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【連載】第3回 派遣エンジニアとして働くために知るべき「スキル」を理解するコラム

昨年5月に大好評で、その後定期開催するまでになった「自分の能力を上手に相手に伝える方法を学ぶセミナー」。この内容を参加者からのアンケートをもとにパワーアップした内容を、メルマガで全3回、皆さんにお届けします。

高橋 裕之

高橋 裕之
ウイングアーク1st株式会社 技術本部 SVFパッケージ統括部 ソフトウェアエンジニアリング部 部長、ソフトウェアプロセス改善コーチ。ITエンジニアとして10社を超える現場、いくつものプロジェクトに参画。次第にIT業界の影に潜むプロセス、マネジメント、人間系の問題に気付いてしまい、日々その解決のため戦っている。派生開発推進協議会(AFFORDD)役員。認定スクラムマスター(CSM)、認定スクラムプロダクトオーナー(CSPO)。

第3回 結局、派遣エンジニアとしてどんなスキルをどう習得したらいいのだろう

《今回のポイント》

・メタスキルがどうやって習得できるか簡単に説明
派遣エンジニアとして活躍するためにどんなスキルをどの程度習得すればよいか
派遣エンジニアにはハードスキルが圧倒的に求められるが、そのためにメタスキルが必要になる

3つのスキルの中で一番説明が難しいメタスキルに関して、これを機にしっかりマスターしてくださいね!

▼前回の記事はこちら

最終回では、スキルを使いこなすためのスキル「メタスキル」を解説します。そして、派遣エンジニアとして働くための「スキル」とは、どのようなレベルに達していれば活躍できるのか一緒に考えてみましょう。

メタスキルとはなんだろう

まず、過去のセミナー等でスキルとは以下の3種類に分けて考えられると説明してきました。

1.ハードスキル
PHPやJavaといった「プログラミング言語」や、アルゴリズムやオブジェクト設計などの「理論や手法」、EclipseやXcode、Gitなどの「ツール」、それ以外の体系だった知識。

2.ソフトスキル
コミュニケーション能力や調整力といった自己及び対人関係に関する能力で、ヒューマンスキルとも呼ばれる。

3.メタスキル
問題発見力やチームワーク力、プロセス改善能力など、スキルを使いこなす応用スキル。

これまでのコラムで詳しく説明してきましたので、ハードスキルとソフトスキルについては、皆さんもだいぶイメージを持って頂けていると思います。
ではメタスキルとは具体的になんなのでしょう。

あるところに二人の派遣エンジニア、銀さんと金さんがいました。それぞれの会話をのぞいてみましょう。

【Section 1】銀さんの場合

銀さんはJavaで仕事をするようになってかれこれ5年。Javaスキルを活かし毎日懸命に業務をこなしていました。
ある日、派遣先のマネージャから声をかけられました。

マネージャ:「銀さん、今度新しくタスク管理ツールを導入することになったんだ。トライアルで使ってくれる人を社内募集してるんだが、どうかな?今までもやっていた銀さん自身の業務を新しいツールを使って可視化してほしいんだけど?」

銀さんは喜びました。以前の派遣先では Redmineを使ったタスク管理をしていましたので、ツールは違っても、可視化の重要性、タスク管理の利便性を知っていたからです。

銀さん:「喜んで!むしろ使わせてください!私のタスクを見える化することでみなさんからのアドバイスが増えそうですしね!」

【Section 2】金さんの場合

金さんはJavaで仕事をするようになってもう3年。Javaスキルを活かし毎日懸命に業務をこなしていました。
ある日、派遣先のマネージャから声をかけられました。

マネージャ:「金さん、今度新しくタスク管理ツールを導入することになったんだ。トライアルで使ってくれる人を社内募集してるんだが、どうかな?今までもやっていた金さん自身の業務を新しいツールを使って可視化してほしいんだけど?」

金さんは戸惑いました。これまで、作業指示は口頭かメールでしたし、何分困ったことはありません。それに、下手に可視化すると、もっと作業が増えるのではないかと不安になりました。

金さん:「すみません、そういうのあまり興味ないんでお断りします」

メタスキルとは訓練、実践を繰り返すことで得られる経験値です。
上記の例では、銀さんは経験によってタスク管理ツールを導入することの重要性を知っていたので、喜んでツール利用に同意しています。そして、使ったことがないツールではありましたが、こういったツールで解決できることの本質を知っているため、銀さんはこの未知のツールもあっという間に使いこなす事が出来るでしょう。

この様に過去のスキルを利用して新たなスキルを手に入れることができました。これこそがメタスキルと言えます。

一方の金さんは、なんだか面倒そうな事を言われているとしか思えなかったので断ってしまいました。彼はここで大きなミスを犯しています。ツールの利用を断ったことで、自分にとって未知の分野の「スキル」を得るチャンスを逃してしまったのです…

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完璧でなくてもいい。「派遣エンジニア」として活躍するために必要なスキルは?

ハードスキルは形式知ですので書籍やセミナーなどで学ぶことが可能です。では、特定の分野で活躍したいと思ったとき、その分野のハードスキル(業務知識)を出来るだけたくさん持っていればよいのでしょうか?
ソフトスキルは非定型知です。天性のものもありますが、学習や気付きによって発展させることが出来ます。
では、自己啓発をし続ければ、理想の職場で働けるのでしょうか?

