がんばって働かなきゃ。がんばって子育てをしなきゃ。家族のことを最優先に考えなきゃ……。じゃあ「自分のこと」は? 人生の時間は有限だ。でも忙しい日々に流されていると、多くの時間が過ぎ去ってしまう。吉野麻木さん(44)が、あるきっかけから、ひとつの大きな決断をしたのは4年前。それは何よりも「家族のため」を思って行動してきた彼女が、自分自身の人生を見つめ直しはじめた瞬間だった。

“早く帰らなきゃ!”が“帰りたい”に変わるまで

「最近、仕事を終えると“早くお家に帰りたいな”と思えるようになったんですよ。なんか、不思議ですよね。今まではどちらかといえば、“帰らなきゃ!”という焦りだったんですけど」

吉野さんは2012年から、現在の職場である日本マイクロソフト株式会社で働いている。週5日、フルタイム勤務の派遣スタッフだ。

自宅で吉野さんの帰りを待っているのは、小学6年生の男の子と、小学1年生になった女の子。下の子が昨年、保育所を卒業。日々忙しく働きながら、送り迎えをする必要がようやく、なくなった。

ほんの少しずつ、自分の中で余裕ができてきたのかもしれない――そう話す彼女、実は同社で働いてきたこの5年の間に、人生の大きなターニングポイントを迎えていた。

自分の人生、このままでいいの? 大きな決断のとき

結婚・出産をしてからずっと、家族のことを最優先に考えてきたという吉野さん。仕事と子育て、そして家のことをこなす、忙しい毎日を送ってきた。そんな彼女の気持ちが変わりはじめたのは、2人目の子が生まれてからだったそうだ。

「あるきっかけから、だんだんと夫婦の間でお互いの意思が通じなくなってしまいました。大きく言えば価値観の違いなのかもしれませんが、理解しあえないまま夫婦を続けることに、疑問を抱いて。

ふと、自分の人生の最期のことを考えてしまったんです。この先も私、この生活を続けていくのかな、って。そんなとき、生まれてきた娘がとっても明るい性格で。この子をこのまま健やかに育てるためにも、子どもたちはもちろん、私自身も幸せじゃなきゃいけないな……と思うようになったんです」

そして吉野さんは、シングルマザーになることを選んだ。今から4年前のことだ。

家族の生活が最優先、でも仕事はずっと続けてきた

仕事自体は、結婚してからも、出産後もずっと変わらず続けてきた。

「20代で結婚、30代で出産を経験して、はじめは専業主婦もいいかなと思って一度仕事を辞めました。でも実際に子育てをはじめてみると、ずーっと子どもとだけ一緒に過ごすのも大変で(笑)」

結局、彼女は派遣スタッフとして働きながら2人目の産休・育休も取得し、仕事を続けている。あくまでも家族を第一に考えつつも、社内SEやOA事務、ヘルプデスクなど、職場や職種を変えながらスキルアップしてきたという。

しかし離婚することを決意してから、仕事に求めることが変わった。

「働く環境が変わると、自分自身にもかなり負荷がかかります。だからもう少し自分を大事にすることを考えつつ、子どもたちと3人、地に足をつけた生活をしていくためにも、同じ職場で長く働きたいと考えるようになりました」

少しずつ生まれるゆとりの中で、次の幸せを見つけたい

そこで吉野さんが就業を決めたのが、日本マイクロソフトだった。役割は、データアナリスト。さまざまな商品の販売データなどを集計・分析するのが主な仕事だという。

「『Surface』発売当時から、レポーティングを担当させてもらっています。全国のリテーラー(販売店)から上がってくるデータを真っ先に扱うので、販売動向を一番に知ることができる。それが面白いです」

新しい生活をはじめて4年。もちろん、仕事と家庭の両立は大変なこともある。それでも吉野さんは最近になってようやく、心の余裕ができはじめたのを感じている。

「少し余裕ができて、ちょっとしたことを楽しめるようになった気がします。子どもとの会話だったり、たまに美味しいものを食べに行くことだったり……。うん、今は楽しく過ごしていますね」

2人の子どもの成長も、吉野さんにとっては楽しみのひとつだ。

「兄妹で歳が離れているので、お兄ちゃんがよく妹の面倒をみてくれるんです。私が娘に振り回された後、キッチンに立っていたりすると、そっと横で洗い物を手伝いながら学校の話をしてくれたり……。そんなとき、息子の成長を感じます。娘はまだまだワガママなさかりですが(笑) もう少し大きくなったら、3人でハワイ旅行にでも行きたいですね」

忙しい日々に追われて、何をしたいか、自分がどうしたいのかを深く考える機会がないまま、長年過ごしてしまったという吉野さん。きっとこれから、新しい生活の中に生まれはじめたゆとりの中で、たくさんの「自分自身の幸せ」そして「家族の幸せ」の種を見つけていくのだろう。

仕事の合間のリフレッシュは、スマホで海外ドラマ

休憩時間には、スマートフォンで海外ドラマを見たりして気分転換している。イヤフォンはそのときに使用するもの。社内に個室のブースがあり、一人になりたいときに利用している。

「何か楽しみにしているドラマがあるというわけではないんです。BGMみたいな感じで、なんとなく流し見しているんですよね。ちょっとした時間でリフレッシュしています」

一人で休憩することもあれば、同僚と束の間のおしゃべりを楽しんだりすることもあるのだとか。

仕事中は、ヘアクリップで髪をまとめてデータの集計・分析に集中する。

ハンドクリームも欠かせないが、自分で買うよりも周囲の人たちからもらうことが多いそう。今使っているのも、贈り物としてもらったロクシタンだ。

ライター:大島 悠(おおしま ゆう)
カメラマン:福永 仲秋(ふくなが なかあき)
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