エンジニアでなくても知っておいたほうがいい、テクノロジーの話をお届け。名前は聞いたことがある、そんなITトピックを簡単に解説します。
『DXを導入する/推進する』という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。いったいどんな取り組みで、なにを目指している?身近な例を使って解説します。
後半は『エンジニアスタイル』*からの一部転載で、DXと向き合う考え方をご紹介します。
*リクルートスタッフィングが運営するエンジニア向けサイト
最近よく耳にするDXとは
DXは「デジタルトランスフォーメーション*」の頭文字をとったものです。
*Digital Transformation:Degital X-formation
「会社にDXを導入します」「自治体のDXが進む」などと聞いたら、どのようなことを想像しますか?
書類のペーパーレス化や、署名の電子化、オンライン会議などを思い浮かべる方もいるかもしれません。ですが、これらはDXではありません。
これらは業務を効率化するためのデジタル技術を導入する段階で、DXの下準備として位置づけられています(「デジタイゼーション」と呼ばれる)。
経済産業省はDXを以下のように定義しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタルを活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
ここからわかるDXのポイントは3つ
・データとデジタルを活用して、より便利になるよう変えていく「取り組み」
・その取り組みは、企業全体、社会や暮らしにまで及ぶ「変革」
・変革し、「競争上の優位を確立すること」を目指す
ペーパーレス化だけでは、まだDXを達成できないことがわかります。
一度は使ったことがある!?DX具体例
身近な「変革」としては、アメリカに本拠地を置く、おなじみの“ネット通販サイト”が有名です。
もともと本をインターネット販売するサイトでした。ネット通販があまり浸透していなかった時代に、物流や販売にデータとデジタルを活用し、より利用しやすいサービスに改良することで、世の中の「本の買い方」を変えました。
現在では本以外にもさまざまなものを扱う一大市場として成長し、「買い物」のあり方そのものに「変革」を起こしたと言えるかもしれません。
ほか、スマートスピーカーの開発やクラウドプラットフォームへのサービス展開により、さらなるデータ収集を行い、競争上の優位性を確立していると言えるでしょう。
社会や暮らしがより便利になる、DX。そんな世の中の動きについて、もう少しだけ詳しく知りたいと思った皆さんのために、『エンジニアスタイル』から、解説記事を一部抜粋して、再編集しました。ぜひご覧ください。
企業のDXへの取り組みとは
冒頭の定義であるように、DXでは「変革」という言葉がキーワードになります。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)による「DX白書2023」では、DXの推進にあたっては次のことが重要だとされています。
「顧客や社会の問題の発見と解決による新たな価値の創出」と「組織内の業務生産性向上や働き方の変革」という二つのアプローチを同時並行に進めること
このように、一言でDXと言っても、社会など組織外の価値を生み出す取り組みと、組織内の取り組みの両面があると考えられます。
そして、DXを実現するには、下図のように3つの段階があるとされています。
出典
経済産業省:デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会(中間取りまとめ)
キャリアと併せて知っておくべきこと/備えておくべきこと
DXにITエンジニアとして関わることを考えると、「支援する立場」と「主導する立場」に大きく分けられますが、ここでは「支援する立場」についてご紹介します。
■支援する立場
企業がDXに取り組むとき、ITに疎い経営者であれば、何をどのように進めればよいのかわからないこともあるでしょう。そんなときに経営者が頼る相手として、ITに詳しいエンジニアが想定されます。つまり、経営者のようなDXを主導する人を「支援する立場」からの参加です。
DXの実現には、新しい技術の習得や導入が欠かせません。エンジニアが「ITの専門家」という立場で参加している場合、最新の技術トレンドを追うだけでなく、組織全体を幅広い視野で見渡して課題を発見することが求められます。
実際の課題に対して、どのような技術が使えるのか、世の中でどのような取り組みが進められているのかを知っておくと、その組織のDXに貢献できる可能性があります。
今回の抜粋はここまで。「DX」についてもっと知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
サクッとわかるITトレンドの解説
増井 敏克さん
増井技術士事務所代表。技術士(情報工学部門)。情報処理技術者試験にも多数合格。ビジネス数学検定1級。「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピュータを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や、各種ソフトウェアの開発、データ分析などを行う。著書に『基礎からのプログラミングリテラシー コンピュータのしくみから技術書の選び方まで厳選キーワードをくらべて学ぶ!』(以上、技術評論社)、『IT用語図鑑[エンジニア編]』、最新刊には『iPhone1台で学ぶプログラミング 日常の問題を解決しながら、論理的思考を身に付ける本』(翔泳社)などがある。