株式会社リクルートスタッフィングが運営するITスタッフィングでは、登録スタッフのスキル向上を支援する研修プログラムを多数ご用意しています。そのひとつとして、5月24日に東京・銀座で開催された「自分の能力やスキルを相手に上手く伝えるセミナー」の様子をご紹介します。
【Introduction】講師の自己紹介
今回の講師を務めたのは、ウイングアーク1st株式会社の高橋裕之さん。派遣エンジニアとエンジニアを採用する側の双方の経験から、それぞれの立場で考えていたことを、例を挙げながら詳細に説明してくださいました。今回は、ワークをはさみながら、今後派遣エンジニアとして自分の能力やスキルを上手く伝えるためにどんなことを意識したらよいのかを、2時間に凝縮した講義となりました。
高橋 裕之
ウイングアーク1st株式会社 ソフトウェアエンジニアリング部部長、ソフトウェアプロセス改善コーチ。 ITエンジニアとして10社を超える現場、いくつものプロジェクトに参画。次第にIT業界の影に潜むプロセス、マネジメント、人間系の問題に気付いてしまい、日々その解決のため戦っている。派生開発推進協議会(AFFORDD)役員。認定スクラムマスター(CSM)、認定スクラムプロダクトオーナー(CSPO)。
スキルってなんだ
スキルとは、実は大きく分けて3種類あると高橋さんは言います。派遣エンジニアの皆さんは、登録やその後の面談時など相手にスキルを上手く伝えないといけない場面があると思いますが、そもそもスキルとは一体どんなものでしょうか。
1 ハードスキル
一言でいうと、定量化できるもの。PHPやJavaといった言語や、理論や手法、ツールなど体系だった知識のことです。このスキルは表現しやすいので、皆さんがスキルと聞いて一番に思いつくものでしょう。
2 ソフトスキル
一方でソフトスキルは定量化が難しいとされています。コミュニケーション能力や調整力といった自己及び対人関係に関するもので、ヒューマンスキルとも呼ばれます。スキルを表現することは可能ですが、それを保有していることを第三者に証明するのは実践以外では難しいとされています。
3 メタスキル
第3のスキルとして分類されるのが「メタスキル」と呼ばれるものです。問題発見力やチームワーク力、プロセス改善能力など、応用スキルと呼ばれるものがこれに当てはまります。このスキルもソフトスキル同様、定量化や表現が難しいもののひとつです。
▲高橋さんのスライドより抜粋 表で比較すると各スキルの違いが分かります。
高橋さんは、3つのスキルの中でも一番メタスキルが大切だと言います。なぜならメタスキルは、訓練や実践の中で身につくスキル。しかも、ハードスキルやソフトスキルを活用するために必要な、いわば「スキルを使いこなすスキル」だからです。
実は、仕事を進めていく上において、このメタスキルはとても重要です。企業も実践的な能力と評したり、実務力と書いたりして、このスキルを大事にしようと思ってはいます。が、同時に、このスキルは表現も難しく、またある種の試験におけるスコアのような定量化もしにくいと、高橋さんは言います。
メタスキルが経験によって得られるスキルであることはわかっていても、どのくらい経験すればいいのか、はわからない。定量化できない上に、具体的に説明するには意外に難しいのです。ただ、多くの企業はこの手のスキルが大事であることは、企業の採用担当者も経験的にわかっているので、自ら持っているメタスキルを、どう伝えていくかということが課題となります。
自分がどういう経験をしてきたか、経験から学習したもの・学んだことを他人にもわかりやすく説明することが、メタスキルにおいては特に必要なのです。
能力やスキルを相手に「上手く」伝える方法
では、これらのスキルを持つことを企業側にしっかり伝えるためには、どうすればよいのでしょうか。派遣エンジニアの皆さんは、派遣会社に自身のスキルを正確に伝えることが、希望や経験に合った仕事を紹介してもらえる大切な鍵となります。そこで、能力やスキルを相手に上手く伝える方法を、高橋さん自身の経験を踏まえて紹介してもらいました。
