「いま私は、“専業主婦”という仕事に就いているのだと思っています」。落ち着いた口調で、けれど軽やかにそう語るのは、鈴木香代子さん(35)。1歳2ヶ月になる男の子のママだ。これまで販売、事務、靴のデザインなど幅広い職種を経験し、結果を残してきた鈴木さん。決して予定通りに進まない「子どもとの時間」の中でも、自分らしく上手にモチベーションを保つコツを心得ている。

*今回はオンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人より提供いただきました

誰かが見ていなくても、自分が納得できる仕事を

「自分で自分を見た時に、キラキラと輝いていたい」――鈴木さんが社会に出てから、一貫して大事にしてきた仕事と向き合うスタンスだ。

専門学校を卒業し、栄養士の資格を活かして入社したのは、サプリメントを扱うベンチャー企業。百貨店内のショップで接客業務に携わり、スーパーバイザーまで任された。

「ここで仕事の基本をたたき込まれました。“サービス業のバイブル”と呼ばれるような本も必死で読み、学んだのは『誰も見ていなくても自分が納得できる仕事をする』『どんな小さな課題でも向上心をもって取り組む』という姿勢。これが私の生き方の軸にもなりました」

13年余りのキャリアのなか、持ち前のセンスと熱心な仕事ぶりが認められ、思いがけないチャンスを手にしたこともある。アルバイトで採用された靴の販売会社で、鈴木さんが手掛けた店舗のディスプレイが本部の目に留まり、正社員としてデザインチームへ抜擢されたのだ。

「私なりにPOPや装飾をこだわってつくり込んでいたので、純粋にうれしかったです。シューズデザインについてはまったくの素人で苦労も多かったのですが、貴重な経験になりました」

当時担当したベビーシューズは、いま息子さんの足にぴったりなのだそう。「自分がつくった靴を自分の子に履かせることができるなんて、夢みたいです」

両立は“キャパオーバー”と悟り、“主婦業”に専念

子どもができたら専業主婦、と決めていたわけではない。それどころか、妊娠中も仕事を続けるためのシミュレーションをしていたという。

「まだおなかも目立たたない頃から、保育園も幼稚園も見学しました。ただ、急遽帝王切開になったこともあり、意外と回復に時間がかかってしまって」

その間に育児書を何冊も読み込んだ鈴木さん。子育てへのイメージがよりリアルになるにつれ、仕事と子育てや家事との両立は自分にはむずかしいのではないかと思い至る。

「やるからには納得できるまでやりたい性分なので、キャパオーバーになることが目に見えていました。そこで夫に相談し、息子が小学校に上がるくらいまでは主婦に専念しようと決めたのです」

散らかすのが、いまの息子の仕事。笑うしかない!

会社勤めしていた頃、出社するとその日のタスクを「Do list」に書き出し、納期遅れや漏れのないように自己管理していた鈴木さん。家事にもその方式を取り入れていた。

ただ、目下、息子さんはやんちゃ盛りだそう。「片づけようと思って引き出しを開けた途端、わーっとやって来て中身が全部出されちゃう」一事が万事、そんな調子の毎日だ。

いまも前夜のうちに「Do list」を頭の中には描いておくが、息子さんがキッチンで遊びに集中していたらキッチンでできる家事を、リビングで遊んでいる時はリビングでできる家事をと、状況に合わせて都度組み直すそう。予定した段取りにこだわりすぎないことが、ストレスをためず、結果的にタスクをスムーズにこなすためのコツだ。

「1歳を過ぎてから体力がついて、昼寝が短くなってしまったんです。貴重な家事タイムが削られて結構深刻です」とため息をつくが、そんな言葉とは裏腹に、わが子の成長を愛おしみ、むしろ楽しんでいる様子が、やわらかな表情から伝わってくる。

「あるインスタグラマーさんが、『子どもは傍若無人な社長だ』と書いていたのを読んで、すごく腑に落ちたんです。ぐちゃぐちゃにするのは息子の仕事。そういうものだと受け止めれば、もう笑うしかない!」

少し先の復帰を視野に入れて、次の道を模索中

「仕事への復帰は息子が小学校に上がってからと、漠然と考えていましたが、もしかしたら少し前倒しになるかもしれません」と鈴木さん。フルタイムはむずかしくても、時短勤務の派遣スタッフや在宅ワークなど働き方を工夫すれば、何か始められるのではないか――卒乳を無事に乗り越えてから、自然にそんな思いが芽生えてきたという。

離乳食が始まってから毎日続けているインスタグラムへの投稿。出産後取得した幼児食・上級幼児食インストラクターの資格。「復帰後の仕事を見据えての準備ですか?」とたずねると、一瞬考えこんでから、「そこまできちんと意識していたわけではなく、次に何をやったらいいのかまだ模索中です。でも、もし客観的にそう感じていただけたのなら、食に関わる仕事にフォーカスしていくことも前向きに考えたいですね」と、晴れやかな笑顔が返ってきた。

職場であっても家庭であっても、一度「自分の仕事」と定めたら、ベストを尽くすことを信条としてきた鈴木さん。いま大切な家族のために費やしている時間の延長線上に、キラキラと輝く道がつながっているに違いない。

母子手帳をアレンジ。「私らしさのかたまりです」

家事を合理的にするために、幼児食や常備菜のつくりおきを実践している鈴木さん。モチベーションアップに役立つのがマスキングテープだ。息子さん用の容器には水色系のテープ(じつは息子さんの名前にちなんでいる)、大人用にはモノトーンのテープを使って、中身がわかるようにしているそう。「マスキングテープは手帳の書き込みやママ友とのやりとりにも出番が多いので、常時100種類くらいは手元にあります」

冷凍ものの保存に重宝する防水シールは100円ショップで。ペンと共に冷蔵庫脇に常備。

以前働いていたアパレルブランドの影響で、モノトーンのボーダーがお気に入り。母子手帳のケースはもちろん、母子手帳そのものも自分の手でモノトーンの表紙にアレンジした。「シールを貼ったりイラストを描いたり、手帳への書き込みはマメなほうだと思います。母子手帳は、私らしさのかたまりですね」

ライター:高山 ゆみこ(たかやま ゆみこ)

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