「仕事がスムーズに進まない」――そう思っているのなら、職場のコミュニケーションに問題があるのかもしれない。コミュニケーションが良好になれば、仕事の効率が上がり、仕事が楽しくなり、人間関係のストレスが少なくなる。「指示の受け手」として、コミュニケーションをスムーズにするためのポイントを井出元子さんが紹介していく。
なぜ、職場のコミュニケーションで問題が起こるのか
「職場のコミュニケーションがスムーズだと、仕事の効率がよく、仕事が楽しく、人間関係のストレスが少なくなります。また、プラスアルファの気付きや、やりたいことを活かす仕事ができるなど、さまざまな良い点があります」と井出さん。
職場で起こるコミュニケーションの問題は、依頼者と受け手側に別々の理由がある。それぞれの言い分から紐解いていく。
受け手側から見ると、次のような理由がある。
・依頼されている業務内容が不明、指示が不明確
・行った業務に対してリアクションやフィードバックがなく、評価が分からない
・連絡が取りにくい
・関係性が良くないため、必要な情報を得にくい
また、依頼者側から見ると次のとおり。
・依頼した内容が正しく理解されない
・質問や確認がなく、勝手な理解で進めている
・報連相がない、報連相が要領を得ない
・挨拶や言葉遣いなどの印象が悪い
これらの問題は、受け手側がコミュニケーションの工夫をすることでもかなり改善できる。その際のポイントを、次の3つの観点で説明していく
(1)指示の受け方
(2)適切な報連相
(3)信頼関係の構築
指示を受けたら仕事の全体をイメージする
井出さんは、仕事の指示を受けてから、次のフローチャートのように仕事を進めていくという。
まず大切なのは、「必要なタスクと完了までの流れがイメージできる」ということ。ただし、イメージした内容に取り掛かる前に大切なのが「すり合わせ」だ。この一手間を掛ければ、高い確率で依頼者と受け手のズレがなくなる。
もしイメージができない場合には、より多くの情報を得る必要がある。会話をしたり、質問したりしながら、情報を補足して仕事の流れをイメージしておく。
「それでも必要な情報が得られなければ、まずは得られた情報で仕事に取り掛かってみます。途中まで仕上げて一旦依頼者に確認し、ズレを修正するのです」
イメージの仕方と提案型の質問、すり合わせのポイント
流れをイメージするには、「求められていること=ゴールイメージ」を把握しなくてはならない。そのためには、5W2H(Why、When、Where、Who、What、How、How much)の情報が必要。段取りなどもイメージをしておきたい。
「30分で仕上げてほしい仕事と、今週中でいい仕事では、スケジュール感が変わります。スケジュール感がわかって初めて、最適な段取りがわかるのです」
情報が足りないときには、「提案型」で情報を得る方法が井出さんのやり方。答えを想像して、こちらから言ってみるという方法だ。
「例えば、目的を想像して『こういうものも用意しておいたほうがよろしいでしょうか』と聞きます。そうすると『それはあったほうがいいね』『今回はこういう目的だから、そこまでは必要ないよ』などと、追加の情報が得られるのです」
情報を把握したら、次にすり合わせをする。ポイントは、「理解は偶然。誤解は当然」という心持ちでいること。受け取った情報の正しさは、それを依頼者とすり合わせて初めてわかると考えたほうがいい。
「仕事を受けたら『はい、かしこまりました』だけでなく、必ず依頼されたことを確認します。すべてではなく、ポイントだけで結構です。成果物のゴールイメージ、期日や数量なども復唱しましょう。また、工程の途中で相手に確認をとる必要がある場合には、確認のタイミングも把握しておくとよりスムーズです」
報連相はこまめに行い、ビジネスマナーなどから信頼関係を構築
仕事を進めていくには、こまめな経過報告や完了報告といった、適切な「報連相」が不可欠。「1日で終わらないものは、今日終わった分の経過報告を伝えておく」「メールで用件を聞いたら、まずメール受信した旨や完了予定を返信する」といった丁寧な連絡がスムーズなコミュニケーションを生むのだ。
同じ人から複数の依頼を受けている場合には、一度の報告で「完了したもの」「途中まで進んでいるもの」「未着手のもの」などを分けて報告すると相手にも伝わりやすい。
「また、コミュニケーションをする中で、基本的であり重要なのは信頼関係の構築です。『日頃から挨拶をする』『相手の名前を呼ぶ』『笑顔で対応する』『時間や期限を守る』といったごく基本的なビジネスマナーが、相手からの信頼感、好印象に繋がります」
さらに、昨今のリモートワークでは、連絡手段を事前に決めておくことが有効。メールや電話、チャットとさまざまな連絡ツールがある中で、相手が連絡を取りやすい手段を把握しておくとスムーズにやりとりができる。さらに、リモートワークの場合は、オフィスでの業務より状態が見えにくいため、よりこまめな報連相が大切となる。
「指示の受け方」「確実な業務遂行」「適切な報連相」「信頼関係の構築」の4つがサイクルとなり好循環を生んでいく。これらがうまくいっていれば、仕事の成果にも繋がっていくはず。まずは、自分ができるところからスタートしていきたい。
より詳しく学びたい方は「らしく学ぶ」より動画をご覧ください。
https://www.r-staffing.co.jp/rasisa/entry/202101294848/
ライター:栃尾 江美(とちお えみ)