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かっこつけすぎないプロダクトで、クスッと笑ってほしい

パソコンのキーボードに挟むメッセージカード「Deng On」や、書類や冊子などを整理する「WORKERS’BOX」など、「どうして今までなかったの?」という文具をデザインしているHI MOJIMOJI。キュートなデザインは、持っているだけで嬉しくなったり、オフィスで働く人にちょっと癒やしを与えたりすることも。以前、らしさオンラインで派遣スタッフの野村かをりさんの愛用品として「Deng On」を紹介したところ、社長の松岡さんがTwitterでツイートしてくれたことがある。らしさを支えるプロダクトをつくるHI MOJIMOJIのふたりに、その秘訣を伺った。

夫婦で「HI MOJIMOJI」をスタート

井の頭公園駅のほど近くにオフィスを構えるHI MOJIMOJIは、社長でありプロデューサーの松岡厚志さんと、デザイナーの松田綾子さんがふたりで活動しているデザイン・ユニット。

「もともと販促系のデザイナーとして、ノベルティなどを作っていました。そこでは、制作物に対してどんなリターンがあったか、常に数字が出ます。同じティッシュを配るにしても、仕掛けを作ると反応がいい。そうした工夫が今に繋がっています」(松田さん)

「以前は広告などのフリーライターをしていました。今の仕事でも、わかりやすさを大事にします。いくらいい商品でも、伝わらなかったら面白くないので」(松岡さん)

使い手の反応をしっかり考えるふたりは、2010年から活動をスタート。文具を中心にさまざまなプロダクトを作ってきた。

使い手のことをとことん考えたヒット作の裏側

HI MOJIMOJIの商品点数は決して多くないが、キュートなデザインでそれぞれにちょっとひねりがある。大ヒットした「Deng On(デングオン)」は、キーボードの隙間に挟むメッセージカードだ。

「通常のメモは消耗品ですが、Deng Onはここぞというときに使ってもらいたいですね。自分用ではなく、誰かの気を引きたい、上司に『お疲れ様でした』を伝えたい、といったときに、相手のデスクのキーボードに置く。見える部分に加えて、キーボードに隠れる部分を折りたためば秘密のメッセージも伝えられます」(松岡さん)

かわいいデザインなので、無造作にメモ用紙や付箋を置いておくより、もらったほうも楽しくなれそう。らしさオンラインで紹介した派遣スタッフの野村さんも「自分の身の回りのもの、毎日使うものはできるだけかわいくしておきたい」「メモをわたす相手の方にも、ちょっとほっこりしてもらえたらうれしい」と話していた。

ふたりの「Deng On」に込められた想いは、しっかりと伝わっているようだ。

今大ヒットしているのが、「WORKERS’BOX」。仕事で使う資料をプロジェクトごとにまとめて入れておく箱で、松田さんが自分で使いながら改善を重ねてきた。

「私は机の上が散らかってしまうタイプだったので、とにかく簡単に片付けられるものを作ろうと考えました。クリアファイルは、サイズが違ったり厚みのあるものを挟んでおくと、持ち上げたときに落ちてしまうので……。箱を用意して試してみると『意外とまとまるんだ!』というのが正直な感想。1年くらい改善しながら試作品を作って、今の形に落ち着きました」(松田さん)

当初、自分だけのためだったものの、商品として販売することに。商品コンセプトをわかりやすくした4コマ漫画をTwitterに投稿したところ、1.6万リツイートにもなったのだとか。

一気に7000個ほどの注文が入り、すぐに在庫切れ。取材当時は1か月待ちとなり、急遽ネット販売のみに切り替えた。(現在は店頭販売も一部展開中)

デザインやネーミングにこだわる

ひねりのきいたオリジナルデザインの文具は、なるほど、と感心するものばかり。光るアイデアとともに、どんなところに気を付けているのだろうか。

「名前やデザインは、輸入物のような雰囲気を大切にしています。『Deng On』や『WORKERS’BOX』など、英語の名前にしているのもこだわりです」(松岡さん)

「オフィス用品のメーカーが作る商品は、赤や青などが多いんです。ところがそれでは、私たちが働くような自宅兼オフィスでは馴染まない。どんな棚でも似合うデザインを考えると真っ白も無機質すぎると思い、WORKERS’BOXは明るいグレーにこだわりました。また、自分が買いたい値段、というのも大事にしています。WORKERS’BOXは300円台になるよう頑張りました」(松田さん)

明るめのグレーなら、多少汚れても目立たない。今後カラー展開をする可能性はあるが、最初のカラーはどんな本棚に立てておいても違和感がないものに。「まず、自分が使いたい」を考えるからこそ、こだわり抜くことができるのだろう。

「膝を打つ」感覚を大事にした商品作り

「いつも、自分たちが使いたいものを作る、を念頭に置いています。フリーランスでライターをしていた頃は、『自分たちは欲しくないけど、ターゲットとしている人たちは欲しがるだろう』と考えて商品作りをする人たちも見てきましたが、僕はあまりしっくりこない。また、『なるほど、その手があったか』という膝を打つような感覚が好きで、僕らは『Kneepon(ニーポン)』と呼んでいます。かっこつけすぎていなくて、少し笑える。そんな商品が作りたいんです」(松岡さん)

「2人でよく雑談をして、アイデアを思いついた瞬間に言うようにしています。ある日、彼がお風呂で何か思いついて『キター!!』と叫んでいたことも……。私はそのアイデアにあまりぴんと来なかったのですが(笑)、結局商品化しました。デザインするのは私の担当なので、自分の思いだけでなく、彼の希望のものもある程度公平に作るようにしています」(松田さん)

どこまでも自分たちらしく、納得のいく商品作りをしているHI MOJIMOJIのふたり。最後に「らしく」あるためのヒントを聞いてみた。

「自分で使うものは自分で選ぶこと。例えば僕は黒が好きなので、黒くてカッコイイものを見つけるとテンションが上がる。たぶん僕が会社勤めをしていて、文具が支給されていたとしても、自分で選んで買ったものを使うと思います」(松岡さん)

「自分で作れるともっといい。お金儲けのためでなくても、欲しいものを選択肢から選ぶだけでなく『作っちゃおう』という発想になるとすごく楽しい。作りたいものを作れば、世の中は面白いです」(松田さん)

作る自信がなかったら「違う使い方をしたり、組み合わせるだけでも」と補足する松岡さん。たとえば、たばこケースに名刺を入れている人を見て「やられた」と思ったことがあるそう。

少しセンスのいい文具を選んだり、もとの用途と違う使い方をしたり、自分で組み合わせを考えたり――そんなところからも自分らしさが生まれてくるのかもしれない。HI MOJIMOJIの商品には、そんなヒントがあふれている。

株式会社ハイモジモジ
思わず膝をポンと打つ、アイデアあふれるプロダクトを発信しているデザイン・ユニット。ライターの松岡厚志さんがプロデュースを、グラフィックデザイナーの松田綾子さんがデザインを担当。代表的な商品に、デスクが片付くファイルボックス「WORKERS’BOX」、水に濡れても破れないアウトドアメモ「TAGGED MEMO PAD」、帽子が片付く収納ボックス「HAT APARTMENT」、キーボードに挟むメッセージカード「Deng On」など。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:福永 仲秋(ふくなが なかあき)