子どものころから英語が得意で、英語を使う仕事がしたい、と旅行業に携わった仲野敦子さん(47)。夫の転勤でさまざまな場所で暮らし、子どもを育てながら英語を使う仕事を見つけてきた。今年の1月に、仲の良かった夫と籍を別にしたという。これまでのキャリアとともに、今後チャレンジしたいことをうかがった。

*今回はオンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人より提供いただきました

駅で困っている外国人を助けられなかった苦い思い出

仲野さんが英語を好きになったのは、中学生のとき。中学1年生からスタートした英語学習だが、通っていた塾が楽しく、気が付けば英語が好きになっていた。

高校では英語科へ進み、学校のプログラムでカナダへホームステイ。その際は思った以上に英語が話せず、ショックを受けたのだとか。

「高校時代の地元の駅で、外国人のバックパッカーのような人を見かけました。切符を買えずに困っていたので助けてあげたかったけど、勇気がなくて声すらかけられなかったんです。それが心残りで、将来は駅に勤め、困っている人を英語で助けられたら、と考えるようになりました」

短大生のときにカナダへの交換留学プログラムに参加し、英語の世界にどっぷりと浸かった。卒業後は、駅構内にある旅行代理店に就職する。

「普段は英語を話す機会がありませんが、駅の職員の方に『英語が話せる』とお伝えしてありました。駅に外国人の方が来ると、職員の方が助けを求めて呼びに来ます。高校生のときに叶えられなかった思いを実現させている実感がありました」

結婚と子育てで退職。その後も英語を使う仕事に

好きな仕事だったが、毎日遅い時間までの勤務。将来の結婚と子育てを考えると、仕事を続けるのは難しい。24歳で結婚とともに退職し、翌年、子どもに恵まれた。

子どもが小さいうちは子育てに専念し、その後はアルバイトやパートなどの仕事。全国に転勤のある夫に付き添い、何度も引っ越しを重ねた。さまざまな場所で暮らすことができ、楽しく過ごしたそう。それだけではなく、自己投資の時間として、仲野さんは勉強を続けた。その結果、英検準1級を取得。

「私の地元である静岡に戻ってきたあと、子どもの進路選択があり、中学校は私立を選びました。夫に転勤があったら単身赴任にしてもらおうと思っての選択ですが、結果的に、その後の転勤はありませんでした。私がちょうどそのとき働いていたのが、観光協会です」

駅の中にある観光協会で、非常勤職員として働いた。「富士山に登りたい」「お茶畑を見に行きたい」といった観光地への案内から「新幹線に携帯電話を忘れてしまった」などのトラブル対応まで、外国人旅行客に英語で対応した。

「英語での会話自体も楽しかったです。また、観光した帰りに『行ってきたよ』と報告してくれる方もいて嬉しかった。SNSで繋がったり、その後情報交換したりすることもあったし、何年か経ってからまた来てくれる方もいました」


▲観光協会で繋がった美容師さんに長い髪をバッサリ切ってもらったことも。現在も通い、8年目となる

楽しい職場だったが、非常勤職員が自分一人しかおらず、他の方は派遣スタッフやパート勤務だった。休むときの代わりとなるメンバーが周囲にいなかったため、子どもが体調を崩したときなど、穴をあけないようにするのが大変だったそう。

静岡は実家も近かったが、親に頼らずに子育てがしたかった。それは、カナダに留学した際、親の助けを借りずに夫婦で育てるのが当たり前、という文化を感じたから。困ったときには夫に会社を休んでもらうなどして、なんとか乗り切ったという。

夫に頼りきりの人生。自立がしたくて離婚を選んだ

観光協会の契約が6年で終わり、病院の受付などを経て、現在は派遣スタッフとして文具メーカーに勤務。プラモデルの販売に必要なライセンス契約を、海外の自動車メーカーと交わす業務を担当している。

「メールが中心なので英語を話すわけではないものの、自分の得意なことで人の役に立てているのが嬉しい。英語をそのまま理解できるのは世界が広がっている感覚があります」

大好きな英語を使う仕事に携わり、一人娘は家を離れ大学生として頑張っている。生活に不満はなかったが、行動派の仲野さんは新しいことにチャレンジがしたかった。

「精神的にも経済的にも、子どものままで結婚してしまった気がします。何でも欲しいものは夫に買ってもらったり、頼りっぱなしで生きてきました。車の運転も夫がしてくれるので、私はペーパードライバーのまま。だから、自立したい、という思いが募って……。留学するときのように、チャレンジがしたかったのかもしれません」

夫婦仲は良かったが、自立したくて離婚を申し出た。夫も悩んでいたが「あっちゃんがやりたいなら」と最後には承諾してくれた。娘も「ママの生きたいように生きればいいよ」と、応援してくれた。

「今は寂しくて泣くことも、後悔することもありますが、『自分の仕事だ』と思えるような仕事に就いて、安定した収入を得て自立したい。今は金銭面のことから自分の実家に住まわせてもらっているので、経済的に余裕を持ってひとり暮らしをするのが夢です」

今すでに、夢へと向かい始めている。簡単ではない環境をわざわざ選んで自分の成長に賭ける姿勢は、一度しかない人生を、仲野さんらしく染めてくれるだろう。

仲野さんの趣味は、読書。特に英語の本が好き

仲野さんは、アメリカの元ファーストレディの大ファン。自伝が発売されてすぐ、翻訳を待てずに原書を輸入して読んだという。「ご主人もお子さまも大切にしていて、生き方が強くてかっこいい。英語で直接読めたほうが、本人の感覚がダイレクトにわかる感覚があります」

他にもお酒を飲まない生き方を指す本や友人にもらった本が手元に。それ以外の本は、離婚の際に手放した。「また手に入るから」と言う仲野さんは、ミニマムに生きていきたい、と語った。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)

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