らしさオンラインでは、3月にリアルイベントを開催しました。イベント内容は、連載コラム「らしく働くための相談室」で好評を博している関屋裕希さんによる「自分の自然なモチベーションとの、つきあい方を知る」です。

講義に加え、個人ワークやグループワークが取り入れられました。ワークを通じて自己理解を深めるとともに、普段接することのない仲間との対話が行われ、大変盛り上がるイベントとなりました。

講師:関屋 裕希さん

福岡出身。臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員・精神保健学分野 客員研究員。大学院時代は「怒り感情」をテーマとした研究に従事。専門は産業精神保健(職場のメンタルヘルス)であり、心理学の知見をもとに、ストレスマネジメントに関する講演、企業の組織的なストレス対策に関するコンサルティング、執筆活動を行っている。著書は『感情の問題地図』など。最新刊は『モチベーションの問題地図』(技術評論社)。

モチベーションのタイプは4つ。段階が上がるほど「動機が内在化」

イベント当日に参加者へプレゼントした書籍『モチベーションの問題地図』の著者である関屋さんは、モチベーションについて次のように語ります。

「『モチベーション』と聞くと、『自分でなんとかしなければいけない』と思うかもしれません。ところが、モチベーションは環境や周囲から多大な影響を受けます。それらの要素を見直すことで、モチベーションとうまくつきあっていくことができるのです」

講義をスタートする前に、参加者に3人グループを作ってもらい、アイスブレイクの時間が取られました。参加者にたくさんの笑顔が見られ、リラックスした雰囲気で進んでいきます。

講義に入ると、関屋さんは書籍でも紹介しているモチベーションの種類を解説します。

「多くの人は、モチベーションは『ある』と『ない』の2種類だと思っていますが、実は大きく分けると4種類、細かく分けると6種類あります」

まず「やる気なし」という状態があり、次が「仕方なくやる」段階です。「仕方なくやる」の中には2種類あり、「報酬/罰のため」と、「世間体のため」があります。次の段階は「大切だからやる」で、その中に「自分にとって価値があるから」「自分らしさを発揮できるから」の2種類。その次の段階「楽しいからやる」状態があります。

「やる気なし」から「仕方なくやる」に進むには、「行動スイッチ」を押すというアプローチが適しています。同様に、その次の「大切だからやる」へ移行するには「大切スイッチ」、「楽しいからやる」へ移行するには「喜びスイッチ」が存在します。スライド(上の画像)の左から右に動くにつれ、モチベーションの源泉が自分の内側になっていくため、心理学では「動機が内在化していく」と表現します。

「行動スイッチ」を促す「アメとムチ」と「セルフコンパッション」

モチベーションを「やる気なし」から「仕方なくやる」へ進める「行動スイッチ」を押すために、いくつかの方法があります。短期的にパワフルなのが「報酬と罰」つまり「アメとムチ」です。ただし、注意点があるそうです。

「子供たちに対する心理学の実験で、もともと自分がやりたくてやっていることにご褒美や罰が与えられると、かえって内側のモチベーションが低下するという『アンダーマイニング効果』という現象が起こります。効果のあるアメとムチですが、使い方には注意が必要でしょう」

友達がミスしたり落ち込んだりしていたら「つらかったよね」「大丈夫だよ」などと声をかけるのに、自分に対しては「どうしてもっとうまくやれないんだ」と、鬼コーチのように対応している方が多いかもしれません。自分に対して鬼コーチのように接していると、エネルギーが減少します。

その代わりに効果を発揮するのが、セルフコンパッションです。思いやりを自分にも向けるアプローチで、3つの大事な要素があります。

「自分に優しい気持ちを向けること」と、感情に振り回されず自分のつらさを客観的に眺める「マインドフルネス」、自分だけが苦しいと思うのではなく「人と共通している性質に注意を向けること」の3つです。

ここで、参加者の方に個人のワークをしてもらいました。大変だったときの自分を思い出し、3つの要素にしたがって自分にメッセージを書いていきます。

ワークが終わると、関屋さんは次のように声をかけました。

「『自分が弱くなる感じがする』とおっしゃる方もいますが、私たちは責められると失敗から目を背けがちで、温かい言葉をかけられれば失敗を見つめる勇気が出るものです。今は違和感や抵抗があっても、続けてみると認識が変わっていくかもしれません」

「大切スイッチ」を押すには「価値/意味」と「選ぶ」に着目

「仕方なくやる」ができたら、次は「大切だからやる」へ移行する「大切スイッチ」です。まず、仕事の目的や意味を理解したり、組織のビジョンをのぞいたり、長期的なキャリアを考えたりすると、「価値」「意味」を見出せるかもしれません。さらに「選ぶ」行為も、大事なものを見つけるきっかけになります。行動する際に、複数の選択肢から選んでみると、モチベーションが変化する可能性があります。

ここで関屋さんは、書籍の中で紹介している、「働く上で大切にしたいことを見つける25の視点」というリストを紹介しました。

「この中から、大切にしているものにいくつでも○をつけてみてください。次に、その中から特に大事にしているものを3つ選び、★をつけてください」

リストの中から3つに★を付けられれば、自分の「大切スイッチ」を見つけるヒントになるでしょう。その後、3人1組でグループを作り、インタビューとフィードバックのワークによって強みを見つけるワークも実施しました。

「喜びスイッチ」にはジョブ・クラフティングを

「大切だからやる」まで進んだら、いよいよ「楽しいからやる」に進むための「喜びスイッチ」です。ここで紹介したのがジョブ・クラフティングの考え方です。

関屋さんが紹介したのは、SNSやテレビで一時話題となった「踊る警備員」の動画でした。ショッピングモールの警備員の方が、ダンスをしながら車を誘導しています。これは、「働く人が自ら働き方に工夫を加える」というジョブ・クラフティングの考え方にぴったりと当てはまっており、ジョブ・クラフティングの定義である「個人が仕事や人間関係を物理的・心理的・認知的に変化させること」という内容を満たしています。「やり方の工夫」「考え方の工夫」「対人関係の工夫」によって、「楽しいからやる」の段階に進めているのです。

「それぞれの工夫により、仕事に熱意が持てたり、『仕事をしていたらあっという間』と感じたりします。これは『ワーク・エンゲイジメント』という状態で、仕事の満足度が上がり、ストレスが下がる効果があるとわかっています。ぜひ取り入れてみてください」

関屋さんがまとめの言葉を述べたあとは、質疑応答の時間。派遣スタッフとして日々働いている中で、モチベーションに関するいくつかの質問が投げかけられます。同じ立場として共感の笑い声が漏れるなど、和気あいあいとした雰囲気につつまれ、イベントは幕を閉じました。

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ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)

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