皆さんから寄せられた困りごとを解決するこのコラム。回答者は職場のメンタルヘルスを研究されている関屋裕希さんです。今回の困りごとは、気にしていないように振る舞ってしまうこと。怒りを上手に伝えるための「セリフの組み方」とは。
職場で、周囲の人に、必要以上に厳しくされているのでは…と思うことがある。他の人だったら怒ってしまうようなことをされても、気にしていない態度をとってしまう。だから、何を言っても問題ないと思われてしまうのか。相手に気を遣わせたくなく、気分を害していても、一度は全く気にしていないようなそぶりをどうしてもしてしまう。
職場で「怒り」を感じたとき、どうすればいい?
お悩みを送ってくださって、ありがとうございます!
怒りを感じるようなことを言われたり、されたとしても、それが「職場」という場所だと、気にしていないように振る舞う。職場で怒りをそのまま出すと関係が悪くなってしまうので、出さないほうがよい、と同じような対応をされている方、多いのではないかと思います。
ただ、それが周りに「厳しい言い方をしてもいい」「無理を言っても聞いてくれる」と受け止められ、厳しい対応をされることが続くと、その職場で働くことがつらくなってしまいますよね。
こんなときには、2つの点をチェックしたうえで、相手に「怒りの気持ち」を上手に伝えて、お互い気持ちよく働ける関係性を目指してみましょう。
【1】「自分にだけ」なのか
例えば、あるリーダーが厳しい言い方をするのは誰に対しても同じ、という場合には、リーダーと自分の関係性の問題というより、リーダー個人のコミュニケーションのとり方に課題があるといえます。もし、上司部下間だけでなく、同僚間でも、同じような厳しい対応がされているとしたら、職場環境全体を見直す必要がありそうです。
【2】「必要以上に」というのが本当なのか
起きた事象に対して、言い方が厳しすぎるかどうか、念のため、チェックしてみます。職場の大事なルールに関連することだったり、コンプライアンスや顧客の健康や安全にかかわることだったり、起きた事象が深刻なものではないかなど。指摘を受けることが必要な場合もあります。
上記どちらにも当てはまらない、やはり自分の気にしない素振りが厳しい対応を呼んでいる、という場合には、怒りを上手に伝えるセリフの組み立て方を活用してみてほしいなと思います。
怒りを上手に伝えるための「セリフの組み方」
職場では怒りは感じちゃいけない、抑制しなければいけないのでは?と思われるかもしれませんが、そこにある怒りに蓋をし続けると、身体に不調のサインが出てしまいます。
怒りを感じることと、それをどう表現するかは別の段階ととらえてもらえたらと思います。上手に伝える方法を身につけて、ただひたすら我慢するのとは別のアプローチを試してみましょう。
セリフの組み立て方は、伝える順番の頭文字をとってDESC法と呼ばれています。
・Describe(描写する)
自分が対応しようとする状況や相手の行動を描写する。自分から見ても相手から見ても「そうだ」と言える客観的事実であることがポイント。
・Explain(説明する)
自分の考えや気持ちを表現する。「あなたは」から始まるYouメッセージではなく、「私は」から始まるIメッセージで伝える。
・Suggest(提案する)
「ちゃんとしてもらえませんか」ではなく、相手に望む行動、妥協案、解決策などを「〇〇してもらえませんか?」という表現で提案する。実際に相手がとることのできる具体的な行動であることがポイント。
・Choose(選択してもらう)
相手が提案にYesという場合もあれば、Noという場合もあることを想定して、代替案を提示する。
例えば、「十分な情報を共有してもらっていないのに、報告に対して厳しいフィードバックが返ってきた」というケースでセリフの組み立て方をみてみましょう。
D:自分からも相手からも「そうだ」と言える客観的事実から始める
A社の集計について、〇日までに終えるよう指示をいただき、作業を進めましたが、カテゴリ分けに誤りがあったとのことでした。
E:自分の考えを「Iメッセージ」で伝える
ファイルを共有いただいたあとの会議でカテゴリ分けに変更があったとのことで、それを知らずに作業を進めていたため、手戻りが発生し、心苦しく思っています。
S:具体的に提案する
会議での変更など、最新の情報を含めた議事録を、グループチャットなどで共有いただけないでしょうか。
C:相手がNoと言った場合の代替案を示す
もしくは、変更などについて、把握できる方法を検討いただけると助かります。
上記のケースは例ですが、こういったセリフであれば、怒りを爆発させて関係を壊したり、信用を損なうのではなく、かと言って、我慢するのでもなく、相手に伝えることができます。今後、同じような困った事象が起こることを防ぐこともできます。
最初は、DESC法をうまく使えない場合もあるかと思います。そのようなときは、まずは頭の中でセリフを組み立ててみたり、メールで活用するところから始めてみると、取り入れやすいです。試してみてください。
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