ずっと自分が働いてきた世界を離れ、思い切って全く違うジャンルに方向転換する。ときにそれは、大きな勇気がいるものだ。かつてアパレルの販売員として働いていた大河原江里奈さん(38)は、子育てと仕事を両立するために事務職へキャリアチェンジ。さまざまな職場で経験を積みながら、ステップアップを続けてきた。しかし、すべてが順調にいったわけではない。現在の職場では、かつて「自分がなかなか出せない……」と悩んだ時期もあったという。

販売員から事務へ。出産を機に大きな方向転換

「販売員として接客の仕事をしていたくらいなので、もともと人と接することが好きなんです。自分からどんどんコミュニケーションを取るタイプですね」

そう、明るく闊達に話してくれた大河原さん。2015年から、航空関連システム会社で、マーケティング専門のチームに所属している。さまざまな顧客のデータを、要件に合わせて抽出・集計し、分析するのが主な仕事だ。

彼女が派遣スタッフとして事務の仕事をはじめてから、もう10年以上がたつ。

「服が大好きで、以前は販売員の仕事をしていました。でも土日勤務や残業などがあるため、出産した後は復帰が難しかったんです。そこで事務の仕事に転職しましたが、仕事と家庭の両立ができるよう、時間がきっちり決まっている派遣スタッフを選ぶようになりました」

はじめはパソコンもほとんど使えなかったという大河原さんだが、幸い職場や上司に恵まれ、イチから事務のスキルを身につけていった。そして通常の事務から、金融関係、マーケティング領域へと、少しずつスキルを積み重ねていったのだ。

「自分を出せない」悩んだ空気が変わったきっかけ

そんな大河原さん、2年半前にあるチャレンジをすることにした。たまたま見つけた、子どもの頃に憧れた「飛行機」に携わる仕事の求人。ただ業務内容を見ると、今まではあまり関わったことのないものだったという。使用するソフトやツールも未知だったため、一度は躊躇した。

「自ら応募はしてみたものの、正直なところ、自分で大丈夫かな……という気持ちが大きくて。本当に今のスキルで対応できるのか、不安でいっぱいでした」

いざ就業してみると、彼女は業務以外の部分でもつまずくことになる。就業先の部署で、約20名のチームのうち派遣スタッフは1人だけ、しかも周りは全員男性。黙々と自分の仕事に取り組むタイプの人が多く、誰にでもフランクに接する大河原さんも、しばらくは温度感や距離の縮め方を測りかねていたそうだ。

仕事にも自信がなかったため、なかなか“自分”を出せない——そんな時期が、1年ほど続いた。一時は「退職」の文字も、頭をよぎったという。

「でも私、昔から負けず嫌いなんです。ここで辞めるなんて私じゃない! みたいな。自分の価値が下がってしまうと思っていたんですよね」

そう懸命に踏ん張った結果、ふと転機が訪れる。1人の女性社員が新たにチームに加わり、その人が変わるきっかけをくれたのだ。彼女と話すうちに、周囲との間にあった壁が、だんだんと取り払われていったそう。

「やっぱり、コミュニケーションって大事ですよね。ちょっとずつ私の性格を知ってもらうことができて、周囲の空気が変わっていきました。なんだかようやく、そのままの自分で働けるようになった気がしています」

親子というより“友だち”。3人の子どもたちとの関係

軌道に乗ってきた、今の仕事。慌ただしく家に帰る大河原さんを待っているのは、3人の子どもたちだ。年子で生まれた息子2人は、中学生になった。歳の離れた5歳の娘も、2人の兄が可愛がってくれるそう。

「息子2人が小さかった頃はさすがに大変でした! 今も、休みになると息子の部活の試合や公演があったりしますが、以前に比べると落ち着きましたね」

平日はお互いに忙しくて一緒に過ごせない分、休日は一緒に外出することがほとんど。大河原さんが大好きだというドライブをしたり、ショッピングを楽しんだり、ときには温泉に行ったり……。とてもフランクな関係で、「親子というより、もはや友だち感覚」なのだとか。

「子どもたちは、私が仕事をしているのがもう当たり前だと思ってくれていて。下の娘からは『ママ、お仕事がんばって』という手紙をもらったりもします。そういう小さなことが、はげみになりますね」

そんな大河原さんには、1つの夢がある。子どもたちがもっと成長したら、いつか海外で暮らすこと。アジア、ヨーロッパ……たくさんの国に行ってみたいそうだ。

「本当にいろんなことに興味があるんですよね。これからも子育てと仕事をがんばっていって、歳をとってから、そんな夢を叶えられたらいいなと思っています!」

子どもと一緒に選んだ万年筆で、手紙や言葉をつづる

お子さんたちと、とても仲が良いという大河原さん。とくに中学2年生の次男とは、いろいろと趣味が合うのだとか。

「長男は部活でサッカーをやっていて、スポーツ派なんです。次男はどちらかというと文化系。次男は私と好みが似ていて、よくショッピングに行って一緒に服や雑貨を選んだりしています」

あるとき「万年筆がほしい」という次男とともに買い物に行き、2人で「いいね!」といって選んだのがこちらのペン。気に入って、何種類か購入している。

「次男と私と、共用で使ってます。インクの色が、いろいろあってきれいなんです。次男はカリグラフィーを、私は手紙や詩を書いたりするのに使っていますね」

時計も好きで、洋服や気分に合わせて選ぶそう。ロレックスの時計は成人祝いに祖父から贈られたもので、今でも形見として大切に持っている。

ライター:大島 悠(おおしま ゆう)
カメラマン:上澤 友香(うえさわ ゆか)
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