Excelの困りごとを解決するこのコラム。初回は「入力済みの式を壊してしまいそう…」について。Excelに関する質問も募集中です。抽選で、マンガで読むExcelの教科書をプレゼント。詳細は記事のさいごに。
入力済みの式を壊してしまいそう…という不安を解消
他の方が作ったシートに入力する作業が多いんですけど、すでに入っている式などを壊してしまうのがこわいんです。なんか変なエラーが出てしまったとき、自分では直せなくて。
Excelに関するご相談をうかがっていて、これと同様のお悩みを本当に頻繁によく聞きます。
しかしそんなに不安に思う必要はありません。このような状態を克服するには次の5つのスキルを身につけておけば安心です。
・可能なら、式が入っているセルに色をつける
・式が入っているセルを保護して、入力不可にする
・入力されている式を解読できるようになる
・エラー値をなんとなく理解する
それでは1つずつ見ていきましょう。
1:どのセルに式が入っているか確認できる
「式を壊してしまった」という状況は、要は「式が入力されているセルに何かを入力してしまった」という状況です。そのようなミスを防ぐには、「式が入っているセルはどれか、あらかじめわかるようにしておく」という対策が有効です。
そのためにまず「式がどのセルに入力されているかを確認する方法」をご紹介します。
■式がどのセルに入力されているかを確認する方法
「数式の表示」機能を使う
ショートカットCtrl+Shift+@
通常は、セルに式が入力されている場合、その式の結果がセルに表示されています。この機能を使うと、セルに入力されている式がそのまま表示されるようになります。
2:可能なら、式が入っているセルに色をつける
次に、「可能であれば式が入力されているセルに色をつけておく」という対策です。シンプルですが、「式が入力されているセルに何かを入力してしまうミス」を防ぐためによく取られている方法です。
式が入力されているセルが大量にある場合、一つずつ色をつけていくのでは大変です。このような作業をラクに済ませたいときは「ジャンプ」機能を使います。
■式が入っているセルに一括で色をつける方法
「ジャンプ」機能を使う
ショートカットCtrl+G
ショートカットを押すと「ジャンプ」という画面が出てきます。「セル選択」→「数式」を選択して「OK」。すると、シート内で式が入力されたセルが一括選択されます。この状態で、選択されたセルのいずれかの上で、「右クリック」→「書式設定で塗りつぶし」。どのセルに式が入っているのか視覚的にわかるようにしておくことで、そのセルには入力しないように気を付ける…という、既存の式を壊さないための一つの対策です。
3:式が入っているセルを保護して入力不可にする
さらに、「シートの保護」機能を使って、式が入っているセルは編集不可能な状態にしておくことも式を壊さない対策としてよく行われます。
4:入力されている式を解読できるようになる
他人が作ったExcelファイルを使ったり引き継いだりする際にも必要になるのが、「式を解読する」能力です。例えば次のような式がセルに入力されていたとしましょう。
「SUMIFS関数を見たこともない」という状態では、もちろんこの式が何をやっているのかさっぱりわかりません。知らない関数に出会ったら、まずはネット検索でその関数について調べましょう。
その上で、この式は次のように変換しながら解読するとわかりやすいです。
と言った具合に関数の引数を一つずつ慎重に読み解きながら、何をやっているのかを探っていきます。
■式を解読するポイント
・ポイント1
「!」は「シートの」と訳します。絶対参照の「$マークの意味」なども押さえておきましょう。
・ポイント2
この解読において大事なのが、「この関数はどのセルを参照しているのか」という確認です。そこでよく使われている便利なショートカットがF2キーです。「他のセルを参照する式が入力されたセル」を選択した状態でF2キーを押すと、その式が参照しているセルに色がつきます。これは同一シートのセルを参照している式に限られますが、一目でどのセルを参照しているかがわかるようになります。
・ポイント3
「参照元のトレース」機能では、そのセルはどのセルを参照しているかを確認することができます。「参照先のトレース」機能では、そのセルを参照しているセルはあるかどうか確認することができます。このような機能を使いこなしながら、セルに入力されている式を解読していくこともあります。
5:エラー値をなんとなく理解する
Excelの式に何らかの問題がある場合、その式が入ったセルには「エラー値」というものが出ます。このエラー値がどんな問題を示しているものなのか、ざっくりとでも把握しておくと原因の究明に役立つことがあります。
#N/A
VLOOKUP関数の使用時に多発します。第一引数の検索値が検索範囲で見つからないときに出てくるエラー値です。XLOOKUP関数ではそのようなケースの戻り値も指定できるようになり、大変便利になりました。
#DIV/0
構成比や前年比など、割り算を入力するセルで多発します。割り算の分母がゼロや空白になっていると出てくるエラー値です。
#REF!
参照していたセルが削除された、などのケースで多発します。「式を壊してしまった」というケースで一番怖いのがこのエラー値です。式が入っていたセルではなく、その式が参照しているセルを削除してしまったケースであるため、このエラー値からはかつてどのセルを参照していたのかがわからず修復が不可能に。列や行の削除は安易にしないように注意することが大切です。
#NAME?
関数のスペルミスなどにより、表示されます。関数のつづりを確認してみましょう。
#VALUE
足し算などの式で、参照してるセルに数値以外のデータが含まれているときなどによく見かけます。
さいごに。バックアップを取っておくことも大切
以上、Excelの式を壊さないための対策、また万が一何かを間違えてしまってエラー値が出てしまった際に備えて式の読み方やエラー値の概要などをお伝えしてきました。もう一つ大事な発想として「バックアップ」を取っておく、というものもあります。
一番簡単な方法としては、Excelファイルのコピーを作っておくということです。コピーを取っておけば、万が一そのExcelの中身を壊してしまってもそのコピーがあれば安心、というわけです。
今回お伝えしたような内容を覚えておけば、人の作ったExcelを壊してしまう…といったことに過度な不安を抱くことはなくなります。是非こうした基本を押さえて、安心してExcelを扱っていただきたいと思います。
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