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【イベントレポート】効率化・評価UPのロジカルライティングとテクニカルライティング

株式会社リクルートスタッフィングが運営するITSTAFFINGでは、弊社に派遣登録いただいている皆さまのスキル向上を支援するイベントを、定期的に開催しています。

2019年1月18日のイベントでは「仕事を効率化し、評価を高める ロジカルライティングとテクニカルライティング入門講座」を開催。

仕様書や議事録、連絡メールなど、エンジニアも文章と無縁ではいられません。相手にわかりやすく、自分の考えが伝わりやすい文章を、どう書けばよいのか。テクニカルライティングのプロフェッショナルである高橋慈子さんを講師にお迎えして、わかりやすい文章の考え方から実践的な書き方まで、教えていただきました。

■今回のイベントのポイント
・自分の文章の弱点をチェックしよう
・わかりにくい文章の問題点を探る
・ロジカルシンキングを活用して組み立てる

【講師プロフィール】
高橋 慈子さん
東京農工大大学卒。技術系出版社を経て、テクニカルライターとしてフリーランスで取扱説明書の作成に関わる。1988年テクニカルコミュニケーションの専門会社として、株式会社ハーティネス設立。同代表取締役。企業の取扱説明書やマニュアル制作のコンサルティングや人材育成に関わるほか、大妻女子大学、立教大学、慶應義塾大学 非常勤講師なども務める。情報処理学会ドキュメントコミュニケーション研究会幹事。 著書に『技術者のためのテクニカルライティング入門講座』(翔泳社)、『人より評価される文章術』(共著・宣伝会議)、『SEの文書技術』(日経BP)など。

自分の文章の弱点をチェックしよう

今回のテーマは文章表現。いつもと少し違って、席の近い参加者同士が互いの文章の良い点を評価し合うなど、実際に文章を通じてコミュニケーションを図る試みも行われました。

まずは、自分の文章力を再認識するための自己評価シートの記入からスタート。10項目に1から4の点数をつけ、カテゴリごとの平均点を算出し、これにより、自分の課題が見えてくるそうです。

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▲自分の文章力の弱点をさぐる自己評価シート

ここで確認した弱点を克服する取り組みにより、自分の文章力を改善し、見直しをしていくとよいそうです。また、自分だけでなく、他の人の文章をレビューする際は「この人はこの項目の中のどこが苦手なのか」を見つけ出すとよいとのこと。アドバイスをすること自体が、自身の文章力向上にもつながるのだそうです。

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▲自己評価シートの点数により、自分の弱点を把握しておくことが大切。まずは足りない部分を磨いていく

現在、現場で求められているライティングスキルは、以下の3つだそうでうす。

・スピード
書くスピードでなく、読む人が短時間で内容を把握できることが重要。相手の時間を奪わない。

・簡潔で、完結している情報
目的に合わせた情報を盛り込む。前のメールなど、遡ってみないと分からないのはNG。

・英文にしやすいシンプルな和文
ビジネスの海外展開、職場スタッフの多国籍化に対応。長く、係り受けが複雑、主語述語がハッキリしない文章はNG。

文書作成は仕事の中で時間を使うものであり、生産性を低下させている要因の一つです。ライティングのスキルを磨くことで業務そのものの品質向上に取り組むことができ、ひいては個人や組織の評価を高めることにつながるそうです。

わかりにくい文章の問題点を探る

演習として、わかりにくい文章を直していきます。例として示されたのは「用語の説明文」と「社内メール文」の2つです。

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▲わかりにくい説明文の例。この文章のどこがわかりにくさの原因なのかを考え、他の人と意見を共有する

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▲わかりにくい社内メール文の例。こちらも同じく、わかりにくさの原因を探る

この2つの文章について、どこがわかりにくさの原因となっているのかを、参加者同士がグループで話し合い、考えを共有しました。参加者から出てきた意見には次のようなものがありました。

説明文のほうで挙げられた原因は、次のような意見がありました。

一文が長い
冗長(係り受け等)
用語が難しい
用語が統一できていない
クラウドベース
「することが可能になる」
クラウドコンピューティングとは
否定で始まるのはよくない

メールのほうで挙げられた原因は、次のとおりです。

「打合せ」「グループミーティング」等の用語不統一
ビジネス表現ではない(口語)表記がある
何が問題なのかが文面から読み取りにくい
誰宛てなのかがわからない
ミーティングの日程調整が主題ではないのか?
件名が内容と合致していない
文章の丁寧さの統一
日程の候補を載せたほうがよい
返信がいつまでに必要かわからない
所属とフルネームが必要なのでは?

こうして、いろいろな経験、立場の人たちが複数で目を通すことにより、自分では気が付かなかった問題点にも気づくことができました。

ロジカルシンキングを活用して組み立てる

よく「ロジカルシンキング」という言葉を耳にしますが、ロジカルシンキングとは、誰にでも理解しやすく、納得できるように組み立てられた思考のことを指します。ただし、「誰にでも」という部分について高橋さんは「受け手から見た筋道であることが重要」だと強調します。なぜなら、書き手から見た筋道では、押し付けになりやすいからです。

ロジカルシンキングは、考えを「見える化」するもの。ロジカルシンキングを行うことで、意志疎通が迅速になり、さまざまな業務の効率化が図れます。

では、どのようにロジカルシンキングを磨けばよいのでしょうか? 高橋さんのお勧めは、ロジックツリーで構造を整理することだそうです。

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▲上図のように全体のロジックから筋道をつけていく。付箋紙を使って、書き出して、貼っていくなど、ホワイトボードを使うのも手。

これを議事録の文章作成に応用すると次のようになります。

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▲議事録の書き方はさまざまですが、たとえば上図のように、話し合ったテーマごとにトピックで分ける方法ではなく、決まったこと、未決のことに分けて記録するのもやり方の一つ

こうした実践手法をふまえ、先ほどのメール文のリライトをしてみることになりました。文章のタイトルや件名は、あいまいな表現でなく、具体的なキーワードを入れるのがポイント。そして本文もわかりやすく整理します。事例のメールの背景は次のようなものとします。

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▲メール送信の背景。ここからグループミーティング参加者全員に同報通知(CC)しているのではないか、と推察し、宛名を「グループミーティング参加者各位」とする参加者もいた

この背景をもとに、参加者が各自で書いたメール文を、グループのメンバーと互いに評価し合いました。メールタイトルに要返信の旨を記載したり、次回グループミーティングの開催日時の件と、納期確認の件を明確に切り分けて小見出しを付けて書いたりと、皆それぞれに工夫していて、どれもわかりやすいと感じました。

そして最後に、わかりやすい文章作成の実践的な手法として、重要な情報を見極める、キーワードを盛り込みながら書く、多めに文章を書いてから削る、パラグラフ単位で組み立てる、リード文(要約)を書くなど、いろいろな練習方法を教わりました。

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▲重要な情報を見極め、キーワードを盛り込みながら書くことが大切。多めに文章を書いて、後から削るというのもテクニックの一つ

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▲パラグラフ単位で文章を組み立て、パラグラフ同士や、パラグラフ内の文と文とのつながりを考える習慣を身につけると良い

高橋さんの推奨するもので、最もすぐに実践できそうなのは、「筋トレと一緒でたくさんの文章を書く」というもの。なかでも日頃から受け手のことを意識して文章を書くことができれば、特別な訓練をする時間の無い方でも、文章力を向上させることができそうです。