子育てや介護など、さまざまな理由でキャリアにブランクをもつ女性は多い。渡邉紀代さん(43)も、約4年の時を経て仕事に復帰した。

現在、渡邉さんが働いているのは、世界中でペットケアや食品などの事業を展開する企業である。しかしこの仕事をはじめるまでの間、彼女の中にはさまざまな葛藤があった。

結婚後、4年のブランク。仕事ができる自信なんて、少しもなかった

「実は私、長期の派遣のお仕事をご紹介いただいたとき、8割方お断りするつもりでいたんですよね」

それは2016年、1つ前に派遣スタッフとして業務をしていた別の職場が、吸収合併によって立ち消えてしまった直後のこと。以来、なかなか自分にしっくりくるフルタイムの仕事に出会えなかった渡邉さんは、ひとまず派遣スタッフとして働こうとしていた。リクルートスタッフィングに登録したのも、その活動の一環だった。

そこで、転機が訪れる。渡邉さんの経歴とスキルに可能性を感じたお仕事紹介担当が、現在の仕事を紹介したのである。

しかし渡邉さんは話を聞いた当初、「自分には絶対にムリ」と思ったという。

もともとは社員として、いくつかの会社での勤務経験があった渡邉さん。教育関連の会社で教材制作や講師をしたり、事務アシスタントをしたりしていた。しかし結婚を機に、家庭の事情で4年仕事から離れていた。

「長いブランクがあったので、正直なところすっかり自信をなくしていました。だからまた働こうと考えたとき、はじめはアルバイトかパートの仕事を探していたんです」

そのとき、たまたま応募した数日間のアルバイトを管理していたのが、とある派遣会社だった。そこで経験とスキルを買われ、渡邉さんはいきなりフルタイムで働くようになる。2014年のことだった。

「そんなにすぐ、社会復帰できるとは思ってもいませんでした。だから自分が誰かの役に立てるのがうれしくて、うれしくて。勤務形態が正社員であろうと派遣スタッフであろうと、そこは関係なかったですね」

以来、渡邉さんは派遣スタッフとしていくつかの仕事に従事してきた。しかし、今回紹介された仕事に対して感じたプレッシャーの大きさは、今までにないものだったという。

求められる業務の中には、今まで経験したことがないものも含まれていた。さらに、外資系の会社もはじめて。お仕事紹介担当からは「試しに1か月だけでも!」と説得されたが、「私はよくても、それでは会社に迷惑をかけてしまう」と、ためらう気持ちが強かった。

葛藤は続いた。しかしそんな渡邉さんの背中を最後に押したのは、家族からの応援だった。

「夫と母が、言ってくれたんです。先方がせっかくいいと言ってくれているんだから、思い切ってやってみたらいいよって」

「もしダメならダメで、平身低頭、謝るしかない!」――2016年8月、渡邉さんは意を決して、現在の就業先に飛び込んだのである。

がんばる仲間たちのために、自分の経験を役立てたい

渡邉さんが担当することになったのは、同社の事務アシスタントの仕事だ。ファイナンスの部署と、新商品・商品改良プロジェクトの管理をしている部署、2つのチームをフォローするのが彼女の役割。英語で輸出入のサポートをしたり、ミーティングなどの業務調整を行ったりしている。

あれほど迷い、悩んだ末に「えいや!」と飛び込んだ新たな環境。しかし半年が過ぎた今、しみじみと「あのときの選択は間違っていなかった」と感じているそうだ。

「まるで点と点がつながるように、これまでの経験が今、ここで活きていることを実感できるようになったんですよね」

自分は何も極めているものがなく、すべてが中途半端であること。それが、渡邉さんが長年抱えていたコンプレックスだった。

しかしご本人は、 “思い立ったら即行動”の人。求められるのにできないこと、わからないことは絶対に放置したりしない。とにかくこう、と決めたら一直線に取り組んでゆく。これまで、そんなことを少しずつ積み重ねてきた。

例えば、今の業務でも使っている英語を学んだきっかけは、アメリカの刑事ドラマ『LAW&ORDER』にハマったこと。もっと言葉や背景を理解したい――そう思い立ち、大学受験用の映像講義で勉強を始める。

そのわかりやすさに感動した渡邉さんは、何とか形にして、講師に感謝の気持ちを伝えようと一念発起。その結果、2ヶ月で英検準1級に合格した。

また、現在も続けているバンドのスタッフ活動も、渡邉さんの行動力からはじまったものだ。あるとき、友人のバンド演奏にとても感動した彼女は、思わず言ったそうだ。「もっと違う場所でも演奏したらいいよ!」――すると、そのバンドマンは半ば冗談で言った。「よし、お前は今日からマネージャーだ!」。

そこで渡邉さんは、なんと本格的にプロデュースのノウハウを学び、Webページや宣材を作ってバンドの営業に奔走。メンバーを大いに驚かせたという。

そしてそれは、仕事でも同じである。以前勤めていた職場では、管理会計のハイレベルな集計業務に追いつくため、できる上司から情報を聞き出し、即決でVBA(Excelで使われるプログラミング言語)の講座に通い、勉強した。

一つひとつは、些細なことかもしれない。でもそれらがすべて、今の仕事に役立っている。

日々、一生懸命に仕事に取り組んでいる会社のメンバー。少しでも力になりたい。役に立ちたい。心から応援したい。その気持ちを、これまでの自分が積み重ねてきた経験が叶えてくれているのだ。

「私の仕事は、いわゆる“メインストリーム”ではないかもしれません。でもそこでがんばっている人たちが、ちょっとでも働きやすくなればいいな、と思っているんです」

会社の一員として、自分が誰かの役に立てれば、あつかう商品を通じて社会に喜びを届けたり、幸せを運んだりすることへもつながっていくはず。それが何よりもうれしいのだという。

心から「出会えてよかった」と思える人たちに囲まれて、渡邉さんは今、その幸せをかみしめている。

会社のオリジナルグッズに癒される!

愛用のCASIOの電卓は、これまで簿記や会計の資格試験で使い、合格してきた縁起もの。この電卓を使って、また新しい資格試験にチャレンジしようと考えているのだとか!

かわいらしいカレンダーは会社のもので、写真のペットたちは実際の社員が飼っている動物たち。会社オリジナルのグッズも、いろいろと支給されるそう。

「いろいろな会社で働いてきましたけど、会社からクリスマスプレゼントをもらったのははじめてでしたね(笑) 出社したら、ブランケットとお菓子と、社長やマネージャーからのクリスマスカードが置いてあったんですよ!」。

ライター:大島 悠(おおしま ゆう)
カメラマン:延原 優樹(のぶはら ゆうき)

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