将来のお金のことは気になるものの、専門的な知識が必要になったり、時代背景が変わったりと、なかなかリアルに考えにくいのが現状。それでも、最低限の備えをしていきたいもの。一方で、お金にとらわれすぎない、豊な人生設計もしていきたい。今回のイベントでは、『らしく働くための、「お金のきほん」と豊かさ軸のライフデザイン』と称して、池田亮平さんをお迎えし、お金に対する基本的な考え方や、豊かな人生を送るためのヒントを紹介した。

講師:池田亮平さん
東京大学文学部在学中、NPO法人アイセック・ジャパンにて人事責任者。2003年より株式会社リンクアンドモチベーションにてコンサルティングと経営企画業務を担当。2008年よりソニー生命保険株式会社にてライフプランナーを約10年経験。並行して種々のコミュニティの立ち上げや運営を行い、2018年に独立後は、フィナンシャルプランニングと併せて、非金銭資本を重視したライフデザインを実践しながら提供していく。

自分の人生のオーナーシップを持つ

池田さんは、キャリアだけを見ると輝かしいように見えるものの、本人曰く「しくじり」の人生を送ってきたのだという。いろいろな経験を通して、人生のビジョン、ミッションを見つけたのだとか。それは、「これからの時代だからこその“豊かな人生”をひとつでも多く」というものだ。

「もはや、やみくもに『給料を上げていこう』という時代ではありません。何のために、お金のことを学ぶのでしょうか。お金を味方に付けることができれば、『自分の人生のオーナーシップを持てる』と考えています。さまざまな環境変化があっても、自分なりの選択ができるということに他なりません」

向こう100年はお金が強い時代が続くのだそう。そのためにはやはり、お金の知識なしに豊かな人生を送るのは難しいのかもしれない。

ライフプランニングの意義とは

池田さんが専門としているライフプランニング。一般的にはファイナンシャルプランナー(以下、FP)が担うもので、お金の計算やシミュレーションがメイン。ところが、大事なことは損得から考えないことだという。

「今、自分がどんなところに立っているかを考えます。さらに、『どうなりたいか』『どうありたいか』を考えて、そのギャップを埋めるためにどう進んでいくか。その際に、ヘリコプターですぐに行きたい人もいれば、景色を楽しみながらロープウェーで行きたい人、家族で協力し合いながら歩いていきたい人など、さまざまなはず。『自分や家族にとっての豊かさとは何か?』を考えることが大切です」

その際に覚えておきたいのは、ライフプランニングは3つのパート「描く」「守る」「実行する」に分かれるということだ。ここにはさまざまな専門家が関わっており、コーチングは「描く」「実行する」の部分、独立系のFPは「守る」「描く」の部分を担うと言える。生命保険の外交員は、リスクについて詳しいから「守る」になる。また、家や車を購入する際には、不動産屋やディーラーなどの専門家が「実行する」を担う。自分や、誰か一人がすべてを網羅するのは難しいので、どの分野で誰に頼るのかを決め、自分のチームを組んでいくのが理想だ。

リスクと備えは「山場」を見据えて

生きているとさまざまなリスクが生じる。例えば、災害や病気、けがなど。どの程度備えればいいか判断するのはなかなかに難しい。

基本的には、三段階で考える。国の用意する「社会保障」、雇用先の企業が用意する「企業の保障」、自分で身を守る「自助努力」の3つだ。生命保険は「自助努力」に含まれる。

フリーランスの場合、企業の保障がないので、自助努力の部分が増える。例えば、フリーランスが受けられない社会保障には「有給」「傷病手当金」「出産手当金」「育児休業給付金」「失業保険」「健康診断・人間ドック補助」「各種厚生年金」などがある。

「生命保険などを考えるときには、自分たち家族にとって『取り返しのつかない状況』『絶対に嫌なこと』を考えることが大事です。また、将来の学費や介護など、出費がかさむタイミングの『山場』を見極めることも大切」

その山場を見極めて、お金を貯める計画を立てるとよい。

運用も視野に入れたお金づくりの基礎知識

給料を貯めるだけがお金を増やすことではない。運用に目を向けることも大切だという。「金利」「税金」「時間」を味方に付けられれば、自信を持って増やすことができる。時間をかければ、リスクの少ない方法で、確実に増やすことが可能。少し勉強しても、運用することのメリットは大きいと池田さんは言う。

「例えば、国が勧めている資産形成方法として、「確定拠出年金」のイデコ(iDeCo)などが紹介された。例えば、約500万円の所得がある場合、約150万円は所得税・住民税として納めることになるが、その際に、月2万円、年間24万円をiDeCoで運用していると、拠出金額を所得から減らせるために、約72,000円が手元に残ることになる。ただ単に24万円を貯金する場合と比較するとその差は大きい。」

どんな方法で貯蓄や運用をするにしても、貯められない/増やせないという人には、天引きがお勧め。先に引いてから、残りを使う方がいいだろう。

これからはお金以外の豊かさを求める時代へ

これまで、人生の豊かさはお金で買えるものだった。ところが、これからは違うものにシフトしていくだろうと池田さんは考えている。

カーシェアや民泊、車の相乗りなど、シェアリングエコノミーのサービスが増えている。家賃1万円で岐阜の一軒家に住み、ライターの仕事している人も紹介された。仕事は減っても、生活費がかからないので困らないのだという。

ここで、「豊かさとは○○である」の○○を埋めるワーク。参加者それぞれが思うことを、テーブルごとにシェアしてもらった。その後発表してもらうと、「お金」「時間」「人」などの意見があった。「自分なりの言葉がわかっていると、例えば今ここにある1万円を何に使うか? という判断基準にもなります」と池田さん。

最後に、人脈の棚卸をしておいた方がいいと言い、次のように締めくくった。

「どれだけ勉強しても、自分だけですべてを網羅することは難しい。仲間や伴走者が必要になります。ライフプランニングは、お金の計算ではなく、豊かさを軸にした納得感のある選択が必要になります」

そのために、お金や働き方から目をそらすのではなく、必要知識を学びつつ、人と人とのつながりを増やしていくことが大切なのだ。お金と豊かさは比例しているように見えて、実は自身の価値観によるところが大きい。貯蓄や運用に関する知識をたくわえる必要もあるが、その前に、「人生の豊かさとは」を考えてみてもいいだろう。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)
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