自分で考える力を日常生活のなかで養うための、ちょっとしたヒントをお届けするこのコラム。前回のコラムにありました「クリティカル・シンキング」という言葉、ビジネスの現場でも耳にすることがありますが、ちょっとわかりにくいですよね。今回はクリティカル・シンキングについてと、なぜ今身につけるといいのかについて触れていきます。

コラム執筆:狩野 みきさん

慶應義塾大学、東京藝術大学、ビジネス・ブレークスルー大学講師。考える力イニシアティブ THINK-AID 主宰、子どもの考える力教育推進委員会代表。慶應義塾大学大学院博士課程修了。20年以上にわたって大学等で考える力・伝える力、英語を教える。著書に『世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業』『ハーバード・スタンフォード流「自分で考える力」を引き出す練習帳』(PHP研究所)『プログレッシブ英和中辞典』第5版(小学館)など多数。TEDトーク “It’s Thinking Time”(英文)。二児の母。

必要とされるスキル・トップ10


出典: https://www.weforum.org/agenda/2016/01/the-10-skills-you-need-to-thrive-in-the-fourth-industrial-revolution/ より和訳

このランキングは、「ダボス会議」で知られる世界経済フォーラムがかつて予想した、2020年・2015年に必要とされるスキル・トップ10です。2020年になった今、改めて考えると、仕事はもちろん、生きていく上で「たしかに大事なスキルだ」と大いにうなずくものがたくさんあるのではないでしょうか。

このコラムで大切にしている「自分で考える」ことのベースになっているのが、2020年ランキング2位のクリティカル・シンキングです。

クリティカル・シンキング(critical thinking)は直訳すると「批判的思考」。日本でも前世紀末ごろ、クリティカル・シンキングは「批判的思考」と呼ばれ、ビジネス界でもてはやされた時期がありました。今では「批判的思考」よりも「クリティカル・シンキング」という言葉のほうが定着しました。

それにしても「批判的」って響きがよくないですよね。実際、「クリティカル・シンキングは人の思考の『穴』を見つけて批判する思考法だ」と思っている人は多いのですが、とんでもない!クリティカル・シンキングのcriticalは「ことの是非を判断するためにじっくり考える」という意味です。クリティカル・シンキングでは、他人や自分の考えを分析しますが、それは誰かを「批判する」ためではなく、「ことの是非を判断するため」です。そして、ことの是非を判断することが、より良い未来と、より大きなハッピーを生み出す——そういう考え方です。

「ことの是非を判断するためにあれこれ分析したり考えたりする」をイメージしやすく言い直すと、「自分の頭で考えて、自分で納得のいく答えを出す」となります。クリティカル・シンキングと「自分で考える力」はほぼ同じ意味なんですね。

欧米では30年ほど前から「クリティカル・シンキングは読み書きそろばんに次ぐ、第4のスキル」と言われてきましたが、日本でその重要性が小中学校などでも叫ばれるようになったのはこの数年でしょうか。

そして今、クリティカル・シンキングの需要はさらに高まっていると思います。先ほどの2020年のランキングが発表されたのは2016年ですが、当時は「AIが人間の仕事を奪うと言われる時代、人間がAIに負けないためには何が必要か」ということが議論されていた時代です。AIとの共存はもちろん今でも大きな問題ではありますが、コロナに端を発した不確実な時代、「われわれ人間はどう生きていくべきか」は人類全体の緊急課題です。そして、その課題を解くためには、自分で考えて答えを出さなければならないのです。

日本では戦後、特に「どんなものでも必ず正解がある」とする、いわゆる正解主義が重視されてきました。良い学校に入って良い就職をして良い結婚をすることが「幸せ」と、人生の「正解」が決まっていたのだと思います。

けれども、今や、皆と同じように横並びでやっていても、成功(正解)が約束される時代ではなくなりました。不確実な時代、価値観がどんどん変わっていく時代に「誰かが決めた正解」や「昔はこうやってうまくいったから」と考えていてはダメです。「外出する・しない」1つにしても、仕事の進め方にしても、自分で答えを出さなければならないのです。

クリティカル・シンキングの第一人者、アレック・フィッシャー氏は、クリティカル・シンキングの大原則は「思いやり」だ、と断言しています。社会のこと、相手のこと、自分のことをもっとよく理解したいという思いやりゆえに必死に考えるのだ、というのです。

あなたは自分自身のこと、まわりのこと、どれだけ理解していますか。どれだけ「理解したい」と思っていますか。理解できれば、きっと、自分にも、他人にもやさしくなれます。理解できれば、「じゃあ、こうしようか」と対話してみようという気持ちも生まれるはず。これらを頭の片隅に置いて、もう一度第1話を読んでみてください。
https://www.r-staffing.co.jp/rasisa/entry/202006303425/

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