
シングルマザーとして2人の小学生を育てる磯部美奈さん(36)は、昨年の10月から派遣スタッフとして働いている。前職は忙しく人間関係にも悩みがあったが、現在は時間の融通も利いてストレスもほぼないという。現在の仕事や思い、ライフスタイルなどを聞いた。
*オンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人よりご提供いただきました
「もっと柔軟に働きたい」と考えていた
現在の仕事に就く前は、保育園で働いていた磯部さん。もとは保育士だったが、事務職員が辞めたタイミングで自分が事務職員となった。だが、保育士に比べて影の存在となる事務職だからなのか、他の保育士からなかなか理解が得られない。
「『どうすればうまくいくんだろう?』と悩み、10kgくらい体重が減ってしまいました。もともとすごくよく食べるタイプなのですが、食欲がわかず、なかなか眠れず、親や兄弟にも心配されるほどでした。いったん休職させてもらい、その後退職。収入は心配だけど、体を壊すよりはましだろうと、しがみつくのはやめたんです」
精神的に参っているときにも、「子どもがいるから、仕事を途切れさせるわけにはいかない」と考えていた磯部さんにとって、「派遣スタッフは、働きやすいだろう」というイメージは、大きな支えだった。「以前、人材派遣会社に勤めていたこともあって、働きやすいというイメージがありました。子どもが小1と小3なので、習い事も送り迎えが必要な時期。フルタイムじゃないほうが、余裕ができていいと思ったんです。前の職場では、早く帰ると周りの目が気になっていたので……」
過去の事務職の経験が活きる今の仕事に感謝
磯部さんの就業先はテレワークを推奨しており、子どもに「行ってらっしゃい」「おかえり」が言えるのが嬉しい。以前は一緒に家を出ていたため、家事の時間もせわしなく、心のゆとりがなかった。また、夏休みも一緒にいられる喜びもある。
「前職では、仕事から帰宅して寝る時間までに、宿題や食事、お風呂、家事など、やることが多くぴりぴりしていました。『なんでやってないの?』と子どもを責めることも……。今はゆったりできる時間があり、子どももすすんでお手伝いをしてくれます。時間だけでなく、仕事に精神的な負担がないことが一番大きいかもしれません」
現在は、営業サポートの部署で、営業スタッフに対して情報を発信している。ツールの活用方法や、顧客との信頼関係構築方法など、ビジュアルを駆使して資料にまとめていく。
「事務職が好きだったので、いい仕事に出会えたと感謝しています。過去に営業アシスタントをしていたこともあり、当時の仕事とは違いますがパソコンやツールに抵抗がないのは経験が活きているのかな、と思います」
両親や妹家族と、おそろいのウェアで遊びに行くのが楽しみ
子育てにおける悩みは、もっぱら2人の喧嘩だという。
「小3男子と小1女子で、嫌らしい意地悪がどっちもどっち。2人の意見を取り入れるのに頭を悩ませています。人間関係を築くための勉強だと思って、言葉かけや振る舞いを試行錯誤する日々です。そうかと思うと急に仲良くしはじめて……。不思議ですよね」
第2子が1歳のころに離婚したが、保育士をしていたのでワンオペに苦労を感じることはほぼない。子どもは1人より複数いると統率が取りやすいのだとか。
長期休みの時期は、両親が旅行好きなのもあり、両親や妹家族とよくお出かけをする。その際に、あらかじめオーダーしておいたお揃いのウェアを着て、写真を撮るのだそう。
「バーガーのイラストの具の部分に全員の名前を入れて、家族全員の8人でお揃いにしたこともあります。妹の旦那さんはそういうタイプじゃなかったのに、今では率先してお揃いを買い、写真もノリノリで撮っています」
磯部さんのスマートフォンには、そんな和気あいあいとした写真がたくさん入っている。
自分や子どもの心を癒してくれたアロマ
仕事と子育ての合間を縫ってハマっているのがアロマ。スクールで勉強してディプロマを取得し、イベントに参加してアロマを利用したハンドマッサージを施す。
「きっかけは、息子が1年生になったばかりのころに、学校で問題行動を起こしたこと。病院に行ったらホルモンを抑制する薬を処方されましたが、できるだけ薬を飲まずにいたいと考えたところ、アロマを嗅いで心が穏やかになったんです。続けていたら落ち着いてきたので、そういう気持ちの転換にもっと関わりたい、と思いました。プラセボ効果かもしれませんが、実際につらく思っている人の助けになることもあるので」
アロマの仲間もおり、一緒に活動している。イベントには子どもを連れて行ったり、実家に預けたりしてやりくりしているのだとか。
「まだまだ初心者ですが、仕事としてやっていけたら、と思っています。人と話すのが好きなので、テレワークで子どもとしか話せない日が多くても、アロマの関わりを通じてたくさん話せる場があってうれしい。作り笑いではなく、本心で話せる関係ができているので、去年に比べて自分らしさを取り戻せたと思っています」
それにより、子どもの話を以前より聴けるようになり、笑い合える時間が増えた。これからは、事務職も続けつつ、アロマの仕事を増やしていきたいと考えている。
持ち歩き用のアロマをいつでも活用
いつも持ち歩いているのは、携帯用のアロマ。
「背中や足に使いますが、人前で難しいときには手や足に使ってリラックスしたり、癒されたりします。効能もあり、虫刺されにはティーツリー、乗り物酔いや飲みすぎにはペパーミントなど。娘も大好きなので、誕生日にプレゼントしたんです。いろいろな場面で、助けられています」
実際の効能と共に、磯部さんにとってアロマはお守りのような存在でもあるのだろう。
ライター:栃尾 江美(とちお えみ)