り越えた、と思えたのは、社長の言う通り3年たったころだった。

「急に視界が開けたように感じたんです。たとえば、それまでは台本ばかり見ていたのが、台本を離すことができるようになり、会場全体の動きが初めて目に入ってきた。あ、あそこでトラブっているみたいだからここはこうしようとか、先を見て臨機応変に回せるようになった。ああ、このことだったのかと腑に落ちました」

同じように社長のもとで学んだ同期や後輩は何人もいたが、今はほとんど残っていないそう。小椋さんが最初の志を持ち続けることができたのはなぜだろう。

「新郎新婦と真剣に向き合うために、まず自分自身やこれまでの人生を棚卸ししてみたら、それまであまり好きでなかった自分のことがきちんと肯定できた。そんな変化がうれしかったですね。仕事を通して成長する自分を感じ、ますます意欲が増す。そんな好循環が原動力でした」と小椋さん。

「併行して続けていた派遣スタッフとしての職場で、さまざまな方とコミュニケーションをとる力や相手の意図を正しくキャッチする力が鍛えられたこともよかったと思います」と振り返る。

47歳で婚活。夫婦二人で目指す新たな夢とは?

35歳でスタートラインに立ち、10年を超えたブライダル司会者としてのキャリア。ところがコロナ禍で結婚式は激減し、司会の仕事は開店休業状態になってしまった。

どんなに落胆しているかと思えば、なんと小椋さん、今また新しい夢に向かい、着々と歩みを進めているという。

「じつは2年前に結婚したんですよ。ブライダルの仕事はないし、派遣の仕事もほとんどが在宅ワークで一日中家にこもりっぱなし。淋しさを感じて婚活を始めたのですが、良いご縁に恵まれました」とにっこり。

自分の手料理に舌鼓を打つ夫の笑顔を見て、さらに喜んでもらいたいと料理教室に通い始めたことがきっかけで、故郷の北海道・札幌にフレンチバルを開くという次の目標が見つかったのだ。

「もともと料理は好きでした。二人で定年後について話しているときに、夫が『君の料理は、僕だけじゃなくいろいろな人に食べてもらったほうがいい』と背中を押してくれたんです。ありがたいですね」

今通っている料理教室で、この先、フレンチのマスタークラス、「ディプロマ」取得のための専修コースへと学びを深めていく計画。さらに、ブライダル業界でのキャリアをいかし、「料理教室+婚活」のような場も作りたい、そこからカップルが誕生したら結婚式もプロデュースしたい…と、夢は膨らむ。

「やる気さえあれば、何歳からでも道は切り拓いていける」と小椋さん。「私の経験から言えるのは、やりたいことがあるなら決してあきらめないこと。そしてそれを口に出して周りの人にアピールすること。思いが真剣であれば周囲に伝わるし、思いもよらないところからきっかけが生まれたりするものです。まず言ってみよう、やってみよう。これしかありません」

料理教室で出合った道具で、絶品料理もお手のもの。

料理教室に通うようになって知ったのが「低温調理法」。一定の温度をキープしてくれる調理器具を使うことで、レシピの幅がぐっと広がった。「低温調理器もいろいろありますが、BONIQは日本製でつくりがしっかりしているし、ホームページのレシピが充実しているので気に入って使っています」ローストビーフやサーモンのパイ包み焼きは絶品。鍋の前についている必要もないので、時間のやりくりにもとても重宝しているそうだ。

マイヤーの包丁と研ぎ器は、料理教室の先生のおすすめ。料理人への夢の第一歩として購入した。とくに3種類の砥石がセットされた研ぎ器は優れもので、包丁の切れ味が驚くほど復活し、ますます料理が楽しくなったという。

ライター:高山 ゆみこ(たかやま ゆみこ)

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