1.職務経歴書を作るべき
自分の経験やスキルを一度可能な範囲で可視化すると、自分でも分からないことや説明できないことに気付くことができます。そのためには、職務経歴書を作りましょう。そして、出来上がったあとも定期的にアップデートして、経験をきちんと記録しておくことが大事です。高橋さんは以前務めていた会社が倒産した経験から、転職の意思がなくても備えておくことをお勧めしています。
2.「◯◯を経験していない」という話よりも「何をしてきたか」を伝える
派遣登録時やその後の面談時に、「経験していないこと」や「できないこと」を話すと、相手にマイナスの印象を与えてしまいます。ぜひ、積極的に「どんな経験をしたか」や「何ができるか」といったプラスなことを話して、相手に自分のスキルを理解してもらえるようにしましょう。
その後、高橋さんは、採用側はどんな派遣エンジニアを求めているのかをお話しされました。いくつかありますが、一番多く、かつ派遣エンジニアの皆さんに就いていただきたいポジションは「今、すごく困っていることを解決してくれる」ポジション。つまり即戦力となり働けるポジションです。
しかし、高橋さんは即戦力という言葉の裏には、ある隠された期待があると言います。
例えば、ソフト開発というとSoftware Science と Software Engineeringの二面性があります。Software Scienceはハードスキルでエンジニアが得意な分野のため、相手にアピールしやすいです。しかし、仕事にはメタスキルであるSoftware Engineeringの面も欠かせないため、両方できることが期待されているのです。このように、即戦力だと感じてもらうにはハードスキル、ソフトスキル、メタスキルの3つのスキルの存在を理解し磨く必要があるようです。
▲メタスキルを他者にうまく伝える方法を参加者全員でロールプレイング。スキルを伝える難しさを実感しました。
まとめ
・派遣エンジニアが最初にスキルを伝える相手は派遣会社
派遣会社の皆さんへの理解が深まるほど、良い仕事と出会える確率がUPします。
・ハードスキル、ソフトスキル、メタスキルを意識
自分のスキルを体系的に意識し、上手く説明出来るようになりましょう。
・職務経歴書は常に更新すべき
自分のスキルの棚卸しができるだけでなく、派遣会社に登録している情報の精度を上げることが出来ます。
・派遣先が期待しているスキルを捉える
ハードスキル、ソフトスキルは表現可能ですが、メタスキルは表現が難しいため暗黙の要求として募集要項に書かれにくいです。しかし、このメタスキルこそが重宝されるスキルであることは意識しましょう。
高橋さんがお話しされたことは、どれも意識したりや少しの時間ですぐ実践したりできることでした。早速、取り入れて自分の能力やスキルを相手に上手く伝える際に役立てていきましょう。
その後、ITスタッフィングより派遣エンジニアの皆さんに対してサポートしていることをご紹介しました。
ITスタッフィングでは主に3つのことを考えてサービスを展開しています。
・ 学べる環境や機会を提供したい
今回のようなスキル向上を支援する研修プログラムセミナーを定期的に開催しています。対人力アップのセミナーや、エンジニア向けに開催される勉強会の選び方セミナー、技術力を上げるためのセミナーなど、ご要望の多い内容のセミナーを今後も多数開催しますので、興味があるものがあればぜひご参加ください。
・情報を随時発信していきたい
ITスタッフィングサイトを2016年2月にリニューアルし、お仕事を探しやすくなりました。他にも、エンジニアスタイル(本コンテンツ)で派遣エンジニアとして働く方のインタビューや、今回のようなセミナーレポートを定期的に掲載しています。また、メルマガでの情報配信も開始し、皆さんが更に情報を得やすい環境を今後も整えていきます。
ITスタッフィングでは、今後も派遣エンジニアの皆さんに役立つ情報発信を、随時行ってまいります。興味のある方はぜひご登録いただき、スキルアップにお役立てください。