自分で考える力を日常生活のなかで養うための、ちょっとしたヒントをお届けするこのコラム。前回のコラムで「クリティカル・シンキング」について解説しましたが、いくら大切なこととはいえ、忙しい日々のなかで、思考法を学ぶのは至難なこと。今回はわざわざ時間を作らなくても、日常生活に取り入れられる方法をご紹介します。

コラム執筆:狩野 みきさん

慶應義塾大学、東京藝術大学、ビジネス・ブレークスルー大学講師。考える力イニシアティブ THINK-AID 主宰、子どもの考える力教育推進委員会代表。慶應義塾大学大学院博士課程修了。20年以上にわたって大学等で考える力・伝える力、英語を教える。著書に『世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業』『ハーバード・スタンフォード流「自分で考える力」を引き出す練習帳』(PHP研究所)『プログレッシブ英和中辞典』第5版(小学館)など多数。TEDトーク “It’s Thinking Time”(英文)。二児の母。

クリティカル・シンキング(自分の頭でじっくり考えて、自分で納得のいく答えを出すスキル)の重要なポイントの1つに、「さまざまな視点で考える」があります。

「さまざまな視点から考える」なんて難しそう、と思うかもしれませんが、そんなことはありません。「さまざまな視点から考える」というのは「他の人ならどう考えるかな?」と想像することです。想像・妄想力が勝負です。

早速ですが、まずはこちらの問題を考えてみましょう。

あなたの家の向かいに、来る日も来る日も鮮やかなピンク色のパーカーを着ているお母さん(とその家族)が住んでいたとします。お向かいの家はレースのカーテンをしていなかったので、あなたの家の窓からこのお母さんの服の色がよく見えたのです。

そして2年後。ある日、1週間ほど家を留守にして帰ってくると…なんと、窓の向こうにいた「ピンクのお母さん」が「白のお母さん」に変わっているではありませんか。窓の向こうには、ピンクではなく、白い服を着ているお母さんが見えました。

さて、一体何が起きたのでしょうか。このコラムを読み進めながら、ありとあらゆる可能性を考えてみてください(正解はありません)。

この連載の第1回でも少しお話ししましたが、さまざまな視点で考えると色々いいことがあります。その考え方は、冷蔵庫や洗濯機など「ここぞ」の買い物をするときに似ています。あとから「この店の方が安かった!」なんて後悔をしないためにも、色々なモデルや値段を比較・検討し、納得してから購入するようなものです。

自分の意見も同じです。さまざまな視点、つまり色々な意見と比較することで、「これでよかった」と自分の意見に自信が持てるようになります。

たとえば、友だちに「オンライン飲み(ビデオ会議システムなどを使って、離れた場所にいる人たちと飲み会をすること)」に誘われたとします。ところが、あまり気がのらない。なぜかと言うと、ちょっと苦手なAさんも出席すると聞いたからです。断ろうかな、でも、なんて言って断ろうか。「忙しいから」「疲れてるから」と言うと感じ悪いかな…などと悩む前に、他の人ならどう考えるかな?と想像してみます。

「他の人」は昔の同級生や知り合いなど、自分とは違う考え方をする人を選ぶとよいですよ。同級生なら、「疲れてるから、でいいんじゃない?今はみんな大変だから」と言うかもしれない。あるいは、「体調が悪い、は言わない方がいいかも、心配かけるかもしれないから」「最初の30分ぐらいしか出られないんだけど、と断っておけばいいかも。楽しければ、抜けなくてもよくなったと言えばいい」などと言うかもしれません。色々な立場を考えるうちに、「やっぱり、疲れてるからごめん」と言えばいいかも、と自分の背中を押してやれるようになります。

考えるというのはクセのようなもので、「さまざまな視点から考える」ことも、訓練すればどんどんできるようになります。

さて、先ほどの「ピンクのお母さん」の問題、どんな答えを思いつきましたか。「家族から誕生日に白いパーカーをプレゼントされた」「パーカーが古くなった」「パーカーを漂白剤につけてしまった」とか?あるいは、「1週間の間に新しい家族が引っ越してきた」「自分(あなた)の視力がおかしかった」など?

なかなか思いつかないときは、家族や友人に「あなたならどう答える?」などと聞いてみるのも手です。そのほかにも、小説、マンガ、映画などから、自分とは違うものの見方をどんどん吸収するのもオススメです。

テレビを見ながら「なぜこの人はこんなことを言うんだろう?」と考えたり、近所を散歩しながら「なぜこの家はこの色の壁にしたのかな?」などと考えるのも訓練になります。自分の時間が増えている今は、考える力を伸ばす絶好のチャンスです。

第1回:「今だからこそ、相手の立場を想像する」
https://www.r-staffing.co.jp/rasisa/entry/202006303425/

第0回:「クリティカル・シンキングはなぜ必要なのか」
https://www.r-staffing.co.jp/rasisa/entry/202007143501/

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