ヴィジュアル系バンドの熱心な女性ファンを指す“バンギャ”。歴10年以上という山中雛さん(26)は、「うーん、10人に1人、知っているかどうかの言葉だと思います」と苦笑いする。そんな山中さんは、今派遣スタッフとして働いている。「わたしにはあっているみたいです」と話す理由や挑戦してみたいことなどを聞いた。

*今回はオンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人より提供いただきました

アルバイトを掛け持ちし、ライブ200本に参戦

「家でテレビを観ていたら、今では誰もが知っているヴィジュアル系のエアーバンドが出ていて、『何、これ!?』ってびっくりしたのがきっかけです。瞬間、ビビッと電撃が走ったんですよ」

はじめはバラエティ番組でメンバーが水をかぶったり大食いをしたりしている姿を面白がって見ていたが、ふと気になって演奏動画をチェックしたところ、メロディも歌詞も頭から離れなくなった。「まんまとはまってしまいました」

高校時代は初恋のようにそのバンドを追いかけていたが、調べるうちに他にもお気に入りが増え、さらに世界が広がった。大学時代は通算200本のライブに参戦。北は北海道から南は沖縄まで津々浦々、好きなときに好きな場所に遠征していたという。

ライブのチケット代や交通費、サイン会の特典付きCD代などをねん出するため、飲食店などのアルバイトを掛け持ち。「そこまでしてもライブに行きたかった。とにかくバンギャ活動が生活の中心。すべてを捧げていました」


▲今年のゴールデンウィークには、新潟に遠征した

昔は引っ込み思案だったという山中さん。高校生のころまではクラスの隅にいて目立たないようなタイプだったそう。ヴィジュアル系バンドにはまったときも、まわりにその話をすることにはためらいがあったそうだ。

「周囲の人から見てギャップがあると思われそうで、最初は黙っていました。でも徐々に自分のなかで、ヴィジュアル系を好きな自分こそかっこいいと認められるようになり、そうしたら、好きだってことを恥ずかしがったり隠したりするのはバンドに対して失礼だと思ったんです。自分の好きなものは胸を張って自慢したいし、グッズも堂々と身に着けたい。それが自分のブランドなんだと。今は一人でも多くの人に推しのことを知ってほしいから、SNSでも積極的に発信しています」


▲カラオケでは、歌うのではなく踊って楽しむ

受験、就活、休職…も、ヴィジュアル系の歌とともに

バンギャ活動にのめり込む一方で、「好きなことを仕事にできれば」と、新卒で芸能系の会社に就職。テレビ制作や広告の仕事に幅広く携わっていた。ところが、気づけば昼も夜もない不規則な生活が続き、心身ともに疲労困憊。休職せざるを得ない状況に陥った。

「自分の時間がとれないのがいちばんのストレスでした。行きたいライブも行けない。わたし、何を目標にがんばっているんだろうってわからなくなってしまったんです」そのときも、そっと寄り添ってくれたのは、好きなバンドの歌だったという。

「『がんばろうぜ』みたいな熱い曲はわたしはちょっと苦手なんですが、ヴィジュアル系の歌詞には共感できる言葉が多い。歌詞のなかにいまの自分と同じ心情をみつけて救われることもあります。がんばりすぎなくてもいいんだよとか、君は君のままでいいんだよとか」

振り返れば、受験のときも就活のときも、これまでの人生の節目節目で彼らの歌に勇気づけられてきたそうだ。

数ヶ月休職したのちに退職。次に山中さんが選んだのは、キャリアウィンクでの派遣スタッフという働き方。

「未経験からの事務職へのチャレンジ」を応援する、無期雇用派遣
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「自分のペースで生活を組み立てられるのがいいですね。仕事は仕事、趣味は趣味とはっきり分けられてすっきりしています。わたしにはこのほうがあっているみたいです」

コロナ禍に入りライブは激減。好きだったバンドが活動を休止したこともあって、一時期バンギャ活動を卒業しかけたという山中さん。友人とお酒を飲んだり食事をしたりという時間も決して嫌いではなかったが、「何か違う」というもやもやした思いをずっと抱いていたという。

バンギャ復活のきっかけは、6歳下の妹だった。

「じつは妹もバンギャなんです(笑)。ヴィジュアル系のバンドがたくさん出演するイベントがあるから気晴らししようよって誘ってくれて、そこで見たのが、今イチ推しのバンド。もともと曲はよく聞いていたのですが、ライブに心揺さぶられました。そこからまたバンギャにどっぷり。今に至ります」

「推しのひと言」から、夢が生まれた

インタビューで、自らの言葉をていねいに紡ぎ、心情や状況を伝えようとする姿が印象的だった山中さん。子どものころから、本を読んだり作文を書いたりすることが好きで、「言葉」にこだわるほうだという。

仕事のメールでも、相手が理解しやすい書き方を心がけているし、外国人のバンギャ仲間にきちんと情報を伝えたいと、日本語の使い方にも気をつかう。なんと推しの誕生日や記念日には、手書きのファンレターを欠かさないそうだ。

そんな山中さんが描く理想は、派遣スタッフとして働く傍ら、家でゆっくり文章と向き合う生活。夢のきっかけも「推しのひと言」だった。

「小さな会場のライブが多いから、メンバーとの距離も近いんですが、わたしの推しがSNSを読んだのか、『ひなちゃんがいつも書いているコラム、すごいね』ってほめてくれたんです。もうびっくり!書き続けてきてよかったと思いました」

「推し活」が世の中に認知され、ポジティブなとらえ方をされるようになったこのごろ。

「誰でも自分の好きなものを堂々と主張できるってすばらしいですよね」と山中さん。「ジャンルは違っても、何かにはまっている人とのおしゃべりは本当に楽しい。今の職場でもお互いに情報交換をして、おすすめの曲を教え合ったりしています」と笑顔が弾けた。

メイクポーチに推しのサイン。「苦手な朝もすっきりです」

今いちばん推しているバンドのメンバー4人のサインが書かれたメイクポーチ。「何にでもサインをしてくれるというので、いつも身近で使っているものがいいなと思って、ポーチを選びました」

じつは早起きが苦手な山中さん。このポーチを見ると、「今日も1日頑張ろう!」「またライブに行こう!」と不思議と力が湧いてくるという。

ライター:高山 ゆみこ(たかやま ゆみこ)

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