AWSの魅力は、なんといってもその手軽さとマネージドサービスです。一方で、手軽に始められるからこそ、失敗するケースも。では、どのようなプロジェクトで、実力が発揮されるのでしょうか。そんな疑問を技術書人気著者が解説します。オンプレミスの経験しかない方、AWS初心者の方も気楽にご覧ください。
今回の学び
*連載「ゆるく学ぶサーバー入門~イマイチわかりづらいサーバーの基礎を解説~」も併せて読むと、より理解を深めることができます。ぜひご覧ください。
こんなときに便利!AWS
AWSが活きる場面としては、やはり第一に「マネージドサービス」を活用するプロジェクトでしょう。例えば、キャンペーンのサイトなどで、アクセス数が読めず、変動が多いときなどは、AWSに自動で管理してもらうというのは助かります。
もし、手動でこのようなことに対応していると、どうしても専任の人が必要になりますし、そもそも間に合わずに落ちてしまったり、大きく見積もりすぎて過剰にハイスペックなものを用意してしまったりすることがあります。
その点、マネージドサービスのサービスをレンタルすれば、ミニマムで始められて、あとは自動でスケールするので、こうした動きに対応しやすくなっています。助かりますね!
■まだまだある、活きる場面!
他に、「急にサーバーを用意しなければならない!」というときにも重宝します。コントロールパネルから、クリックですぐにサーバーを作ることができるので、急いでサーバーを用意しなければならないときには、頼もしい味方です。
通常のサーバーの準備であれば、まずマシンを用意して、イメージを用意して、それをインストールして、そして1つずつ設定をして……と一日がかりです。
それが、AWSなどのクラウドサービスであれば、すぐにインストール済みのサーバーを立てることができますし、一旦設定したものを雛形(AMI)として書き出しておいて、再び同じサーバーを立てることもできます。
インストールもそうですが、ソフトウェアの設定は、存外面倒なものです。最近のサーバーでは、設定ファイルを直接書き換えない考え方が強くなってきているので、大分改善されましたが、それにしても、クリック一つでこうした反映ができるのは、ありがたいことです。
(出典)図解即戦力 Amazon Web Servicesのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書 p.109より
■こんなに便利なら全てAWSに!とはならない理由
他にも、オールインワンで揃えたいときや、「ちょっとだけ使いたいとき」にも、使いやすいため、こんなに便利ならば、全てAWSにしてしまえばいいではないかと思うかもしれません。
しかし、さすがにAWSはランニングコストが高いので、そのあたりはコストとのバランスになるでしょう。便利なものが高価なのは、しかたないことなのです。
とはいえ、サーバーを建てるのに時間がかかりませんし、そんなに専門知識がなくても始められるため、トータルで見た時には、コストは低いかもしれません。このあたりは、プロジェクトの性質と、会社の体質などによっても、大きく変わります。
AWSの見積もりは、オンプレ経験者なら簡単
AWSといえば、使っていないサービスを解約せずに、料金がかさんでしまったり、オートスケーリングするようなサービスにおいて、意図しないスケールをしてしまって、高額な請求が来たという話が話題になることがあります。通称「クラウド破産」です。
しかし、こうしたことは、一定の料金になったら通知が来るような仕組みもありますし、「作ったら放っておく」ような使い方は、クラウドには向きません。ある程度、頻繁に面倒を見てやる必要があります。
(出典)図解即戦力 Amazon Web Servicesのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書 p.86より
■AWSの見積もり方法は?
「従量制だから見積もりができない」という話も聞きます。
たしかに、使った分だけ料金が発生する従量制は、見積もりしづらいです。特に、年度単位で予算が決まっている場合などは、組織内で承認が取りづらいかもしれません。
しかし、従量制であっても、本来、オンプレミスの経験があれば、おおよそどのくらいのアクセスがあって、どのくらいの負荷があるというのは、わかるはずです。
例えば、通信料金は、単価×通信量ですから、1ユーザー数の通信量の概算と見込みのユーザー数がわかれば、かけ算で予測できるものです。いつもやっていることと変わらないのです。
(出典)図解即戦力 Amazon Web Servicesのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書 p.26より
■算出方法は理解したけど、やっぱり難しそう…
クラウドと言っても、結局のところは、今までオンプレでやっていたことをクラウドに移行しているに過ぎません。便利な点は多くありますし、気をつけなければならないこともたくさんありますが、なんだかんだ言ってサーバーであることには違いないのです。
ですから、見積もりに関しても、これまでの見積もりと同じように見積もりをすれば、大体どのぐらいの料金になりそうかというのはわかるはずですし、どれぐらいのスペックを使えばいいかというのも読むことができるはずです。
というよりも、このぐらいのことができないのであれば、AWSを使うのは少し危険かもしれません。
AWSは、その手軽さゆえに、あまりサーバーに詳しくない方が使うケースもありますが、あくまででサーバーには違いないので、やはり基礎的なサーバー*やネットワークの知識や経験は必要です。
(出典)図解即戦力 Amazon Web Servicesのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書 p.41より
まとめ:AWSとの付き合い方
さてAWSとの付き合い方について、なんとなく見えてきたでしょうか。
AWSをはじめとしたクラウドサービスは、大変便利なものです。しかし、その特性を活かせなければ、無用の長物となってしまいます。
一方で、あまり構えすぎるのも考え物です。AWSといえども、所詮は、「ちょっといつもと違うサーバー」に過ぎません。ですから、結局は、オンプレミスでのサーバーやネットワークの経験が大きく物を言います。
最近では、若手エンジニアが、オンプレミスでの経験なしに、最初からAWSを触るケースもあります。軽くご紹介しましたが、AWSにはAWSの作法のようなものがあり、それを学んで突き詰めていくことは、今後重要なことでしょう。
しかし、もしもつまずいてしまった場合は、オンプレミスなどを参考にすると、そこに解決策があるかもしれません。
全3回にわたり、AWSについてお話ししてきましたが、いかがだったでしょう。AWSの魅力は伝わったでしょうか。少しでもAWSが面白そうだなと思ったら、無料枠もあるので、ぜひ始めてみてください。
やはり、こういったものは、実際にやってみると色々とわかってくることも多いです。
「時間があるときに……」と言っても、「時間のあるとき」というのは、ずっと出現することはありません。なぜならば、エンジニアは忙しいからです。ですから、「時間があるときに」ではなく、もう今日明日にでもとりあえず申し込んで、無料枠で触ってみるということをやってみると良いと思います。
まずは、そこから始めましょう。
AWSは、便利ですし、今後のスタンダードとなっていくでしょう。そして、AWSを使うには、いくつかのポイントがあり、そこを押さえることが肝要です。
一方で、従来のオンプレミスの技術も大事ですし、なにはともあれ「サーバーを管理する」という考え方をしっかりと身につけておくことが、AWSを活かすことでもあります。ぜひ、AWSを触ってみてくださいね。よきクラウドライフを!
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