リモートワークが増え、メールやチャットなどの文字を使った業務のやり取りが増えている人も多いはず。対面と違い、相手の反応を見られなかったり、聞き返すのに手間がかかったりするため、1回で情報を伝えることがより大切になってくる。これからますます広がるだろうオンライン時代に向け、仕事を効率的、スムーズに進めるための文章術を身につけよう。テクニカルライターの高橋慈子さんを迎え、ライティングのコツをレクチャーいただいた。

講師:高橋慈子さん
株式会社ハーティネス代表取締役。テクニカルライター。技術系出版社勤務、フリーランスのテクニカルライターを経て1988年株式会社ハーティネス設立。企業の取扱説明書、マニュアルの制作、コンサルティングに関わる。ライティング研修、企画・実施。2015年より、宣伝会議「文章力養成講座」講師。日経ビジネススクールeラーニング講座「技術者のためのライティングスキル養成講座」提供。立教大学、慶應義塾大学、大妻女子大学 非常勤講師。情報処理学会ドキュメントコミュニケーション研究会運営委員。

情報を読み手に伝えるためには、書く前後に準備と見直しが必要

今回の動画では3つのポイントに加え、プラスαで演習の時間を設けている。

まず高橋さんは、メールや報告書で、「次のようなことに困っていませんか?」と投げかける。

「ついつい長く書いてしまい、伝えたいことがまとまらない」
「どこまで書くべきか悩んでいると、時間がかかる」
「質問や問い合わせがきて、仕事が捗らない」
「失礼なメールになっていないか…。どの程度、丁寧に書いたらいいか悩む…」

それらはすべて、情報を伝えるための準備と技術が足りないからだと言う。時間を短縮してわかりやすくするためには、「準備」→「ライティング」→「見直し」という3つのプロセスで進めることが大事だ。

準備には、高橋さんが「ポイントメモ」と呼ぶ作業が有効。5W2H(いつ、どこで、誰に、何を、何故、どのように、いくら)を書き出してから文章にすることで、「抜け、モレ」を無くせるとのことだ。

ライティングの技術としては、ひとつの文章にはひとつの内容だけを入れる「一文一義」が大事。また、読み手に行動して欲しい内容を、動詞を使って具体的に書くと次の行動につながりやすいという。さらに、書き終わったら冗長な表現を見直して簡潔に書けば、わかりやすいスッキリとした文になっていく。

「どれだけ慣れても一度で無駄のない文章を書くのは難しいものです。だから、いったん書いてから見直して修正してください。見直すことで、ぐんと簡潔でわかりやすい文章になります」

メールは、スムーズに理解できて知りたいことがわかるように書く

メールライティングでは、必要な情報を過不足なく伝えることが重要だという。メールのやり取りが減り、お互いの時間が削減できる。相手へ依頼することを躊躇して、曖昧に書いたり、行動を促さないケースも見られるが、それでは効率が悪くなるだけ。仕事なのだから、「こうして欲しい」をしっかりと伝えることが効率アップのコツだ。

ただし、相手の立場や受け取り方を考える必要はある。「至急お願いします」など自分の都合だけで書かずに「いつまでに行えばよいのか」など、読み手の視点になって考えることが有効となる。

ここで、伝わりにくいメールの例を紹介していく。

スライドに表示された例文を見てみると、ポイントメモで押さえておくべき5W2Hの抜けがたくさん見受けられる。「誰に」「何のために」「何をして欲しいのか」「いつ、またはいつまでにして欲しいのか」などが書かれていない文章。これでは、効率よく仕事が進められないだろう。

また、読み手に行動してもらう書き方を意識する必要もある。「ご対応ください」よりも「〇月〇日の〇時までに、フォームにご記入ください」のほうが、読み手も取り掛かりやすくなる。また、資料のレビューやチェックなら、「添付ファイルに赤字を入れてご返信ください」と、やり方まで指定するとスムーズだ。バラバラに戻ってきた返事をとりまとめる手間も省ける。

「また、文章の中に気持ちを表すことも大切です。一方的な依頼だけでは、お互いに気持ちよくありませんよね。『ご多用とは思いますが』といった気遣いや、『現場の情報をいただくことで有益な報告書がまとまってきました。助かりました』といった状況説明、感謝の気持ちを『ポジティブフィードバック』として伝えると、スムーズかつ効率的に仕事が進んでいきます」

チャットでは短く簡潔、スピーディーに伝える

メールに加え、最近増えているのがチャットツールによるコミュニケーション。情報をスピーディーに共有するために作られたツールなので、素早く書き込んでいくことが有効だという。

「具体的には、終わったことだけでなく、今の状況説明や、これから取り組もうとしている予定などを共有すると、チーム全体の段取りがスムーズに進みます。ですから、読んでいるだけでなく、自分の業務の状況を積極的に共有するとよいでしょう」

文章のコツは、「冗長な言葉にしない」「必要なものやすべきことを明確に書く」など、チャットに限らない基本をおさえて書くこと。また、ポジティブフィードバックを書き込むようにするのは、メールや報告書の時と同様だ。

その後で、わかりにくいメール文を添削する演習の時間が設けられた。コツは、はじめ5分ほどでじっくり全体を読んで、「一文が長い」など改善点を洗い出すこと。その後の15分程度で、じっくり書き直していくと効率的だ。

その際、「情報が足りない」ものについては、ある程度自分で想定してポイントメモを作成し、書いていくといい。

最後に、ライティングのコツを説明する。

「もっとも大事なのは、読み手と目的を意識することです。2つ目は、何をして欲しいか、何をすべきかを明確に書くこと。3つ目は、送信する前にもう一度見直すことです。わかりやすい文章を書く人は、相手と一緒にわかりやすい仕事をしようとしています。そんな前向きな姿勢が表れるよう、文章力をアップさせてください」

文章でのコミュニケーションが増え、文章で人柄が表れる時代ともいえるかもしれない。コツをしっかりと身につけて、スムーズに仕事を進めていこう。

もう一歩「文章術」を学びたい方はぜひ「Q&A」もご覧ください。本内容に関するご質問や講師に聞いてみたいこと、その回答をまとめました。
https://www.r-staffing.co.jp/rasisa/entry/202008043828/

より詳しく学びたい方は「らしく学ぶ」より動画をご覧ください。
https://www.r-staffing.co.jp/rasisa/entry/202007203595/

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)

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