情報過多で先が見えにくい時代に、不安やストレスが溜まり、注意散漫になってしまうことも多いのでは。こんな現代に必要なのは、「今ここ」を見つめる「マインドフルネス」。注意力や集中力のアップ、抑うつや不安の解消、感情の安定など、さまざまな効果が認められているのだとか。そこで今回は心理学博士で臨床心理士の関屋裕希さんに、アメリカを中心に注目されている「マインドフルネス」の入門編について教えていただいた。

講師:関屋 裕希さん
臨床心理士。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野 客員研究員。専門は産業精神保健(職場のメンタルヘルス)であり、おもに認知行動アプローチを活用した、従業員や管理監督者向けのストレスマネジメントプログラムの開発に従事。業種や企業規模を問わず、ストレスマネジメントに関する講演、企業の組織的なストレス対策に関するコンサルティング、執筆活動を行っている。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

なぜ「マインドフルネス」が注目されているの?

「金魚の集中力ってどれくらいだと思いますか?」

はじめに関屋さんは問いかける。その答えは「9秒」。それを踏まえて、人間の集中力はどれくらいだろうか。

「マイクロソフトが実施した調査によると、私たち人間は2000年には12秒くらいでした。ところが、2013年には8秒になってしまいました。なんと、金魚より短いんです」

現代人は注意散漫になり、注意力が続かなくなっているという。以前より落ち着きにくい、集中できない、気が散るようになってきた、と身に覚えのある人も多いかもしれない。

そんな状態に効果的なのが「マインドフルネス」だ。よく耳にする人も多いだろう。近年になり注目されるようになったのは、いくつか理由がある。ひとつめは『Search Inside Yourself』という書籍にある通り、Googleがリーダーシッププログラムにマインドフルネスを取り入れ、感情や健康のマネジメントにも効果的だ、としたことだ。

また、2015年に発表されたメンタルヘルスの論文で、うつ病の再発予防に効果的だとされたことや、脳科学の躍進で、マインドフルネスの効果を科学的に検証できるようになったことも影響している。

それらの研究の中でわかったのは、マインドフルネスには、次のような効果があるということだ。

注意力アップ
集中力アップ
抑うつ感の低減・うつ病の再発予防
不安感の軽減
感情の安定
ストレス反応の軽減
創造力のアップ
発想力のアップ

このように、マインドフルネスの効果はひとつではなく、多岐にわたっているのだ。

マインドフルネスの定義を押さえる

マインドフルネスの定義は、次の通りだ。

「今ここでの経験に、
評価や判断を加えることなく
能動的に注意を向ける」体験のしかた

3行に分けてあるのは意味がある。まずは、1行目の「今ここでの経験に」という部分。私たちの意識は、放っておくと過去や未来をあちこち移っている。例えば「昨日あんなことを言われた」「明日これをやらなきゃ」といったことだ。ところが、マインドフルネスでは「今ここ」に集中することが大切となる。

2行目の「評価や判断を加えることなく」は、イメージがしづらいかもしれない。私たちは意識するしないにかかわらず、目にしたものや耳にしたものを「いい/悪い」「簡単そう/難しそう」などと、評価や判断をしながら生活している。自分のメガネで色付けをしているのだ。マインドフルネスでは、色付けをせず、目の前に起きていることをそのまま、それ以上でも以下でもなく受け取る。

3行目は「能動的に注意を向ける」。例えば、「なんとなくボーっとしていたら10分ほど経っていた」や「お風呂でいつも通りに身体を洗って、気が付いたら洗い終わっていた」など、意識をせずに時間が過ぎていくのは受動的な状態。マインドフルネスは、意識して注意を向けながらも、評価や判断を加えない、という体験のしかたとなる。

集中瞑想と観察瞑想のトレーニングをしてみる

言葉だけでは難しいので、実際にトレーニングをしていく。マインドフルネスのトレーニングには、基礎トレである「集中瞑想」と実地訓練の「観察瞑想」がある。集中瞑想とは、呼吸や身体感覚などひとつの対象に集中することで、観察瞑想とは自然と沸き起こる感覚・思考などを観察することだ。

まずは基礎トレからスタート。集中する対象は「呼吸」だ。その際に注意するポイントは次の通り。

1.呼吸に意識を集中し、注意が散漫になることを抑える
2.注意がそれたらそれに気づく
3.ゆるやかに呼吸に注意を戻す

関屋さんは次のように説明する。

「注意が呼吸から離れるのは自然なことです。それに気がついたら『いけない、戻さなきゃ』などと評価や判断を加えず、ただ『注意がそれたな』と、また呼吸に意識を向けてください。これが『注意のシフト』といって、とても大切なことです」

集中瞑想をする際には、椅子に座っているなら足の裏全体が床に付くようにして、背もたれにもたれず安定した姿勢をとる。床に座っているなら、あぐらや正座など、ぐらつかない姿勢をとる。呼吸を無理にゆっくりにする必要はなく、いつも通りでいい。目を閉じても閉じなくてもいい。この状態で、3分間呼吸に集中する。

3分過ぎたら、伸びをしたり首を動かすなど、ゆっくりもとの状態にもどっていく。

基礎トレ―ニングである集中瞑想のワークのあとは、実地訓練である観察瞑想のトレーニングをしていく。

意識を次の5種類に分けて注意を向け、例に示すような実況中継として心の中でセルフ・ナレーションしていくというもの。

1.思考

例「私は今、疲れたから休みたいと考えている」

2.感情

例「私には嬉しい気持ちがある」

3.体の感覚

例「肩のあたりがこっている、という感覚がある」

4.行動や行動傾向

例「今はパソコンの前に座っているが、立ち上がって動きたい」

5.記憶

例「私には、先週の会議の様子が頭に浮かんでいる」

5分間実施したが、初めてだとやや難しく感じることも多い。普段の生活で何度も繰り返すことで、慣れていき、自分の状態を感じながら、同時に観察もできるようになっていく。焦ったり不安になるといった感情が沸き起こっても、早く気持ちを落ち着かせられるようになるという。

また、毎日の日記として書いても効果がある。日々のことを上記の5つの視点から振り返って書くと、日々の瞬間に気づき、見つめていくことができる。他にも、食事の最初の5分間だけ、「視覚」「嗅覚」「触覚」「聴覚」「味覚」のそれぞれに意識を向けながら食べることもおすすめだ。

「今ここ」に注意を向ける「マインドフルネス」。集中瞑想や観察瞑想が難しかった方も、続けていけばコツをつかむことができるという。アプリなどもあるので少しの時間からトレーニングを続け、生活に役立ていきたい。

より詳しく学びたい方は「らしく学ぶ」より動画をご覧ください。
https://www.r-staffing.co.jp/rasisa/entry/202004303207/

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)

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