「とにかく介護の仕事が楽しい。強いやりがいを感じる」と話す南雲由夏さん(36)。カラッとした明るさで、初めて会う人をもすぐにリラックスさせる雰囲気を持つ。きっと介護の現場でも、利用者に明るさを与えているのだろう。そんな南雲さんにも、介護職に就けない時期や、「辞めたい」と思った経験があるという。いくつもの苦労を乗り越え、一般社団法人アクティビティサポートを興すまでに至った経緯を伺った。

原体験は、子どものころに経験した介護ボランティア

南雲さんの介護への思いは、小学生のころにさかのぼる。

「もともと介護に興味があり、小学校6年生のときに介護のボランティアに行ったんです。その時に、排泄介助をしていた職員の方が、いやな顔ひとつせず、排泄物の入ったバケツを持って歩いている。『どうして、人のうんちを触れるんですか?』と聞いたら『慣れだね』とさわやかに話していて、子どもながらに『かっこいい!』と思いました」

ただし、すぐさま介護職を目指そうと思ったわけではなかった。中学生のころは保育士にも憧れ、職場体験に行ったことも。ただそこで、何人もの子どもたちを一度に相手にするより、1対1で向き合うほうが喜びを感じることに気が付いた。

高校卒業後の進路を選ぶとき、介護の勉強をしようと心に決め、そのまま介護の道へ。南雲さんは介護の魅力を次のように語る。

「介護を通して、人生を教わっていると感じます。どんな生き方をすると、どんな終わり方になるのか、先輩が身をもって教えてくれる。私自身は、これまでの日本を築いてきてくださった方々に対して恩返しをしたいという気持ちでいます」

辛さもあるけれど、やはり介護の仕事がしたい

キャリアのスタートは、楽しいものだった。体力的に大変なこともあるが、仲間が支えてくれた。「笑いすぎて廊下でひっくり返るくらい楽しい職場でした」と言う。

「当時は介護の技術もなく知らないことばかり。20歳くらいの若造だったので、利用者の方に『タメ口』で話していました。先輩も愚痴を聞いてくださるなどとても居心地の良い環境で、恵まれていました」

ところがその後、出産のタイミングで、介護の仕事を続けるのは難しくなった。拘束時間が長いため、家庭との両立は現実的ではなかったのだ。子どもが小さいうちは派遣スタッフやパートとして働き、2人の子どもがともに小学校に通うようになった頃、念願の福祉の仕事に戻った。

「シングルマザーだったので、夜勤勤務のない管理者業務などを中心にしていました。さらに、並行して現場にも。デイサービスや特別介護老人ホームで働きながら、やりがいを感じてはいました。ところが、夜勤などで体力的にもきつくなり『辞めたい』と思うようになって……」

思い悩んでいたころ、群馬県介護福祉士会の仲間と出会い、後に起業するきっかけとなった。

介護保険の範囲外でも、手助けができたら

介護保険内で利用できるデイサービスなどは、自由度が少ないという課題がある。例えば、1時間だけ利用するといった選択肢はなく、6時間なら6時間居続けなくてはならない。また、デイサービスの送迎の帰りに「ついでにお米を買って帰りたい」という利用者の希望があっても、手助けはできないことになっている。

「外食や買い物に行きたくてもひとりで行けないので、余計に家にこもってしまう。そこで、病院の受診や手続きといった事務的なことから、楽しみである海外旅行まで、保険外でお手伝いをする一般社団法人を立ち上げました。東京にある本部の支部というかたちでもあります」

起業をするにあたり、介護福祉士会の人たちのアドバイスに勇気づけられた。同時に、強い志をもって介護に向き合っている人たちを見て、沈んでいた気持ちが前向きになったのだという。

介護保険外のサービスをスタートして、さまざまな場面に遭遇した。中でも、大切な場面に付き添ってあげられるのは無上の喜びだ。

「ご夫婦で施設に入られていた方で、すれ違うたびにハグやキスをしていたおふたり。旦那様がお亡くなりになった時、奥様は1分と立っていられない容体でした。ご家族は葬儀の当日お忙しくなりますので、奥様の食事やトイレなどのお世話はできません。そこで私が付き添いをして、奥様も車いすで参列することができたのです。棺に横たわる旦那様の横に立ち、何度もキスをして『ありがとう』と言いながらお別れの挨拶を……。本当に、この仕事をしてよかったと思いました」

今後もさまざまな方の要望に応えながら、シニアの方が生き生きと暮らせるように貢献してきたいという南雲さん。「アクティブな方が多いんですよ」と、ひとりで居酒屋を切り盛りする女性の話も教えてくれた。南雲さんなら、シニアの方々を手助けしながら、アクティブに活動できる可能性をどんどん引き出していってくれるのだろう。

人を笑顔にするのが大好き

疲れた時や、何かを乗り切りたいとき、通勤中の車内など、気分転換には邦楽ロックを聴く。ライブにもよく足を運ぶという。朝が弱いので、スマートフォンの目覚まし時計で好きな音楽を数分ごとにかけ、徐々に目を覚ますのだとか。起きられないうちは子どもが止めてしまうというエピソードも、南雲さんらしくチャーミング。

予定を管理するのに欠かせないスケジュール帳は、大好きなスヌーピーをセレクト。予定以外にもアイデアや気づいたことなどを書き込むことも。

普段左腕に着けている時計は、昨年ケアマネージャーの合格祝いとして大切な人に買ってもらったもの。

極めつけは、ブラウス。「ホリデーインまえばし」というイベントで、「ブルゾンなぐも」と称して、「ブルゾンちえみ」のパロディを披露したときの衣装だ。「with B」担当の前橋青年会議所の若手男性2人とともに、練習を重ねたという。地元に合ったネタで内容を考えた甲斐あって、会場は大ウケ。以降さまざまな場所にお呼ばれするというから、クオリティの高さがうかがえる。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)
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