皆さんお気づきだと思いますが、スキルは使いこなせなければ意味がありません。スキルを使いこなすスキル、つまりメタスキルが大切です。

派遣エンジニアとして活躍するためには、ただがむしゃらにスキルを追い求めるのではなく、どんなスキルがどの程度必要なのかを把握し、ハードスキル、ソフトスキル、メタスキルの3つをバランス良く広げることが、派遣エンジニアとして活躍するための近道だと考えられます。

人の成長を決める要素の比率として「70:20:10 の法則 (*1)」というのがあります。(*1マイケル・ロンバルド&ロバート・アイチンガー Career Architect Development Planner, 5th Edition - 2010)

優れたマネジャーを調査したところ、成人の学びとは――

 ・70% 自分の仕事経験から
 ・20% 他者の観察やアドバイスから
 ・10% 本を読んだり研修を受けたりすることから

――から得ているそうです。

このことから、メタスキル習得の大部分は「自分の仕事経験」で行われると言えるでしょう。つまり、選択する働き方はエンジニアとしての成長にとても重要であると思います。

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派遣エンジニアという働き方をする上で即戦力とみなされるためには、業務知識(ハードスキル)が一番求められることは以前説明しました。しかし、実はハードスキルを習得するためにメタスキルが重要となってきます。

皆さんは業務知識を習得しようとするとき、あるいは新しいテクノロジーの情報収集をするときに、どんな手段をとりますか?
技術書を読む、技術ブログやSNSを活用する、勉強会やコミュニティに参加し話を聞くなど、人それぞれだと思いますが、この「習得する方法」を知っていることはメタスキルです。
また「失敗しない有意義な勉強会を知っている」こともメタスキルです。

このように、エンジニアとして活躍するためには業務知識(ハードスキル)以外のスキルの必要性が出てくることを覚えておいてください。活躍することができれば、時給が上がったり、派遣エンジニアとしての仕事の幅も広がる可能性があります。

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スキルを極めるとどうなるのか

スペシャリストとは「スキル」を極めた人材を指すのだと思います。

派遣エンジニアとして長く働くと、さまざまな現場を経験できますし、その中で即戦力としての力をつけていけば、よりチャレンジングで自分にとってやりがいのある業務に携わることが出来ます。そして、何れスペシャリストへの道が開かれるでしょう。

ただし、注意して欲しいことがあります。
テクノロジーは日々進化しており、より面白く、より楽しい業務のほとんどは、エンジニアが一人でコツコツ作るものよりも、チーム開発で進められています。
現代のチーム開発では「T型スキルの人材」確保が重要になります。

T型スキルとは特定の領域(たとえばUXデザインや開発)について深いスキルを持ちつつ、同時に関連する領域についても広くスキルを持った人を指します。自身のスキル戦略を考える時は、ぜひこのT型スキルを目指して下さい。
(全てのスキルが高い「フルスタック」型と呼ばれるエンジニアは、探しても見つからない「青い鳥」だと皆が気づき始めています)

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私は過去に派遣エンジニア、フリーランス、正社員を経験していますが、どの働き方にもそれぞれのメリット・デメリットがありました。しかし、働き方に合わせた成長戦略次第で、得られるメタスキルは沢山あります。世の中の動向や、組織のちょっとした変化を見逃さず、その変化に合わせて自分も変えられるような働き方を身に付ければ、必ず生き残れるエンジニアになれます。

最後に私自身の経験を少しお話します。

私がひよっ子エンジニアとして働きはじめた当時は派遣エンジニアでした。常駐先のH社は圧倒的な仕事量に対し大量のエンジニア不足で、派遣エンジニアを大勢働いていました。私が所属する会社からも40人近く常駐していたと記憶します。

当時のH社は、正社員・派遣分け隔てなくOJTの実施と社内研修を受けさせてくれました。社員によるOJTはとても厳しい鬼教官でひよっ子は何度も泣かされたのもです…。一方、社内研修では最先端のコンピュータ言語、独自設計ツールの利用方法、オブジェクト指向設計…私としてはこれらを学べたことはとてもラッキーでしたし、ものすごく勉強しました。

その後も数年間、H社の中のいろんなプロジェクトに携わらせて頂くなかで、私にはある悩みが生まれます。多くのことを任せてもらい、充実していたので今考えると贅沢な悩みですが、「こんなに重要なモジュール開発、ひとりで担当してて良いのかなぁ」という悩みが生まれるようになりました。相談はしましたが、私はチャレンジを続ける道を選びました。なぜなら仕事が面白かったですし、何よりもチャレンジの度に自分のスキルアップを実感出来たからです。

そんなある日、派遣元が倒産しました。

一瞬にして数百人の社員が路頭に迷うのですが、私にはH社で得たスキルがあり、そのスキルを認めてくれるエンジニア仲間がいました。そのお陰ですぐに新しい仕事を得ることが出来ました。

この教訓は、私は与えられた業務に対して変に線引きをせず、次々いろんな事にチャレンジすることで、スキルアップに繋がって行ったという点です。本連載で話した3つのスキルを意識すれば、スキルアップに伴い自ずと面白い仕事や働きがい、そしてスキルを認めてくれるエンジニア仲間を手に入れることが出来ると思います。

私のコラムを読んで下さった皆さんには、派遣エンジニアとしてのポジションを最大限に活かし、チャンスをモノにしながら自信を持ってスキルアップに励んで頂きたいと思います。

(編集後記)
全3回にわたりスキルに関するコラムをお届けしましたがいかがだったでしょうか。大好評の高橋さんの「スキルを伝える方法を学ぶセミナー」のアンケート結果をもとに、皆さんが気になっているスキルに関する話をスキル別にまとめました。
派遣エンジニアとして働く中で、スキルアップやスキルの伝え方に悩まれる方が特に多いようです。そんなときは全3回分読み直し、スキルについて理解を深めてくださいね。