文章を書こうとしても「どう書けばいいのかわからない」と思うことはないだろうか?考えれば考えるほど、なぜか路頭に迷ってしまうもの。そんな方におすすめなのが「編集の文法」を覚えてしまうこと。伝わる文章にするためのルールやテクニックのことで、ひとつひとつは難しくない。『才能に頼らない文章術』の著者、上野郁江さんがわかりやすく解説する。

講師:上野 郁江さん(エディトリアル・コンサルタント / 株式会社エディットブレイン代表取締役)

人や会社を編集するエディトリアル・コンサルタント。その人の持つ強みや、会社の独自性を発見して、情報発信についてアドバイスする。編集スキルを「編集の文法」として体系化し、現在は同手法の内容を元に、「人に伝わる」文章の書き方支援、編集部構築支援プログラムなどを提供する。また、複雑に絡み合う事象を編集者の視点で可視化する「編集思考」を提唱。企業の事業戦略にそった情報発信の提案や新規事業支援も手掛け、編集スキルの可能性を社会に広げている。一般社団法人クリエィテブ思考協会理事。慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科研究員。

「伝える」と「伝わる」の違いを意識して

「文章力は才能の部分もあるが、編集執筆力に才能は関係ない」という講師の上野さん。上野さんがまとめた編集の文法は、才能がなくても使いこなせるという。

上野さんはまず、「伝える」と「伝わる」の違いを解説する。

「AさんがBさんに『○△□』を伝えたとします。Bさんが、『○△□』と認識するかもしれませんが、『○■■』と認識する場合もある。これが、私の定義する『伝える』状態です。一方で、Bさんにしっかりと『○△□』と理解され、次の行動につながるところまでが『伝わる』だと捉えています」

この場合、「伝える」主体はAさん、「伝わる」主体はBさんとなる。つまり、「伝える」と「伝わる」は、「相手が理解したか、理解していなかったか」で分かれる。さらには、「伝わる」文章には「誰に何の目的で何を伝えるか」という目的がある。

「誰に」を決めると、リード(文章の冒頭)や文体が決まり、「何の目的で」が決まると、目標達成への要素(信頼・共感性)を検討できる。「何を伝えるか」がわかると、目標達成に必要な情報を考えて構成を検討できるのだ。

編集の文法「レベル1」で文章の基礎力を上げる

いくつかある編集の文法を厳選して紹介(そのため、飛び飛びになる)。まずは「編集の文法2」の「主語と述語は近くに置く」というルール。

NGとされている文章例では、主語「総務省では」のあとに、長々とイベント内容を説明する文章が続き、述語「開催します。」が最後につく。もっとシンプルに、「総務省では、……なイベントを開催します。」と結んでから、「たとえば、」と具体的な内容を書いていくと、かなり締まった読みやすい文章になる。

次の「編集の文法6」は、「冗長な表現は避ける」。「~であるのだから」を「だから」とし、「覚えることができる」を「覚えられる」、「事前に準備をすること」を「事前準備」とするなど、すっきりとした表現に変える方法が説明された。

「編集の文法9」は「表記は揺れないように気を付ける」。「編集の文法11」は「誤字脱字や固有名詞のミスはゼロにする」というもの。いずれも、文章の質を上げるために気を付けたいポイントだ。

レベル1を押さえたら、「レベル2」の文章表現力アップへ

「編集の文法12」は、「あいまいな文章には説明を加える」。

「あいまいな言葉とは何でしょう。たとえば、カタカナの言葉。『トレーサビリティ』に括弧で『(生産履歴追跡)』と付け足したり、『SEO』という言葉に『検索キーワードでウェブの露出を狙うSEO(Search Engine Optimization)』と説明を加えたりしました。新聞などでよく使われているので、気に留めてみるとよいでしょう」

「編集の文法13」は、「文章中に登場する単語が一貫した意味で使われているか」。「休憩所」という言葉が、他の文では「休憩室」になっているNG例などが紹介された。ほかに、働いている人を「スタッフ」「メンバー」などと、違う名称で書いてしまうのも混乱のもとになる。

「編集の文法14」の「『これ』『それ』などの指示代名詞を多用しない」、「編集の文法21」の「接続詞は多用しない」、「編集の文法23」の「文末表現に変化を付ける」などは、機械的に覚えて注意したいところ。文末とは、文章の最後の「です」「ます」などのこと。これが何度も連続しないように気を付けよう。

また、「編集の文法22」の「声に出したときにリズムがあるか」も、助詞の「の」や、同じ言葉を連続して使わないという内容で、すぐに覚えられるルール。同じ表現が続くと、リズムが悪くなるためだ。

「『編集の文法18』は、『読者を共感させる文章表現にする』です。NGの例は60代の方に書いている前提で、『LINEを使ったことはないでしょうか』と書かれています。OKの例では『お孫さんとのやり取りでLINEを使ったことはないでしょうか』と、より読み手の意識が向くようにしています」

最後に押さえておきたい「レベル3」の文章構成力

レベル3となる「編集の文法30」では、「文章全体の論理構造を明確にする」として、例文を紹介した。

「タイトル(サブタイトル)」「見出し」それぞれが階層構造をなすよう、タイトルの抽象度よりもさらに具体的にして見出しを作っていくとよいという。

タイトルに対して「Why So?(なぜそう思うの?)」が小見出しになり、小見出しに対して「So What?(だから何?)」がタイトルになるといい。

「ここまで紹介した方法で、文章力がみるみるアップしていくはずです。最後にもうひとつ、文章練習法をお伝えします。世の中にはお手本となる文章がたくさんあるので、目的に合っていて、自分がわかりやすいと感じたお手本を選びましょう。その文章で、そこに書いてある要素を洗い出し、真似しながら練習してみるといいでしょう」

文法のルールをしっかりと押さえながら、構成を真似して書いていく。それを繰り返すことにより、見違えるような文章が作れるようになるだろう。「伝わる」文章が書ければ、仕事の効率が上がり、よい成果も付いてくるはず。コツコツと練習を重ねていきたい。

より詳しく学びたい方は「らしく学ぶ」より動画をご覧ください。
https://www.r-staffing.co.jp/rasisa/entry/202104235660/

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)

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