派遣スタッフとして週に2日間勤め、それ以外にファッションや美容のSNS発信、モデル活動、古着の販売などマルチに活躍している小島優希さん(42)。今の活動からは想像もできないが、5年前まではフルタイムで事務職を続けていたのだとか。今の働き方に転身したきっかけやその後の経緯、やりがいなどを教えていただいた。
*今回はオンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人より提供いただきました
転機は、フルタイムの仕事が契約終了になったこと
社会人になってから、ずっと事務職を続けていた小島さん。5年ほど前まで、派遣スタッフとしてフルタイム勤務をしていた。
「契約の更新を希望したのですが、会社の方針でオペレーション業務を地方に移すことになり、更新できなくなってしまったんです」
契約期間はあるものの、毎回更新していたので予想外の出来事だった。そのまま転職活動をしようとも思ったが、ビジネス交流会などに参加して経営者やフリーランスの人の話を聞くうち、考えが変わったという。
「いろいろな働き方があると知り『せっかくのチャンスだから』と、いろいろなことに挑戦してみました。たくさんトライしてみた中で実を結んだのが、SNSにアップしていた洋服のコーディネートだったんです」
投稿を半年ほど続けたあと、洋服の生地を販売する会社が募集する「オンライン上でコーディネートを提案する仕事」の求人を見つける。経験不問だったため、SNSの投稿をアピールポイントとして申し込んだところ、採用に。オンライン会議システムなどはまだ普及しておらず、写真とチャットのやりとりだったが、楽しかった。
「その後、フリーのファッションスタイリストとして独立して、クライアントと一緒に買い物へ行きコーディネートしたり、クローゼットのコンサルティングを請け負ったりする仕事をスタートしました」
友人に試してもらい、他の顧客を紹介してもらう。SNSでも、ファッションスタイリストとしての投稿を増やしていった。
「自分をどう見せるか」に興味がわき、モデルの道へ
顧客を得るためのSNS発信を続けるうち、自分に対するブランディングに興味が移っていく。
「自分自身が『表現者でありたい』と思ったんです。それなら、身体を張って表現したい。その際にぴったりきたのがモデル。まったくの未経験でしたが『やってみたい』という自分の思いに従いました」
とはいえ、モデルの仕事は「やってみたい」という気持ちだけですぐにできるものではない。どのように進めていったのだろうか。
「SNSには趣味で活動するカメラマンさんがたくさんいて、常にモデルさんを探しています。そういう方を探して『初心者ですがモデルをやってみたい』とDMを送ります。相手の方は自分の作品になるし、私も『モデルを始めました』とアピールできる。そうすると、『写真を撮らせてほしい』『商品をPRしてもらいたい』といった人の目に留まります」
そんな経緯を経て、報酬の発生する仕事の依頼が来るようになった。現在は、美容室やストックフォト(写真素材)業者から、モデルとしてのオファーがある。これまでで最も大きな仕事は、美容室のサロンモデルとしてBefore & Afterを撮影したもので、美容雑誌の見開きいっぱいに小島さんの写真が使われた。今でも大事に取ってあるという。
「SNSは、自分のホームページであり、営業ツールでもあります。これで人生が変わりましたね。カメラマンの方以外にも、素敵だと思ったブランドに自らDMを送ったり、知り合った経営者に『モデルとして使ってもらえませんか』と直接営業したりもします」
1~2週間に1度くらいはモデルの仕事があり、他に派遣スタッフとして週2日の勤務。それ以外の時間で、1年ほど前にスタートしたフリマアプリによる古着販売をしている。
「以前、定期的にマンツーマンのコーチングを受けたことで、モデル以外で自分を表現する手段として『自分がモデルやオーナーになって、洋服を売りたい』という思いが出てきたんです。今は、自分が着なくなった服などをフリマアプリで販売しています。主な商品は、昭和レトロのレディースと、ヴィンテージのTシャツ。買ってもらうときに『一目ぼれしました!』などとメッセージをくれる方がいると、とても嬉しいです」
営業活動は今も勇気が必要。でも、目指す場所があるから頑張れる
知らない人にDMを送ったり、友人に声をかけたり、経営者に自分を使ってほしいとオファーしたり……。なかなかに勇気のいることだと思うが、どのような気持ちで取り組んでいるのだろう。
「友だちに声をかけるのは、『恥ずかしい』という気持ちもあります。でも、その後の反応の良し悪しで、世間の需要がわかる。友だちからの反応がなさすぎたら、続けても上手くいかないな、と考えます。カメラマンの方や気になるブランドにDMを送るのも、10通送って返事をくれるのが1~2通で、さらにOKをもらえるのはもっと少ない。ダメージはありますが、目指すものがあるから頑張れるのかもしれません。憧れのアパレルブランドがあり、いつかそこでモデルをしたい、と目標を設定しています」
今後は、自分を表現するため、他にも活動も広げたいという。頭にあるのは、ダンスや絵画、陶芸などだ。また、旅行や引っ越しなど、環境を変化させて刺激を受けるのも欠かせない活動だそう。
フルタイムで働いているときには「平凡な毎日だった」と振り返る小島さん。
「派遣の仕事は、私にとって魅力的です。働き方を選べるし、どの仕事も本業で『複業』しやすい。転機となった出来事は、当時はネガティブに捉えていましたが、ポジティブに考えて新しい働き方のきっかけとなりました」
仕事道具もお気に入りのものを
愛用品は仕事道具。モデルをするようになってから髪色を明るくしているので、オフィス勤務の際にはウィッグが欠かせない。古着販売の仕事で使うメジャーも、いつも持ち歩くくらいに必要なもの。
「人前で使いたくなるペンを探していて、5年ほど前に見つけて奮発して買いました。12月だったので、自分へのクリスマスプレゼントです。やはり、バッグから出すときにはテンションが上がります。パソコンのカバーは、ネットでお気に入りのデザインが見つかるまで探しました。海外のサイトでやっと見つけたんです」
お気に入りのデザインで気分を上げる。身の回りのものにもこだわる姿勢が、ファッションの仕事にもつながっているのかもしれない。
ライター:栃尾 江美(とちお えみ)