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新婚1年目に義母を介護。 職場の理解と山で鍛えたメンタルが、乗り越えるチカラに

派遣スタッフとして、就業先で、著作権や商標など、権利に関する事務処理に携わっている蓑田有希さん(34)。義母の介護を担うことになったのは、32歳で結婚してまもなくのことだった。考えてもいなかった義母との同居、そして介護。「施設に入れる」という話も出たが、「お義母さんの意思を尊重したい。自宅で介護しよう」と夫に提案したのは蓑田さんだった。

夜中も1時間おきに、トイレや寝返りの介助

「結婚前から、義母が膠原病で長く入院していることは聞いていました。自分が介護することになるとは思っていなかったのですが、ほとんど寝たきりのようになった義母が『家に帰りたい』ってずっと訴えていることを知って、私がやります、と」

義母は要介護4で、24時間見守りが必要だった。日中はヘルパーを頼んでいたが、夜は蓑田さんが、床ずれしないように寝返りをさせたりトイレの介助をするために1時間ごとに起きていたという。

「夫もやってくれてはいたのですが、仕事に負担をかけたくなかったので、なるべく私がするようにしていました」
覚悟を決めて臨んだことだったが、現実は考えていた以上にきつかった。

「睡眠不足もですが、じつは一番しんどかったのは食事づくりでした。もともと義母はとても料理上手で、味へのこだわりが強かったんです。私が作ったごはんを義母が何と言うか、毎日、ドキドキしていましたが、結局何も言わずに食べてくれていましたね」

親身になって話を聞いてくれる同僚の存在が支えに

介護をしながら、派遣スタッフの仕事も続けていた蓑田さん。仕事からいったん離れるという考えも頭をかすめたが、続けようと思えたのは、職場の理解があったからだ。なかでも、自らも介護経験のある同僚の女性は、蓑田さんの話を親身になって聞き、サポートの手を差し伸べてくれた。

「初めてのことで何から準備したらいいのかもわからなかったのですが、その方に相談したら、翌日、『きのう、あなたのこと、一日中考えていたの。それでね…』と、ケアマネージャーを頼むことから何からいろいろ教えてくださったんです」

具体的なアドバイスもありがたかったが、何より、自分のことを気にかけ心配してくれる温かい気持ちに触れ、力づけられたという。

遺された義母の日記に「有希さんがいるから安心」

義母が旅立ったのは、自宅介護を始めて2カ月後。

「急激に症状が進んで……。今思えば、最期が近いことをどこかで悟っていて、あんなに家に帰りたがっていたのかもしれません」

同居すると決まったときはどうなるかと思ったが、振り返ってみれば、「割とうまくやれていたんじゃないかな」という思いもある。

「亡くなった後で日記が出てきて、そこに、『家に帰ってこられて本当によかった。ちゃんとしたお嫁さんが来てくれたから安心。後は有希さんに任せる』と書いてあったんです。ああ、信頼してもらえてたんだと、うれしかったですね」

断崖絶壁の単独行から、二人で楽しむ山歩きへ

結婚してすぐに始まった介護、慣れない家事、仕事との両立……どこにそんな底力が、と不思議になるほど華奢で可憐なイメージの蓑田さんだが、聞いてびっくり。なんと、筋金入りの登山女子なのだ。

中学生の頃から家族とともに北アルプスに通い、20代では週末ごとに単独でロッククライミングを楽しんでいたというから半端じゃない。

「設定したコースタイムを、いかに縮めていくか。達成できたときの自己肯定感がすごいんです。私はもっとできる、みたいな。命をかけて挑戦している、みたいな」

「あわや滑落って経験も何回もしました。こんなに好きなんだから山で死ねたら本望とか言っていても、やっぱりそこでは、『生きたい!』って気持ちが強烈に湧いてくる。それがたまらなくって」

山を語る熱い言葉が止まらない。

「たしかに、山で精神的に鍛えられましたね。少々のことなら、これで命とられるわけじゃない、それなら楽しむことを自分で考えようって思うんです」

去年の夏は、自分の大好きな場所を見せたくて、登山は2度目という夫を、日本有数の最難関ルートに連れていったそうだ。

「岩の途中で泣きべそかかれて、ほんと、困っちゃったんですけどね。夫も行くって言ったことを途中後悔していました。ハハハ」

切り立つ岩にひとりで向き合っているときの、生死をかけたギリギリの緊張感は捨てがたい。でも今は、できるだけ夫といっしょにいる時間を大切にしたいというのが正直な気持ちだ。

「夫は、私の話に耳を傾けてくれるし、支えてくれる。結婚してよかったなと思います。お互いに相手に合わせていくことも大事かなということで、とりあえず、今度は、あまり危険でない普通の山歩きをしようと、二人で話しています」

筋金入りの登山女子だけど、愛用品はキラキラコスメ

登山のほかにも、留学先のカナダで夜中に山道で迷い、見知らぬ家に駆け込んだこと、夫の趣味のロードバイクにつきあうようになって生傷がたえないこと、ピンヒールで自転車を飛ばして通勤していること……次々と飛び出す豪快なエピソードに、取材スタッフも驚くやら感心するやら。

そんな蓑田さんが持参した愛用品は、華やかなコスメ類。「ギャップ」という意味で、これもまた興味深い。

ハンドクリームは3種類。実用目的でひんぱんに使う保湿力の高いものと、香りが好きな2本のロクシタン。ロクシタンは、仕事中気分をリフレッシュさせたいときに。

フレグランスは2種。KENZOの『フラワー バイ ケンゾー』は、外出用。清楚で上品な甘い香りがとても気に入っている。会社のデスクに置いているのは、ディシラのフローラル系。ボトルのロゴが消えかけるほど使い込んでいる。

リップメイクは、薬用リップクリーム→グロス→口紅の順番で重ねるのが、蓑田さん流。口紅は、ピンク系が多い。ふだんは、コスメデコルテ、ちょっと気分をあげたいときにはシャネルと使い分けている。

ライター:高山 ゆみこ(たかやま ゆみこ)
カメラマン:刑部 友康(おさかべ ともやす)