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お気に入りのアート作品を、気軽にリビングに飾る。そんな自己表現があってもいい

アート作品を買う。それだけ聞くと、「えっ、ちょっとハードルが高いんじゃない……?」と感じてしまう人が多いかもしれない。「アートは敷居が高いもの」と、私たちはなぜ思い込んでしまっているのだろうか。もっと日常の中で、気軽に“自分らしさ”を表現する一つの手段として、アートが息づいていたっていい——そんな思いから生まれた、西荻窪の小さなアートギャラリーがある。「日常とアート」というコンセプトのもと、実際にどんなことに取り組んでいるのか。オーナーである柏本郷司さんにお話を伺った。

自分らしさを表現する、日常の中のアート作品

西荻窪駅から、歩くこと5分ほど。とても穏やかな住宅街の一画に、そのギャラリーはある。ガラス張りの建物をそっとのぞくと、額装された立派な、でもどこか親しみのある作品が並んでいた。

「以前、パリの住宅について取材して回ったことがあって。そうするとみんな、インテリアの話をする延長で、リビングに飾られている絵の話をしてくれる。決して高価な美術品ではないんですよ。自分が気に入った作家さんの作品を飾ることが、自己表現のひとつになっているんです。ごくごく日常の中にアートがある。それってすごく、素敵なことだと思ったんですよね」

そう話してくれた柏本さん。30年間近く勤めた会社を退社した後、2016年4月、このギャラリー「ヨロコビto(ヨロコビト)」をオープンした。コンセプトは「日常とアート」。

手前のギャラリースペースからもう一歩奥へと足を踏み入れると、やさしい木目調のインテリアが並ぶカフェスペースがある。もちろん、そこにもたくさんの作品が飾られていて、まるで自宅のリビングで絵を眺めているような気分で、コーヒーやケーキを楽しめる場所になっている。

「リビングに飾りたい!」インテリアのように絵を選ぶ

気に入ったアート作品を、カジュアルに購入すること。それは当然ながら、自分らしい表現を追求し続ける、たくさんのアーティストを支えることにもつながる。

「わたしが勤めていた会社には、2つのギャラリーがありました。その一つは新人アーティストを発掘・支援するギャラリーで、そこから幅広く活躍するアーティストが育っています。アート一本で食べていける人はそうそういませんが、がんばって、ずっと作品を創り続けている人がいる。そういう人たちの姿をみていて、僕も個人的に応援したいなと思うようになったんです」

アートや美術を“いい”と思える基準は、人それぞれだ。柏本さんはその判断軸を、「リビングに飾りたいと思えるかどうか」というポイントに置いている。

「インテリアを選ぶように、絵を選ぶようになってほしいですよね。例えば家を買ったときの記念だったり、誰かへの贈り物だったり……。実際に、このギャラリーではじめて絵を買ったという方もたくさんいらっしゃいます」

著名な画家の代表作のように高価なものではなく、ほんのちょっと背伸びをすれば届く価格帯。ヨロコビtoという場所ができたことで、アートと人との出会いが少しずつ生まれはじめているようだ。

レンタルアート、企業とのコラボ……広がる活動

柏本さんはギャラリーを運営するだけではなく、他にもさまざまな活動を展開している。そのうちの一つが、企業にアート作品を貸し出し、一緒に作家を応援していくサービス「ArTrip(アートリップ)」だ。働いている人にとって、オフィスも一つの日常の場。会社のカラーに合った作品を選んでいただき定期的にかけ替えていく。

「3ヶ月に1回、作品をチェンジするのですが、貸出先の社員の方が注目してくださるんです。『次はどんな絵が来るんだろう?』と楽しみにしてくれる。作家にとっても絵を見てもらえる機会が増える、その会社にいらっしゃるお客様が目を留めて、新たなコミュニケーションのきっかけになることもあるそうです。それこそまさに、アート作品が日常の中にある状態なんですよね」

アーティストの支援、企業や個人へのはたらきかけ。そしてもう一つ、ヨロコビtoで取り組んでいるのが障がい者支援である。

協業しているのは、障がいをお持ちの方がメインで働くリクルートスタッフィングクラフツ。同社では質の良い手すき紙を生産しているのだが、手作りゆえに、一定量の製品が規格に合わなくなってしまうという課題を抱えていたという。

「その話を聞いたのが、ちょうどアーティスト支援をはじめた頃でした。規格外といっても、ちょっと分厚かったりするだけで、とても質のよい紙なんです。だからそこにアーティストの絵を印刷して、素敵な作品に仕上げられないかと思いました」

試行錯誤した結果、日本の十二支を金色で箔押しした、豪華な12枚組のポストカード「干支の絵葉書」シリーズができあがった。「グループ企業の仲間がつくったもの」として、販促ツールとして活用されている。とりわけ、海外のお客様からの評判が高いそうだ。

「干支の絵葉書シリーズは、毎年新しい企画を出さないといけないので大変なんです」と柏本さんは苦笑いするが、ずらりと並んだ歴代のポストカードを見つめる目には、作品へのあたたかな愛情がにじみ出ていた。

作家と子どもたち、さまざまな人の出会いが交錯する場所

お話をうかがっている間にも、外を通る人たちが、ひょいっとギャラリーの中をのぞいていく。中には、興味津々といった表情の子どもの姿も。

「いつもドアは開け放してあるので、子どもたちが何人も、ダーっと入ってきたりします。作家が在廊していることも多いので、ちょっとしたお絵かき教室みたいになることもあるんですよ(笑)。場があるということは、誰かと巡り会えること。このギャラリーが、だんだんとそんな場所になりつつあるのを感じます」

人が人を連れてきて、あらゆる人の“その人らしさ”が交錯し、そこで生まれた出会いがまた、新たなつながりを生み出していく。「ヨロコビto」という名前に込められた願いのように、アートを軸に、可能性はまだまだ広がっていくはずだ。

株式会社ヨロコビto
代表取締役社長/クリエイティブディレクター 柏本 郷司さん

1985年、株式会社リクルートに入社。クリエイティブディレクターとして企業の採用広告や、社内商品のブランディングに携わる。2000年以降、リクルート社のビジョンの策定やロゴ変更等を含めたコーポレートブランド全体のクリエイティブを担当。2014年3月に退職し、現在はクリエイティブディレクター、アドバイザーとして企業ブランディングを多数手がけるかたわら、2016年4月、「日常にアートを」のコンセプトのもとギャラリー「ヨロコビto」を開き、さまざまな形でアーティスト支援に取り組んでいる。

ライター:大島 悠(おおしま ゆう)
カメラマン:刑部 友康(おさかべ ともやす)

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