先進的な人事制度や取り組みを進めているヤフー。新卒一括採用を廃止し通年採用を行ったり、カフェなどで仕事ができる「どこでもオフィス」制度を設けたりと、これまでの固定観念を壊すような施策を進めている。クリエイター人財戦略室 室長の斎藤由希子さんに話を伺うと、上司や同僚からのフィードバックの大切さや「Must(意義)」の役割など、働く上で重要なヒントを数多く教えてくれた。

フィードバックは鏡のようなもの。数が多いほど美しくなれる

ヤフーでは、人事戦略において「才能と情熱を解き放つ」をモットーにしている。その言葉について説明してもらった。

「『らしさ』に近いものだとは思いますが、もう一歩進んで、寝食を忘れるくらいの情熱を持って突き抜けていくといった意味が込められています。自分の知らない面すら見つけていこう、という思いです。そのために、上司と『1on1』という1対1のミーティングを繰り返し、コーチングの手法を取り入れることで『内省』を繰り返していきます。

ただ、考えすぎるとループにはまってしまうこともあるので、抜け出すために上司や同僚からのフィードバックがとても重要。フィードバックは自分を映す『鏡』です。数を増やせば美しくなると考えています」

何とも納得のいく例え。鏡を見て自分を省みるたびに、もっと美しくなりたいと思うのは多くの人に覚えがあるのではないだろうか。

とはいえ、会社にフィードバックの制度がない場合もある。そんなときはどうすればいいのだろう。

「上司や同僚に『フィードバックをください』と言っていいと思います。言葉になじみがなければ、『この仕事、どうでしたか?』『どうすればもっとよくなりますか?』と聞くだけでもいい。評価して欲しいといわれて、悪い気持ちがする人はあまりいないと思います」

フィードバックの時間は、ほんの5分でもいいという。もらった言葉を今後に生かすと共に、相手に向上心があると伝える効果もある。

先進的な制度や風土で働き方を変え、多様性を認める

斎藤さん自身は二児の母で、子育ての真っ最中だ。育休中に悩んだり、不安になったりした経験から作られた仕組みがいくつかある。

「『パパママ・プロジェクト』はそのひとつ。有志の活動ですが、子育て中の従業員を対象に復職座談会を開催したり、個別相談を受け付けています。私自身が同僚の先輩ママたちにとてもお世話になり、情報の提供や、相談できる環境がとても有効だと思ったのがきっかけです」

すでに4年間続いており、制度を整えるだけでなく、風土を育てることにも一役買っている。「地域での子育てが希薄になったぶん、情報提供を会社が担う傾向になっているのではないか」と斎藤さんは語る。ただし、今の時代はインターネットでママ友を探すことも可能。単なる情報と共に、その人に合った内容を伝えてくれる仲間が支えになるのだそう。ときにはそのために自ら一歩踏み出すことも大切だ。

他にヤフーの制度に「どこでもオフィス」がある。月に5回までは、連絡がつけば出勤せずに自宅やカフェなどで仕事をしてもいいという制度だ。

「心地よく、効率よくなるように仕事の仕方を選べるため、自分らしく働くひとつの象徴的な制度といえます。多様な働き方を許容することで、多様な人材に本来の力を発揮してもらえる。それによって新しいひらめきやプロダクトが生まれ、一人ひとりの才能と情熱を解き放つことにつながっていくと思っています」

社内では、専門家ではないメンバーをチームに参画させることで新しい観点が生まれ、うまくいったプロジェクトも出てきているという。

「Can」「Will」「Must」を大切にすれば、成長することは楽しい

多様な人材や働き方を認めることで、それぞれが「らしく」働ける。そこを土台としてフィードバックを得ることで、さらに成長できるのだという。斎藤さんが口にした「成長」というキーワードに対し、質問をぶつけてみた。「はたして、誰しも成長しなくてはいけないのでしょうか?」

「それは、社内でもよく議論になります。私個人は……成長すべきだと思っています。ただ、スピードや方向性は人によって違います。それを許容するのがダイバーシティ(多様性)ではないでしょうか。Can(できること)、Will(やりたいこと)、Must(意義)がわかっていれば、過剰に人と比べることなく自分の成長を求められる。その3つが揃っていれば、成長はとてもワクワクするものになります。

成長は、スキルに限らないと思います。例えば、社会活動を通して世の中の役に立ち、成長することもあるでしょう」

成長はスキルだけではない、というのは心強い言葉。例えば、子育てをしている親は、子どもが生まれる前のようなペースで仕事のスキルを伸ばせないかもしれない。ただし、子育てという分野では間違いなく成長していく。それは、その人自身が豊かになっていることに他ならない。

ヤフーはこれからも先進的な制度や働き方、考え方を通して社会に問題提起していくのだろう。その姿勢は、同社と別の場所で働く人にも大きなヒントや勇気を与えてくれる。

ヤフー株式会社
クリエイター人財戦略室 室長 斎藤由希子さん
全日空の子会社で人事業務を5年経験後、1999年にヤフー入社。2005年に人財育成チームリーダー、2006年に中途採用チームリーダーとなり、2007年と2009年に産休・育休を取得。2010年に人事厚生室給与厚生チーム リーダー、2012年にグループ人事室 室長へ。2014年に人材開発本部(採用、育成、組織活性)本部長となり、2017年より現職。人事については、給与厚生・勤怠、採用、教育、安全衛生、労務、制度企画・運用と幅広く経験している。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:刑部 友康(おさかべ ともやす)

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