ベトナムからの留学生として日本にやってきた、Hoang Thi Thuy Nga(ホアン ティ トウィ ガ)さん(23)。高い接客スキルを求められる職場で働くことで、より高いコミュニケーション能力を身につけたいと、大学生活のかたわら、携帯電話ショップの受付業務をしている。家族から遠く離れ、勉強と仕事の両立に励むガさんの日常生活をのぞいてみた。

女性が不利な受験システム。国立大学に落ちて日本へ

ベトナムで仕事のキャリアを積むには、国立大学を卒業することが不可欠だという。成績がよく数学が得意だったガさんも国立大学を受験した。結果は不合格。

「3教科30点満点で合格ラインは27点。でも、男子は24点でも合格なんです。男だったら合格していたかも」と当時を振り返る。

その後、教育熱心な母親の勧めもあり、日本への留学を決めた。日本のことは『名探偵コナン』の漫画でしか知らず、最初の日本語学校のクラス分けテストでも下のクラスだったという。

2年間日本語を学んだ後はベトナムへ帰国して専門学校か私大へ行こうと考えていたが、専門学校で数少ない大学への推薦枠に選ばれた。

「大学への推薦がもらえたことは、日本に来て一番うれしかったこと。生活が厳しくて、飲食店でアルバイトをしながら日本語学校へ行っていたため、遅刻したり課題ができなかったりしたことも。私を選んでくれた先生には、感謝してもしきれません」

困ったときに相談に乗ってくれた先生とは、いまだに連絡を取り合っているという。もちろん、日本語の成績がよかったことは言うまでもない。

会社の飲み会で踏み込んだコミュニケーション

大学で国際コミュニケーション論を学びつつ、以前はアルバイトで生活費も稼いでいたガさんは、コネクシオ株式会社が運営するドコモショップお茶の水店へ派遣で就業。現在は、週3日、窓口業務を担当している。

「それまでは、飲食店で働いていました。でも、高い接客スキルを求められるドコモショップで働いて、言葉やコミュニケーション能力をもっと磨きたかった」

実際に就業してみると、敬語の使い方はもちろん、服装や髪形、個人情報の取り扱いの厳しさなど、飲食店とは大きな違いを感じたというが、持ち前の明るさや物怖じしない性格で、すぐに溶け込んだ。

「仕事の相談などは、飲み会のほうが本音を聞けることも。日本の人は、あまりはっきりとものを言わないですよね。私、最初の頃はお客様への説明を一部忘れてしまったことがありました。仕事中には何も言われなかったけれど、お酒の席で雑談しながら“大事な事はメモをとったほうがいいよ”と言われて、メモを取る習慣が出来ました」

仕事の吸収も早く、就業して半年で、プレマイスターという資格を取得。
「文法は学校で習うけれど、実際の会話力は仕事のほうが覚えられますね。両方あって日本語が上達していると思います」

大学3年に進級してから授業が減ったこともあり、任せてもらえる仕事も増えたが、学生はあくまで学業優先という店長の方針もあって、試験時などの勤務スケジュールは調整してもらっているという。

大好きなおじいちゃんに会いたい

大学を卒業したら、日本の企業で数年働き、その後はベトナムに戻って、留学生のサポートをするのが夢だ。

「日本は人手不足で、多くの外国人を受け入れています。ベトナム人が日本へ行く機会ももっと増えるはず。私が日本に来て困ったときに、あまりサポートを受けられなくて大変だったので、留学生のサポートを仕事にできたらと思っています」

自分の思い描くキャリアを歩みつつ、日本での生活も楽しんでいるというガさんが今一番したいこと、それはベトナムへの帰省。

「おじいちゃんが病気で、もうどのぐらい生きられるかわかりません。小さいころから私を膝にのせて可愛がってくれた大好きなおじいちゃんに、お正月に帰ってどうしても会いたい」

カップラーメンで生活費を切り詰めながら、冬休みに向けて旅費を貯めている。インタビュー中、明るく笑顔の絶えないガさんだったが、遠くに離れて住む家族に思いを馳せたとき、目に涙が光った。

恋愛もしてみたいけれど、今は学業や仕事が優先です

金のネックレスは、留学してから初めて帰省したとき、ベトナムで母親に買ってもらったもの。「経済的にも大変だけど、自分で乗り越えていることをわかってくれていて、頑張りなさいというメッセージだと思います」

時計は日本に来てから購入した。「学業と仕事を両立するには、時間管理がとても大事。課題は提出日の前日までに終わらせると決めています。また、大学のある日は勉強に専念。空いたコマでレポートを書いたりして、時間を無駄にしないようにしています」

スケジュール帳の活用も日本に来てからの習慣だ。「最初は覚えていたのですが、やることが多くなって課題の出し忘れなどがでてしまって。手帳に書き込んで忘れないようにしています。中表紙にメモした言葉は、ベトナムのポップミュージックの歌詞。私の持てるすべてであなたを愛しています、という意味」恋愛にも興味はあるが、日本にいる間は学業や仕事が優先だ。

ライター:有賀 薫(ありが かおる)
カメラマン:刑部 友康(おさかべ ともやす)
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