皆さんから寄せられた困りごとを解決するこのコラム。回答者は職場のメンタルヘルスを研究されている関屋裕希さんです。今回の困りごとは、「些細なことで、仕事を辞めたくなってしまう気持ち」。このままの気持ちで働き続けるのか…とお思いの方、必見です。

Q. 定期的に大した理由もなく、仕事を辞めたくなってしまう

定期的に大した理由もなく辞めたくなってしまいます。「なんかモヤっとするな…」「この作業、私いりますか?」といった些細なことにも、もう辞めちゃおうかなーと思ってしまい、自分自身も困っています。継続したくなる考え方があれば知りたいです。(30代)

仕事への意欲が下がってしまったら

お悩みを送ってくださって、ありがとうございます!

理由があるわけではないけれど、仕事を辞めたくなってしまうとのこと、明確な原因が見当たらないだけに、対策も見つかりづらく、「ずっとこのまま突発的に辞めたくなったりしながら働き続けるのかな……」とどこかでモヤモヤが残り続けるかもしれません。

仕事中のストレスというと、やってもやっても仕事が終わらないくらい量が多かったり、高度な技術が求められるなど、「負担が大きいとストレスになる」というイメージがあるかもしれません。

ですが、実は、「退屈」もストレスになることがあります。自分の仕事を物足りないと感じたり、仕事中とにかくゆっくり時間が過ぎていくように感じられたり……。この状態は「ボアアウト」と呼ばれています。

甘く見てはいけない。「ボアアウト」の悪循環

仕事の負担が少ないならいいじゃないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ボアアウトの状態が続くと、自信が失われたり、自分の仕事能力が下がったように感じられてくるのです。

そして、仕事以外のことにも気力が低下して、休日にリフレッシュする行動をとる気にもなれず、疲労感や倦怠感が強くなり、悪循環になってしまうこともあります。

この状態を乗り越えるヒント

ここでおすすめしたいのは、ジョブ・クラフティングのアプローチを取り入れてみることです。

ジョブ・クラフティングとは

自分の仕事に工夫を加えることで、仕事を面白くしたり、働きがいを感じやすくする方法のこと。

「仕事や役割に対する捉え方」、「仕事の進め方」、「対人関係の量や質」の3つ視点から、仕事に工夫を加えたり、見直していく。

わたしがいつもジョブ・クラフティングを紹介するときに例に出すのは「踊る警備員」です。ショッピングモールの駐車場で、その名のとおり、ダンスをしながら右へ左へ車を誘導していきます。

わたしは、彼がまさにジョブ・クラフティングを体現している!と思っているので、彼を例に、3つの「仕事への工夫」を説明していきたいと思います。

【1】仕事の進め方
彼の場合は、まずは、「仕事の進め方」に自分の好きで得意なダンスを取り入れました。ただの自己満足ではなく、大きな動きをすることで、誘導が一層わかりやすくなり、本来の役割を果たすうえでのパフォーマンスも上がっています。それだけではなく、ショッピングモールを訪れるお客さんからすると、面白い、楽しい気分にさせてくれるパフォーマンスでもあります。

【2】仕事や役割に対する捉え方
彼がダンスを取り入れ始めたのは、仕事を単に「警備」や「誘導」することと捉えるのではなく、「ショッピングモールに来るお客さんを出迎えて楽しませる、気分を盛り上げる」ものである、と「仕事や役割に対する捉え方」を変えたことがきっかけでした。

【3】対人関係の量や質
彼のパフォーマンスを見て面白いと思ったお客さんが声をかけたり、写真や動画を撮ったり、ただ警備や誘導をしていただけでは起こらなかった交流が生まれ、「対人関係の量や質」が変化していきます。

「キレのあるダンスだね!」
「どこで覚えたの?」
「家で子どもが真似してるよ」

こんな風に声をかけられることが増えると、1日誰とも口をきかずに立っているよりも、仕事が何倍も面白く感じられるかもしれません。

この例の凄いところは、「あのショッピングモールの駐車場には面白い警備員がいる」と話題になって、口コミが広がったり、テレビで取り上げられたりしたことで、ショッピングモールを訪れる人が増えて、モール全体の売り上げまで上がったことです。

目の前の仕事にひと工夫加えてみると、思わぬ変化まで起こるかもしれません。

日々の中で「喜びを感じる瞬間」に注目してみる

ここまで大胆に取り入れられない、という場合もあると思いますが、例えば、会議用の書類や資料を綴じる際にジョブ・クラフティングを活用した事例は下記のような感じです。

【1】仕事や役割に対する捉え方
単純作業ではなく、会議の展開を想像して準備するための作業

【2】仕事の進め方
資料を綴じながら少しずつ会議の内容に目を通す

【3】対人関係の量や質
会議の流れを把握できているので議事録の質が上がりポジティブなフィードバックをもらえる


自分が関係していない仕事のこともわかって部署全体の動きを把握しながら自分の仕事ができるようになった。

踊る警備員の例ほど大きな変化を加えずとも、日々の自分の「喜びを感じた」、「楽しい」、「嬉しい」、といったポジティブ感情を感じる瞬間に注目すると、自分らしく仕事を続けるヒントが得やすくなります。

「自分は〇〇をしているときに楽しいと感じるんだ」

「自分の△△という強みを活かして人の役に立てたとき嬉しい」

「××ができるようになった、とか、仕事のつながりが増えたときに喜びを感じる」

こういった日々のポジティブ感情を感じる出来事を振り返ることで、自分と仕事のよい関係を探っていくことができます。

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回答者:関屋 裕希さん
福岡出身。臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員・精神保健学分野 客員研究員。大学院時代は「怒り感情」をテーマとした研究に従事。専門は産業精神保健(職場のメンタルヘルス)であり、心理学の知見をもとに、ストレスマネジメントに関する講演、企業の組織的なストレス対策に関するコンサルティング、執筆活動を行っている。著書には『感情の問題地図』など。新刊は『モチベーションの問題地図』(技術評論社)。

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